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乱れ、微睡む※

 香炉から、甘い花の香りが煙と共に立ち上る。白く薄らいだ室内に、くぐもった声が途切れ途切れに響いていた。 「ふっ……ん、ぐっ、ぁ、あ、……駄目だ、深いぃ……!」 「ははっ、気持ちいいだろう。俺も、お前の中が熱くて、絡みついてきて、気持ち良いよ。今すぐにでも果ててしまいそうなくらい」 「や、だ、、だめだ、やめてくれっ……! 花仙っ、花仙……花神仙……!」 「ここでやめたら、辛いのはお前だよ、小花(シャオファ)」 「ひ、ぃ……いぁ、あ、あっ……あぁ!」  淫猥な水音と、肌がぶつかり合う音。  ひとまとめにされた両手は寝台に縫い付けられ、尻を高く持ち上げた体勢で蓮雨(リェンユー)は秘蕾で熱の楔を受け入れ、腹の奥を突かれる快感に身をくねらせた。いつも丁寧に結い上げられている射干玉は白い背中で散らばり、汗で張り付いている。  常々白すぎると思っていた肌は、熱で火照り赤らみ、滑らかで桃のように甘そうだ。  受け入れるはずがない、入らないと散々喚き立てたのに、笑って聞き流すばかりの花仙の執拗すぎる愛撫と香油のおかげで指三本は咥えてしまうほどに柔らかくなった。  上衣は乱され、下衣は寝台の下に無造作に投げ捨てられている。汗ばんだ肌が艶めかしく、衝立に美しい影を浮かび上がらせる。  細く華奢な蓮雨(リェンユー)とは違い、厚みのある胸元に剣を振るうために鍛えられた体は美しく均等が取れている。蓮雨(リェンユー)がこちらを見ていないのをいいことに、瞳孔の開いた眼は金色に輝き、口元は獣のような獰猛な笑みを浮かべていた。  秘蕾を穿たれながら、このまま身も心も全てこの男に食べられてしまうのではないかと恐ろしくなる。しかしそれ以上に、これまで感じた事のない全身が痺れる快感に、蓮雨(リェンユー)は蒼い瞳から涙を溢し、抑えきれない嬌声を喉から溢れさせた。  腹はすでに何度も吐き出した精で白く濡れ、鈴口からは色を失った汁をしとどに垂らしている。芯を失い、もう出すものも無くなってしまったというのに、ナカを抉る肉楔は一向に吐精せず、硬さを保っている。 「ほらっ、もっと頑張って、そうしないと楽になれないよ?」  背中にぴたりと胸をくっつけられると、より一層深いところを抉り、しこりを押し潰されてしまう。 「だ、だめっ、この、この体勢はやだぁっ、あぁっ、花仙っおねがいだからっ、おねがいしますっ、もう、もう、わたし……!」  肩越しに振り返った蓮雨(リェンユー)は耐えられない快楽にボロボロと涙を溢して許しを乞う。浅ましく腰を揺らし、情けを願う。  腹のずっとずっと奥、男にはないはずなのに、花仙に腹の奥を突かれるたびに体は悦んで、子種を求めてナカが収縮するのだ。こんな、娼婦のように快楽を求め、種を求めてしまう自身が酷く浅ましく、情けなかった。  私は第三皇子なのに、どうしてこんな目に合わなくちゃいけないんだ。  恐怖と、悲哀と、諦念と、――それらすべてを上回る快楽に唇をキツく噛み締める。 「噛んじゃ駄目だよ、んっ、俺も、もう……!」 「んぁ、ぁ、ぁ、あぁ!」 「受け止めて、全部中に出すからッしっかり飲みこむんだ……!」  動きはより一層激しくなり、寝台がギシギシと音を立てる。ここが離れで良かった。そうじゃなかったら顔も知らない第三者にあられもない声を聞かせることになっていた。揺さぶられ、突き動かされながらも頭のどこかは冷静で別なことを考えている。  見透かすように、唇に噛みつかれて熱い舌が歯を割って口内を蹂躙する。ぼうっと思考が花仙に支配されて、甘い唾液を味わい、こくんと飲みこんだ。飲みこみ切れなかった唾液が口の端から溢れて、曝け出された喉元を濡らしていく。 「――……っ、」  胎の奥に、熱いモノが広がって、じわりと広がっていく。  花仙は、すぐにナカから自身を抜くことなくキツク締め付けるナカを堪能するように数回揺らして、ゆっくりと腰を引いた。ぷくりと赤く、先に吸いつく秘蕾からトロトロと白濁が溢れた。 「ん、ぁ……」  どれくらい、時間が経っただろう。今にも閉じそうな眼を窓へ向けるが月は皓皓と痴態を照らしており、太陽が昇るまでまだずっとあるだろう。 「気分はどうだ?」 「………………ざいあぐ」  散々啼かされ、喘がされ、声はすっかり嗄れてしまった。涙で目元もなんだか痛いし、見せられる顔でないので枕を抱き込んで目を閉じてしまう。 「最悪? おかしいな、これが一番効果的なんだが……足りなかったのか?」 「ッこの……!! ……はぁ、もう、なんでもいいです、どーでもいい……わたし、もうねむい」 「ふはっ、いいよ、おやすみ小花(シャオファ)。体も拭いておいてやるから、眠ってもいいぞ」  貴方が後始末するのが当たり前でしょう、という言葉は眠気に負けて、声に出す前に目蓋が落ちてしまった。翌朝、起きたら絶対に文句を言おう、と心に決めて、夢も見ないほど深い深い眠りへと落ちていく。  花仙との口吸いは、花の蜜のように甘くて、もう一度したくなってしまうほどに心地よかった。

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