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第3話
その日から、オレとリュウは一緒に帰るようになった。お互い学校から自宅は近くて、徒歩通学をしていたから途中まで同じルートを通って帰った。
帰り道は、いつもリュウがオレに質問攻めをしてきた。天の川って何なのか、銀河ってなんなのか、星ってどんな種類があるのか、などなど、とめどない質問にオレはリュウに誘導されてるみたいに答えていく。
何でこんな事になったのか、自分でもよくわからないけれど、次第にオレはリュウと星の話をするのが、すごく楽しくなっていた。
「よく、Mなんとかっていう星の名前があるだろ? あれって、ほかの星と違うの?」
リュウが聞いてくる。
「それは、メシエ天体って言って、フランスのメシエって人が普通の星と違う肉眼ではモヤモヤした感じに見える天体に付けた名称だよ」
「へぇー、さすが、ヨウスケ!」
「今の時間なら……、あった、あそこにモヤッとした光が見えるだろ?」
もう暗くなった帰り道、比較的明るい天体を探した。
「うーん、あっ、あれか!」
リュウは、オレの視線と合わせようとしているのかオレの肩辺りまで顔を寄せる。
「そう、あれがM31 、アンドロメダ星雲だよ」
「それって、よく聞くやつじゃん!」
「おい、耳元ででっかい声出すなよ!」
「あっ、ごめん、でも、なんか渦巻いてるやつだよな?」
それを聞いて、オレは自分の鞄から、いつも持ち歩いている双眼鏡を取り出した。
「これで見てみろよ」
そう言ってリュウに渡すと、すぐにリュウはさらに大声で「すげぇ-!!」と叫んだ。
「これ、これ、ちっちゃい渦巻がちゃんと見えるじゃん!」
M31は一番見やすいメシエ天体とも、言われている。リュウの言ったみたいに、双眼鏡でも小さいながら、ちゃんと銀河の形が見える。オレも始めて見た時は感動したもんだ。
でも、オレはこんなに騒がしくしなかったけど……。
リュウはオレのすぐ横で、まだ「すげぇ-!」って叫んでる。オレはそのリュウの横顔を見て、すごく楽しい気持ちになっていた。
でも、その楽しさは、なぜか天文部の奴らとか、クラスの友達とかと一緒にいたり、遊んだりしてるときの感覚とは何かが違っていた。初めての感覚、オレにはそれが何なのか、その時には分かっていなかった。
リュウはオレの家にも遊びに来るようになった、オレが持っている天体望遠鏡とか、撮影用のカメラなどで、星が見える夜はずっと話しながら星の観察をした。
オレはリュウといるのが本当に楽しかった。もっともっと、一緒にいたいと思っていた。それは、自分でも驚くほど、次第に強くなっていた。
「12月にさ、ふたご座流星群が見られるんだけど、一緒に行こうぜ」
今年のふたご座流星群は、彗星の影響でかなり期待できると、ニュースで聞いていた。オレは絶対リュウと見たいと思っていた。
「あー! それ、俺もニュースで見たよ、行きたい!行こうぜ」
リュウは目を輝かせて、そう言った。
やった!
「緑が丘の公園が、観測会場として開放されるんだって。天気良ければいいな」
オレはリュウが一緒に行ってくれるって聞いて、すっごく嬉しくて、抱きつきたい気持ちだったけど、そんな気持ちがリュウにバレないようにサラリとそう言って、見えないように小さくガッツポーズを決めていた。
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