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第8話

 ある日いつものように放課後急いで帰っていたら、誰かが走って追いかけて来た。 「空!」  と叫んだ晃誠を振り返らず、全速力で駅まで駆けるが、体力が続かない。  すぐに追いつかれてしまい、腕を掴まれた。 「放せよ」 「話があるんだけど」 「俺はない」 「空!」  晃誠と目を合わせることもしたくなかったが、晃誠は俺の腕を捻り、彼の前に向かせた。 「俺のことずっと避けてんだろ」  だって、そんなの当たり前だ。 「ずっと謝りたかった」 「謝るのは俺の方だって」  あんなことした俺にどうして晃誠からそんなことを言い出すのか。つい目が合ってしまう。 「忘れて」  あんなのほんの出来心だから。晃誠を困らせるつもりなんかなかったのに。 「空」  ずっと騙して側にいたのに、哀れむような目で見ないでほしい。晃誠の気持ちが他のとこを向いているなんて、知りたくなかった。 「別に怒ってないから。びっくりはしたけど」 「怒って、罵ってくれた方がまし」  晃誠は困った顔をし、別のことを言った。 「俺、姉貴が好きなんだ」 「え?」 「言ったの空がはじめてだから」  そんなこと言われても、何も言えない。 「これでおあいこ」 「晃誠?」  晃誠の意図がわからなかった。 「ありがとう。気持ち応えられないけど、うれしかった」  何だよそれ。ずるい。  ただ迷惑なだけだと思ったのに、そんな言い方をして。  涙が出そうになるところを、必死で我慢する。 「だからもう避けるのはやめろよ。友達だろ」  そんな風に言ってくれた晃誠がまぶしすぎて、 「俺なんかと、友達でいてくれんの?」  って言ったら「俺なんかとか言うなよ」と怒られた。

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