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五、

12月に入り、美弦から涼雅に電話があった。 12月12日、光のページェントの点灯の瞬間を見に行こうというのだ。 デートの定番コースに誘うなんて、不思議に思われないだろうかと緊張したが、意外とすんなりOKを貰えた。 告白して、思いっきり嫌われて、未練を断ち切る。 そのつもりで誘った。 涼雅は、美弦からデートの定番コースに誘われて、驚きはしたが、 アイツのことだ、綺麗なものを友人と共有したいというだけで、深い意味は無いのだろう_という解釈に落ち着いた。 涼雅が初めて美弦を認識したのは、親に連れられて聴きに行った演奏会でのことだ。 まだお互い小学生だった。 美弦は、女のコ用の振袖を着せられて、うっすら化粧もしていた。 美弦という名前もあり、涼雅はしばらく女のコだと思っていた。 今となっては笑い話だが……。 その演奏会で、美弦が弾いたさくら変奏曲を聴いて、涼雅は衝撃を受けた。 一人で弾いているのに、何人も弾いているみたいに演奏の深みがあり、華やかな見た目もあいまって、桜の花びらが舞っているような そんな幻を見てしまうほど……。 涼雅の一目惚れだった。 その気持ちは、男と解った今でも変わらない。 初恋だった。 自分の前で、くるくると無防備に表情が変わる美弦を愛しく思っていた。 オレが、好きだと言ったら、アイツは、どんな顔を見せてくれるだろうか? その時を想像し、涼雅は唇に薄く笑みを浮かべた。 end

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