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第1話

 僕の恋人の(れん)くんは死ぬほどモテる。  当たり前だ。  恋くんは大学生だけどバイトでモデルをやっていて、それも納得なかっこよさ。  金に近い明るい茶髪に甘いマスク、なにを着ても似合ってかっこよくて目立つ。  なによりもアルファにしては珍しい、長く真っ白なウサギ耳が凛々しくて美しいんだ。それなのに気持ちに合わせて細かに動くところは可愛らしかったりするからそのギャップがまた魅力的で。  そして外見に負けず劣らず性格までいい。  明るくて優しくて気が利いて、話も上手くて一緒にいると本当に楽しい。そんな人がモテないわけがない。  そんな恋くんをかっこいいと思うたび、どうして僕が恋人になれたのかいまだによくわからない。  最初の頃はドッキリなんだと思ってた。  そういう人ではないと今はわかっているけれど、それでもドッキリじゃなきゃありえない話だと思っていた。  身分不相応というか、恋くんみたいな人の隣に並ぶには、僕は地味だしこれといって取り柄もない犬耳のオメガだ。恋くんどころか誰にも似合わない。そもそも恋愛するのだって恥ずかしいくらいなのに。 「俺にとっての初恋は君だよ」  それでも恋くんはいつもそんな風に言ってくれる。  僕と違って、たくさんちゃんとした恋をしてきたはずの恋くんはいつもそう言って優しく微笑むんだ。  本当言うと「初恋」だなんて言葉は全然信じてないけど、言われて嬉しくないわけはない。  だって僕にとってはこれが正真正銘の初恋だから。  ただの好意ではなく、恋愛の意味の「好き」という気持ちを抱くのは恋くんが初めてなんだ。  そして、幸運にも恋くんと付き合ったことで、好きになるほど不安になるものだってことも知った。  たとえば恋くんが友達には会わせてくれないとか。……わかるよ。僕が恋人じゃ紹介するのは恥ずかしいってことくらい。  だから無理は言わないし、いつこの時間が終わってもおかしくはないと思ってる。  それぐらい、僕にとっては夢のような相手なんだ、恋くんは。

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