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第1話 修学旅行初日
こんなの芸能人の不倫叩きみたいじゃないか!
いや、そもそもオレは不倫ですらないし!
……。
中学生がクラス内で、付き合ったり分かれたりなんて、みんなのいいゴシップネタだ。
確かに橋田には悪いことをしたと思っている。付き合って一週間で彼氏(オレ)から別れたいと言われたら、そりゃ立派な被害者(14)だ。
だが、しかし、かと言ってクラスの女子大半から非難される謂れはないし、男子の一部にもなんとなく白い目で見られている。元カノの名誉のため言うが、橋田がこの件を言いふらしたわけではないと思う、たぶん。親友面したあのお節介女子が、共感したふりして頷きながら、言いふらしたんだと思う。
オレは人生初交際からのスピード破局を後悔はしていない。
なんか、やっぱりなぁと分かったし。
だが、時期が悪かった。
修学旅行三日前に、あんな別れ話は間が悪すぎた。
五月十日 晴れ
修学旅行一日目。
体調不良のため一足先に旅館へ(元カノと、班行動はキツイ)。
あまりに暇なので旅館近くのコンビニへ行く。
オレより暇そうな学生(らしき)男が、レジでスマホをいじりながら「いらっしゃいませ~」、なんかイントネーションが微妙。
目的もないが、とりあえず雑誌エリアへ。
水着姿の女性タレントと目が合い、いつぞやのオレを見上げる元カノの瞳がフラッシュバック。「今日うち、誰もいないから」オレはあの時、無理だと思った。はっきり言うと引いた。その場は曖昧にごまかしてそのまま家に帰って、やっぱりオレはそういうの違うんだと悟って、次の日の昼休みに橋田に別れたいと告げた。
後悔はしていない、だが……。
「それ、見たいん?」
いつの間にかバイト男が傍らにいた。
「ごめんなぁ、今、全部読めんようにしとるんよ」
万引きがバレたばりに驚いた。オレは結構そのエロ青年誌の表紙を見つめていたらしい。橋田ですら無理なんだから、そんな胸が顔ぐらいある女のグラビア見たいわけない。
「君、修学旅行の子やろ? あの旅館よう来るんよ。学ランはこのへんじゃあらへんし」
人懐っこい感じのバイト男。ゆるい雰囲気で、寝ぐせなのかオシャレなのか(たぶん前者)髪がぴよぴよ跳ねていて、オレの地元では見かけないコンビニのロゴ入りエプロンをしている。
「どっから来たん?」
個人情報なんだけど。あなたこそどっから来たん? 明らかに関西イントネーションじゃないし。
「あバレた? オレ転勤族の子でな、全国を転々として今に至るんよ。言葉ってうつるやん? 朱に交われば赤ってやつよ」
バイト男が、どや顔で真っ赤なビキニを指さした。
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