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第1話
オレたちの住む街から、少し離れた小高い丘の上にある公園が流星群の観測会場として開放されていた。
12月の寒い夜、ふたご座流星群がピークを迎える予想日にオレとリュウは、自転車で公園に向かっていた。
かなり急で暗い坂道を立ち漕ぎで登ってゆくリュウの白い息が、後ろを走るオレには夜空に浮かぶ、きれいな雲のように見えた。
午後8時過ぎ。公園は、それほど標高が高いわけではないのに、街の空気よりもいくらかひんやり感じられて、オレはダウンのジッパーを首元まで締める。周囲には数名のグループが10組ほど距離をとってキャンプ用のチェアや簡易テントを広げて、観測の準備を始めていた。
オレはリュックの中から風よけのための簡易テントと、折りたたみ式のチェア、そして撮影用の機材を出してセットを始める。
「あのさ、お前、今日機嫌悪ない?」
オレが黙々とセッテイングをしているのを見ながらリュウが言った。
「別に」
「別にって、さっき会ってから、それしか言ってないじゃん。何かあったのか?」
「別に」
「何だよ、ったく」
リュウは、オレの態度に飽きれたように、背中を向けて自分の荷物をセッテイングし始めた。
オレはその背中を見ながら思った。別に機嫌が悪いわけじゃねえんだよ、今、すごく悲しくて泣きそうなんだよ……。
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