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第2話
オレとリュウは今年の4月、高2に上がるときのクラス替えで一緒のクラスになった。
リュウは当然オレのことなんか知らなかっただろうけど、オレはリュウのことを知っていた。というか、オレだけじゃなくて全校生徒であいつのことを知らないヤツはいないくらい、有名人だということだ。
1年生の時から、部活では県内でも強豪のサッカー部でエース、成績も学年でトップクラスで、もちろんイケメン、おまけに生徒会の役員までやってるという、まるで、学園モノのラノベやコミックに出てきそうなヤツなのだ。
だから地味に高校生活を送っている、星とか宇宙好きオタクで、物理と数学以外は赤点ギリギリで、新しいクラスのヒエラルキーでも最下層決定であるオレとしては「ヘェ-、すごいね」と、棒読みで言ってしまうような存在でしかなかった。
要は生きてる世界が違いすぎて、全く意識もしていなかったのだ。
あの時までは。
オレの所属する天文部は、地味な部活だけど熱心な部員が多くて、結構決められた下校時間のギリギリまで活動していることが多かった。
だから、部活終わりには、ほとんどの生徒は帰った後ということが多かった。
オレは、いつもガランとした教室で帰り支度をするのが日常になっていた。
しかし、2年生になって1ヶ月位経ったころから、その日常に少し変化があった。
部活終わりにオレが教室に戻ると、よくリュウと顔を合わせることが多くなったのだ。
もちろん、同じクラスだし、無視する理由もないから「お疲れ!」くらいの言葉は交わす。でも、正直オレにとってはキラキラした学校の人気者と2人だけで教室にいるのは、すごく居心地が悪かった。
もちろん、話しかけようなんて思うわけもない。地味な天文オタクと学校のスターは校則で会話を禁じられているから、なんてことはないが話すネタもない。
だから、いつもオレは気まずさから逃げるために、急いで帰り支度をして「じゃ、帰ろうかな……」と、独り言とも挨拶ともわからない言葉を呟いて、そ~っと教室を出る。すると、リュウはオレの背中に、大きな声で「じゃあな!」って声をかけてくるのが日課みたいになっていた。
「ヨウスケって、星とか好きなんだ?」
ある日、いつもみたいに帰り支度をしているオレに、リュウが突然話しかけてきた。そんなこと初めてだったし、すごく驚いて「ヨウスケ」ってオレの名前を言ってるのに、誰もいない教室を見回したくらいだ。
「え、オレは、あー、はい、そうかな」
突然のことで、オレは何を言ってるのかわからなくなってしまった。顔が熱くなる。
「俺も星とか興味あるんだよな」
リュウが俺の隣りに座って言った。
「あー、そう、なるほど」
俺の受け答え、なんだそりゃ!
でも、話すの初めてだし、なんか、人気者のオーラってすごくて、緊張するー。
「よかったら、星のことととか、教えてくれない?」
リュウはオレの目を真っ直ぐに見ながら言った。
は? いや、そりゃ、同じクラスだけど、初めてまともに話したばっかりなのに、そう来るか⁉
と、思ったけど、リュウが思いの外、真剣な表情で話してくるのでオレは嫌とも言えず、「まあ、うん、そうだね、いいけど」なんて、また、わけわからない言い方で承諾してしまったのだ。
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