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第十話「My Sweet Sweet Kitten」

 カタカタと、自分の操作するパソコンの音だけが響いている。今日のミスは酷かった。一体どこの人間にまで迷惑をかけたか分からない。残業の許可を貰ったが、これでいくらかマシになるだろうか。 「あれ、青木さん、まだいるんですか?」 「……ああ、どうも」  誰だっけ、と将平は考え込む。隣の部署の人間ではあるはずだが、普段名札だけを見て会話をしている将平は、彼女の名前を思い出すのが難しかった。 「電車でしたよね? 終電、逃しちゃってますよ?」 「え?」  将平はパッと時計を見る。この田舎町の終電は10時半だが、今は11時。遅くなるという連絡だけは入れてあるから、朝の早い裕二はもうとっくに寝ている頃だろう。まさか帰ってこないとは思っていないかもしれないが。 「……ほんとだ、気付きませんでした」  将平は慌ててパソコンを消した。確か、一時間前にはタイムカードを押し、帰ろうとしていたはずなのだが、気になってこんな時間まで仕事を続けてしまっていた。  将平はにこりと愛想笑いを浮かべた。 「……声かけてもらってありがとうございました」 「いえ、全然! ……そうだ、よかったら、うちに泊まりませんか? 何もないですけれど……」  あ、でも結婚されてるんでしたね、と、彼女は将平の左手を見て言った。先から、嫌に湿った目線を向けられている気がする。そもそも、彼女は一体何をしてこんな時間までここにいたのだろうか。 「ここに泊まるので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」 「あ、そっか、青木さんって九月入社組でしたよね。ここ、夏にちょっとした騒ぎがあってから、宿泊禁止になったんですよ」  彼女はペラペラと、用意してきたかのようにセリフを連ねる。将平は、未だ彼女の名前を思い出せずにいた。 「……歩いて帰ります」 「ええっ、何時間もかかっちゃいますよ、危ないです!」 「僕は大丈夫ですよ」  将平が愛想笑いを浮かべる。女性は将平を見上げてぐいと近寄ってきた。 「……うち、本当に近くなんです」 「本当に大丈夫です。気持ちだけいただきます」 「で、でも、今から歩いて帰ったら、寝る時間もなくなっちゃいますよ」  コレは面倒なことになった。この女は、何を言われようと引き下がらないつもりだ。  裕二に、スマホで「会社に泊まれないみたいだから、同僚の女性の家に泊まってもいいかな?」とメッセージを送ると、もう寝ているはずの時間なのに、すぐに「よかよ」と返事が返ってきた。「女性だよ?」と念を押しても、彼は「将平が事件に巻き込まれたらいかんやろ」と返してきた。  彼の性格上、そう言うだろうとは思っていたが、少し寂しい気持ちになる。将平は携帯を鞄にしまうと、にこりと笑った。 「……わかりました、よろしくお願いします」  彼女は嬉しそうに微笑む。オフィスを出ようとしたとき、彼女が自分の腕を、将平の腕に押し付けた。将平は瞬時にさっと身を引いて、本当に面倒なことになったとため息をついた。  女の家について、さっさと寝て、起きて、いつもは遅刻ギリギリに出社する将平が、早朝からさっさと出社した。彼女が名札をつけた状態で将平の元へ再びやってくるまで、将平はとうとう彼女の名前を思い出せなかった。  「……ゆ、裕二さん? 今日はどうしたの?」  まだスーツのシャツを着たままの将平が、目をパチパチ瞬かせた。ズボンと下着は脱がされている。 「……せからしか、黙っとききらんとか」  将平を仰向けに寝かせて、彼の上に馬乗りになる。裕二は、そのまま、勃起した将平の性器を、そっと自分の後孔に押し当てた。  照れからか、未だ純潔を装いつづけている彼にしては珍しいことで、将平は驚いて裕二を見つめた。 「……は、ぁ……、っ、は……」 「無理、しないでね……?」 「しとらん……、やかましか……」  裕二は顔を赤くして、腰をゆるゆるおろしていく。やがてぴったり肌が触れ合って、裕二は息を吐いた。 「……ぁ、……ン、は……、ぁ……はいった……」  こくりと将平の喉が鳴った。 「…………裕二さん、動かしていい?」 「いかん」  将平は、えっと思わず声を発した。裕二が、ゆっくりと腰を浮かせ、将平の性器を引き抜いていく。 「……ふ……ン、ん、ぁ゙……っ、は、……ぁ……」 「裕二さん……」  将平が思わず裕二に手を伸ばす。将平の指で優しく撫でられ、裕二はぴくぴくと跳ねた。 「は、触るな……て、……将平……」 「お願い、裕二さん……。俺に動かせて……」  裕二は眉を潜めて首を振る。 「……いかん。今日は、俺が……気持ちよくする」  ゆるゆると腰を引き、また押し込む。 「……は、あ゙、ぅ……う……っ」  将平は一度不機嫌そうに眉をひそめた。しかし、すぐににやりと笑うと、裕二の頭を優しく撫でた。 「……裕二さん、騎乗位下手くそだね。かわいい。手伝ってあげようか?」 「……い、らん……っ」 「本当?」  将平がクスクス笑う。彼が頑なに主導権を譲らないつもりなら、こちらからのお願いではなく、あちらからお願いさせる方向に切り替えよう。快感にめっぽう弱く、またマゾっ気のある彼なら、そちらのほうがいいかもしれない。  将平はしばらく裕二を見守っていたが、裕二は頑なに主導権を譲らないし、ゆるゆるとした刺激でこちらも辛い上、裕二が熱を燻らせているのを見て、将平は仕方なく言った。 「…………やっぱり俺がする。朝になっちゃうよ」 「い、いかん」  裕二は首を振る。将平は悲しそうに尋ねた。 「今日はどうしたの? 俺にされるの、そんなにいや?」 「違……っ、将平……」  裕二が、口をつぐむ。異様にうろうろと視線を逸して、俯いて言った。 「……マグロは、つまらんやろ……」 「うん?」  今日はなんだか変だ。将平は裕二が話し出すのを待った。 「(おい)はもう、若うないし、そもそも男やし……、将平の周りの女ん子たちとは、違うやろ……」 「ちょっ、と待って。抜くよ、いい?」  将平は性器を引き抜いた。裕二がぴくりと反応する。 「裕二さん、どうしたの?」 「…………別に、将平はなんもしとらんよ」 「……って言うってことは、俺が何かしたんでしょ。……もしかして、俺が昨日女性の家に泊まったから、怒ってるの?」  裕二は少し悲しそうな顔をして、それから目を逸らした。 「ごめんね、嫌だったよね。そっか、あれじゃ、裕二さんが嫌だって言えるわけなかったね……」 「……それは別によかて。俺は嫌なら嫌って言うし。…………ホントに、それが嫌だった訳じゃなかけん……」  裕二が、奥歯に物の挟まったような物言いをすることは珍しい。将平には、今、自分が的外れなことに対して謝っているという自覚だけがあった。 「…………でも、俺が何もせんけん、嫌になったとかと、ちょっと、勝手に思って……」 「俺が!?」 「わ、分かっとる。将平は俺ば嫌になったりせん……やろ? ……やけん、勝手に……、ホントに、俺が勝手に思っただけやけん……」  裕二は、うまく将平と目を合わせられなかった。自分は何を口走っているのだろう。いい年をして、将平を困らせるようなことを言って。本当に言いたいことを、言わないでいるくせに。 「……ばってん、俺は若うはなりきらんし、女ん子にもなれんやろ?」  けれど、言い出したら口は止まらなくなってしまった。自分が思っているよりも、自分は自分を低く見ていたらしい。虚しくなって、喉の奥がツンとした。 「……せめて、マグロやなかったら、よかかなと思って、しただけ、やけんが……」  潤んだ瞳を隠すように、裕二はへらっと笑った。 「恥ずかしゅなった、やめよう。普通にしよさ」  しばらくじっと彼の話を聞いていた将平が、ゆっくりと口を開いた。 「……裕二さんを、嫌になったりしないよ」  裕二の手を握る。彼は少し驚いた顔で将平を見た。 「……裕二さんは、何もしてないんじゃなくて、何もできないくらい気持ちよくなってくれてるだけ……でしょ?」  将平が、裕二の手をさらさらと撫でる。 「あと、積極的にいろんなプレイさせてくれる裕二さんを、マグロとは呼ばんと思うけど……」  将平が言う。裕二がぽかんとして、本当? と尋ねた。将平は頷く。 「……ごめん、女の子の家に泊まるとか、やっぱりどんなときでもやめるべきだった。まさか不安にさせるとは、思わなくて」 「よかて……、そやんとば気にしとるわけじゃなか」  裕二は首を振る。自分はきっと、今、彼の不安を拭えていない。将平はそう感じた。彼がほしい言葉が、分からない。  将平が、裕二の手をきゅっと握り込み、項垂れた。 「…………俺、裕二さんが『帰ってきて』って言ったら、歩いてでも帰ってくるよ。電車なんてなくても、ちゃんとこの家に帰ってくるよ」  その言葉に、裕二は驚いた顔をして、思わず将平をじっと見つめた。 「もっと甘えてほしい」  将平が、はっきりとした声で言った。 「俺、裕二さんのわがままがききたい」  顔を上げた将平が、裕二を貫くように見た。彼のその目は、まるで、こちらの隠し事を見透かされているような気分になる。  裕二は、頬を染めて、おずおずと口を開いた。 「…………俺ば、気持ちよく、せろ……」  将平が、ゆっくりと裕二を押し倒した。  「裕二さんは、若くないのをそんなに気にしてるの?」 「……は、よかてそん話は……」  裕二は苦笑いを浮かべた。 「……ばってん、お前いつから……なんで俺ば好きになったと? 俺お前に特別何もしとらんやん」 「……ふふ、ききたい?」  将平はにこにこ笑いながら、裕二の首元に頭を埋めた。 「俺、裕二さんが、俺をちゃんと見てくれたのがすごく嬉しかったんだ」 「……いつ?」 「……こねこちゃんだったとき」 「あは、やっぱいお前覚えとうやん。猫になるって泣きよったときやろ」 「ばあちゃんたちが、猫をかわいがってたから」  将平が呟く。 「俺もかわいがってほしかった。お母さんも、猫好きだって言ってたから、猫になりたかった」  裕二はゆっくりと将平の頭を撫でた。 「でもあのときは、わがまま言って怒られてでも、構ってほしかっただけだったのかも」  将平はへらっと笑った。 「…………だから、裕二さんが、はじめて俺を、見てくれた……それがすごく嬉しかった。……俺のわがままきいてくれたのが、嬉しかったんだ」  ただそれだけ、と将平は呟く。本当に、ただそれだけ。けれど、自分はずっと、その、ただそれだけが欲しかった。 「だけんお前、昔わがままかったとか。……まあ、大人になっても、将平がわがままこねこちゃんなのは変わらんけどね」 「だって、裕二さんが、俺のわがままきいてくれちゃうから……。……エッチなわがままは特に」 「……やぐらし……」  裕二が眉をひそめて目をそらす。将平が、裕二の股の前に顔を下ろして、性器を口に咥えた。 「……ンっ……、汚かよ」 「お風呂一緒に入ったでしょ」 「そやんか問題じゃなか……っ」  裏筋を舌でなぞられ、身体がゾワゾワする。裕二は思わず身じろいだ。 「…………は、ぁ……」 「裕二さんのちんこ結構大きいよね」 「身体のデカかけんね……。っ、将平、さきっぽぐいぐい、せんで……っ」 「……エロい人のって感じ。かわいい」 「……っ、将平……、それ……ぁ゙……っ、は、ぁ……っ」  びくびくしている裕二を見て、将平はニヤリと笑った。 「裕二さん、乳首自分で弄ってみて」 「諦めろさ、乳首開発は……っ」 「嫌だ」  いたずらっぽく微笑む将平に、裕二は眉をひそめる。仕方なく、ゆっくりと自分の乳首に手を伸ばした。じんじんと、弱い刺激が伝わる。 「っ、は……、ぁ……っ」 「かわいい。そのままだからね、イきそうでもそのまま」 「……は、っ、将平……ッ」 「……イきそうって言われたら足びくびくしたね。想像した?」 「や、め……っ、ぁ……は、あ゙……ッ」  将平が、裕二の性器の先を、ぐりぐりと手で撫でる。 「……は、イきそ……っ、将平、イきそう……ッ」 「手止めないで」 「は、イく、イく、いく、しょうへ……っ、イく、イ、ぐ……ぅ゙……ッ!!」  とろりと精液が力なく溢れた。将平が直前で手を緩めたからだ。甘イキの快感にぼんやりと呆けていたら、将平が胸を舐めだした。 「……ぁ、いかん、乳首、吸わんよ、しょうへ……っ」  裕二は将平の頭を掴む。 「将平……っ、しょう、……やめ……っ、やめろ、将平……ッ」  緩い刺激なのに、身体がびくびくと大きく反応する。甘イキの余韻と、舌の柔らかい刺激で、頭がぼんやりしていく。 「は、だめ、だめ、は、ぁ゙……っ、ぁあ、ぁ……」 「イけそう?」 「……はぁ、は、あ゙、あ゙……ッ、……あ゙」  裕二の乳首を、将平が舌で撫でる。弱く噛み付くと、裕二がびくんと跳ねた。 「ぁ、あ゙……ッ! あ゙……あ……」  裕二の性器が、どろりとした液体を吐き出す。勢いのない射精が、裕二の脳をどんどんふやかしていく。 「……あー、ホント最高。かわいい」  将平は裕二の唇にキスを落とすと、にこりと微笑んだ。 「ねぇ、裕二さん」  裕二の腹を、将平の指がつうと滑る。びくびく跳ねる裕二を見ながら、将平はゆっくりと口を開く。 「わがまま言ってみせてよ。どうしてほしい? どんなふうにされたい?」 「っ、将平、の……ッ」  ほぼ反射的に、裕二がすぐに口を開く。将平はうん? と顔を傾けた。 「将平のが、ほし、い……ッ」  裕二は、潤んだ瞳で将平を見上げた。 「ナマ、で、挿れて……ッ」  将平は背筋がゾクゾクとして、思わずニヤリと笑った。 「ッ、俺の? どんなふうにしてほしい?」 「…………ッ、おく……、奥まで、挿れて……っ!」  将平が、ゆっくりと性器を押し進める。圧迫感と、挿入される快感に目が眩んだ。 「ッ、は、あ゙……ッ!! あ゙、あぁ、あ゙、あ゙」 「は……、いいの? ほんとに奥まで挿れちゃうよ?」 「よか……っ、おく、奥まで……っ」  将平の肌と、裕二の肌がぴったりとくっつく。将平が一つ息を吐いてから、裕二の額にキスをした。 「……酷くしちゃったら、ごめんね」  裕二がゆっくりと将平の首に腕をかけ、ニヤリと笑った。 「酷うして」  将平が、一気に腰を引き抜いて奥を貫いた。裕二が、びくりと背を反らす。 「は……ッ! あ゙ぁ……ッ!!」 「……裕二さんって、俺の理性を弄ぶのが趣味なの? ねぇ、俺が馬鹿みたいに腰振るの見て楽しい?」  裕二が、楽しそうに、いたずらっぽい笑みを浮かべた。将平が、むっと眉をひそめる。 「そう。悪趣味だね……ッ」 「あ゙……!? そこ……ッ、ごりごり、せん……で……ッ!!」 「……はっ、好きだもんね、ここ」  将平が前髪をかきあげて、それから裕二の全身を隠すように覆い被さった。裕二の手が、将平の背を掴む。 「あ゙、ぁ、しょうへ、もっと、もっ、と……ッ!」 「は、ぅ……ッ、大丈夫? 痛くない?」 「……あ゙ッ! あ゙、お、ぐ……ッ! あ、あ゙ぁあ、おぐ、おく、あたっ、と……ッ!」 「っ、は……、きもちいいね、裕二さん」 「……あ゙ぁあ、きもぢ、い゙、しょう、へい……ッ」  裕二が泣きながら将平の背に爪を立てる。 「……っ! イく、イく、しょうへ、いぐ……ッ」 「イきそう?」 「イく、イくイくイくッ、あ゙、あ゙ぁ、あ゙、あ゙……ッ!!!」 「ッ、ぅ……、ふふ、裕二さんのナカ、ぎゅってしてるね」 「は、あ゙……は、あ゙、あ゙ぁ……」  裕二の体がびくんびくんと飛び跳ねる。将平はゾクゾクと身体が痺れて、たまらなくなって呟いた。 「……ごめんね」  将平は、思いっきり最奥へ性器を押し挿れた。裕二が、将平の背に深く爪を立てる。 「あ゙ッ、あ゙あ、あ゙ああ!? いぐ、いっでる、い゙ま、イって、イ゙……ッ!」 「うん、ビクビクしてるもんね。分かってるよ」 「あ゙、ゔ、イ、っとる、とに……ッ、いぐ、もう、無、しょう、ちゃ、イ、あ゙、あ゙あ゙ッ!」 「泣かせちゃった。……かわいいね」 「むり、むい゙、イ、いぐ、い゙く、いぐ、イぐ、イぐって……ッ、あ゙、あ゙、あ゙ぁ、あ゙ッ」  将平が律動を早めると、突然裕二が、性器から精液を吐かずにびくんと飛び跳ねて、ナカをぎゅっと締め上げた。 「あ゙……ッ!? あ゙、あ゙あぁあ!」 「ッ、は、今イッた? メスイキだ、気持ちいいね」  将平は少し動きを止めただけで、すぐに律動を再開する。裕二が脚をガクガク震わせながら叫んだ。 「ア゙、ア゙アァ!! も、むい、む、い゙……ッ、イッ、ア゙、ァ、きもちい、おぐ、おぐぅ……ッ!!」 「っは、かわいい」 「ア゙、ゔ、あ、しょう、へい、キス、っ、キスば、して……ッ!」  将平は一度ゆっくりと瞬きして、それから裕二に口づけた。裕二が、くぐもった喘ぎ声をあげながら、ぼろぼろ涙をこぼす。 「っは、かわいい、かわいいなぁ、裕二さんは」  将平が深く腰を打ち付ける。裕二は将平の背に爪を立てて、顎を反らせた。 「ア゙ァ、あ゙、ひぐ、い、ぐ、イく、イ゙……ッ!」 「ッ、俺もイく」 「あ゙ぁ、ナカ、だして……ッ! ナカ、俺の、ナカ……に……ッ!」 「ッ、は……ッ、裕二さん、イく、イく……ッ」 「ッあ゙、あ゙、ア、ア゙ァア、あ゙ア゙アァッ! あ゙、あ゙ッ、……あ゙……っ」  自分の中で、暖かな液体が弾けて腹を満たす。裕二の瞳から、ぽろ、と涙がこぼれた。ガクガク脚を震わせていた裕二が、少しずつ落ち着いてくる。 「将平の、せーえき、おぐ……っ、入っ……て……」  びくびくと痙攣を繰り返す裕二が、ぼんやりした声で言った。将平は息を整えながら、目に入りそうになっている裕二の前髪を払う。 「……はー、っ、大丈夫?」 「ぁ、っ、抜かんで、まだ、きもちいい……」  将平が動きを止める。裕二の荒い呼吸がおさまると、ゆっくりと性器を引き抜いた。裕二の後孔から、とろりと精液が溢れる。それを近くにあったタオルで拭い取ると、将平は裕二に口づけた。 「…………裕二さん、満足した? まだしてほしい?」 「も、よか……、寂しゅ、なくなっ、た……」  へにゃっと微笑む裕二を見て、将平が、えっと声を上げた。 「…………裕二さん、寂しかったの?」  裕二が、バツが悪そうな顔をしてから、腕で顔を隠した。目を逸らしながら、赤い顔をして呟く。 「……しょうちゃん知らんやろうけど、俺は、一人が一番好かんとばい……」  将平が、納得したように微笑んだ。 「そう、裕二さんは寂しかったんだね。女の子の家に泊まったことは嫌じゃないって言ってたのはそういうことか……」 「でも、将平、は、悪なかけん……」 「……ごめんね」  将平が、真面目な声音で謝った。裕二が、ゆっくりと腕を下ろす。 「……俺が、そういうの察するの苦手で、ごめんね。寂しくさせて、ごめん」 「……も、よかて……。どやんもなか。そやん謝らんさ……」 「もう他にないの? 俺、何でもするよ。言われなきゃ分かんない奴で、ごめん、けど……」  裕二は、暫く静止した。それから、ゆっくりと口元に指をあてて、真っ赤な顔をして口を開いた。 「……っ、将平が」 「うん」 「将平が、毎日、俺のとこに帰ってきて、くれたら、それでよか……」  将平は、うんと頷いて、裕二にキスをした。 「……それなら、俺、車買おうかな……。そしたら、絶対帰ってこられるもんね」 「……俺の車ば、通勤に使ってよかとに」 「裕二さんの車マニュアル車じゃん…………、今時……」 「せからしか、あの車の形が俺は好いとうと」  裕二が目を合わせると、将平が顔を少し傾けて言った。 「……でも、俺運転すごく苦手だから……、車買ったら、裕二さん、練習付き合ってくれる? それとも、もう一回教習所に行ってマニュアル車の免許も取ったほうがいいかな。でも、俺オートマだって上手に扱えないのに、マニュアル車なんかに乗れるかな……、ねえ、裕二さんどう思う?」 「……ふ、ふふ、どっちでんよかさ」  裕二はクスクス笑う。 「なんで笑うの」  将平が不満げに尋ねると、裕二は将平の頭を撫でて、ふにゃっと笑った。 「…………俺のかわいいかわいいこねこちゃんが、俺のことで悩んどると、嬉しかね」  将平が、ふっと笑みをこぼす。二人の唇が重なり、夜が少しずつ、甘く甘く溶けていく。真っ黒な空に、柔らかい星がきらきらと輝いていた。

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