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ある日の日常 3
佐木は郷田が出て行ってすぐに、また来ますと店を後にしたそうだ。
「『郷田があんなことをいうなんてな。いい人に出会えてよかったな』って。あの時の佐木さん、優しい顔をしてたな」
郷田はつまらない男だった。感情が乏しくて話もあまりしない。しかも強面だから、交番勤務の時は随分と怖がらせてしまった。
「俺は移動になってからいい出会いばかりなんです」
仕事の面では相棒の佐木がカバーしてくれる。プライベートな時間では沖が傍にいてくれるのだから。
「いいよなぁ。一太君と佐木さんの関係。話を色々聞いたんだけど信頼しあってるって感じ」
一緒に住むことになり、二人きりの時は名前で呼び合うようになった。
はじめは互いに照れていたが、今は名前呼びもなじんだ。
台所で熱いお茶を入れ、ソファーに座る。
「そうですね。相棒が佐木さんで良かったと思ってます」
「それ、ちょっと妬けるな」
クッションをつかんで抱きしめる。拗ねる姿が可愛くて郷田はその身を抱きしめる。
「駿也さんと出会えたことも、ですよ」
「ほんとう?」
嬉しそうに顔を緩ませる沖に触れるだけのキスをする。
「一太君……」
じっと何か言いたげに見つめる沖に、なんだろうと見つめ返す。
だが、何も言わずに微かにほほ笑んだ。
「どうしました?」
「うんん。明日、早く家を出るんだよね」
「はい」
違う話をしてごまかした。遠慮せずに言ってほしいのに、恋人同士となった今でも沖は郷田に遠慮する。
どうやって口を割らせようか。沖を腕の中に抱きしめ、そのまま布団の中へと入る。
「え、いった、くん!?」
「駿也さん、俺に何か言いたいことがありますよね?」
唇を親指でなでると、目元がトロンと垂れる。
「ん、何もないよ」
「素直に自白してください」
ゆるりと首をなでると、ふるっと小さく震えた。
「いつもは怖い顔して取り調べをしているって聞いたよ」
「俺、今、どんな顔をしていますか?」
「ん、優しい顔をしている」
目じりを親指がなでる。それくすぐったくて、口元がゆるむ。
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