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白を纏う花婿

   白造りの輿には、金の花と蝶が装飾として彩っている。中から開けることのできない特殊な造りの輿に乗せられて、花神仙の祀られている梦見楼閣へ連れて行かれる。その周りを、白装束の兵士たちが囲んでいた。  待ちゆく人々は通り過ぎる白い御輿になんだなんだと足を止めて視線を向けた。 「なんだぁ? 白装束の行列だなんて、不気味だなぁ」 「こらっお触れが出てたでしょ! 第三皇子様の、婿入り行列よ」 「婿入りぃ? 嫁入りじゃなくて?」 「皇子様だから、婿入りなんでしょ。……はぁ、一目見てみたいわぁ、第三皇子様。めったに人前に出てこない、とんでもなくお美しい(かんばせ)をしていらっしゃるんですってよ」  蓮雨(リェンユー)の乗る御輿の後ろには、嫁入り道具ならぬ婿入り道具の乗せられた荷車が続いている。  白に身を包んだ蓮雨(リェンユー)は、結い上げられた髪が崩れるのも構わず、綿を詰めた柔らかな座布団をいくつも重ねたそこに体を横にした。どうせ、誰も中を覗かないし、覗かれたとしても痛くも痒くもない。  紅に白を重ねた婿入り衣装。自身の体を見下ろして、婿入り衣装と言うよりも嫁入り衣装のようだった。やたらヒラヒラしているし、刺繍や装飾品も女性物のように思える。目元に紅い紅を差し、口紅まで塗られそうだったので止めさせた。そもそも、実態のない神仙への生贄なのだから、ここまで着飾る必要もないんじゃないのか。眉間に皺を寄せ、痛む頭にこめかみを揉んだ。 「それにしても、婿入りなのにどうして白装束なのかしら。まるで、葬列みたいねぇ」  外から聞こえた民の言葉を鼻で嗤った。  生贄。人身御供。実態のない、神仙との婚姻。――死した人と番う、幽婚と何が違うと言うのだろう。  

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