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新しい客 2

 彼がどんな仕事をしているかは知らない。何日か連続で顔を見せる時もあれば、一週間ほどこない日もある。  沖はいつものように食事を出して食べっぷりをこっそりと眺めるだけだ。  そろそろ彼が店にくるころだ。大抵、八時から閉店近くの間にくる。  そのころから河北が落ち着かない様子で、出入り口を気にしていた。 「河北さん、どうしたの?」  この頃、この時間になると、たぶん無意識にだろうが顔がこわばる。だが、今日はやたらと機嫌よく、そわそわと落ち着かない様子だ。 「へへ、内緒」  唇の前に指を一本たてる。  気になったが、きっと教えてはくれないだろう。それなら内緒のことが起こるまで待つだけだ。  戸が開いては河北が振り向く。だが、目当ての人がこないようでがっかりとしながら酒を飲む。それを何度か繰り返したのち、大柄な男が店へ入ってきた。例の彼だ。 「いらっしゃい」  そう声をかけると、ぺこりと小さく頭を下げて、カウンター席へと腰を下ろした。 「待ってたよぉ」  と河北が彼の席の近くへと移動をする。まさか河北が浮き足立っていたんは彼に会いたかったのか。恐がっていたくせに、一体どういう風の吹き回しなのだろう。 「駿ちゃん、ビール追加ね。お兄さんもどう?」 「俺は、定食だけで」  と断りを入れる。酒が苦手なのかと聞けば、そういう訳ではないとこたえた。 「あぁ、そうか。お兄さん、刑事さんだものね」 「え、そうなの!」  河北の言葉に驚いた。そして納得もした。だから普通の人と少し違う雰囲気を持っていたのかと。 「昼間にサイレンすごくなかった? あれ、強盗事件だったんだよぉ」  確かに。パトカーのサイレンが鳴っていた。何かあったのかなとは思っていたが、まさかそれが強盗事件で、しかもその現場に彼がいたとは。 「お昼の休憩だったからさぁ、野次馬してきちゃった」  それで知っていたのか。流石、河北だ。 「刑事課の郷田一太(ごうだいった)です」  スーツの懐から名刺を取り出して河北と沖に手渡す。

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