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 事後、ぐったりするオレを甲斐甲斐しく世話した篠山は、なんだか幸せそうな表情で布団に潜り込んできた。 「体、大丈夫ですか? 激しくしすぎちゃいました」 「平気」 「ならよかったです」  慈しむように撫でられて、複雑な気持ちになる。  他の客にもこんな風に、優しさを見せるようなサービスをするのか?  ……なんて、全く言う筋合いのないことを考えてしまう。  オレだって他と同じように、デリヘルのあゆむくんを金で買う客だ。 「せっかくご厚意で、休ませてもらえるなんて申し出だったのに、普通にしてしまっててすみません」 「別に。てか、かっこつけて大見得きった割に、いとも簡単に勃起する自分が恥ずかしいわ」 「ええ? うれしかったですよ。……その、安西さんと、って」  穏やかな目だが、何を思っているかは分からない。  他にも相手はたくさんいるだろうに、よりによって会社の先輩と……なんて。  篠山はちょっと体をずらしてこちらに距離を詰めると、ふんわり抱きしめてきた。 「さっきの北川さんの話、俺、うれしかったです」 「……? なんだっけ?」 「第三者の目から見て、安西さんが俺に頼ってるように見えた。っていうの」 「まあ実際頼りまくってたみたいだしな。全くの無自覚で申し訳なかったけど」  急に疲れを自覚して、まぶたが重くなる。  辛うじて目を開けると、篠山はゆるく首を横に振りながら、ほんのり微笑んだ。 「申し訳なくなんかないです。自分はコミュニケーション下手くそだし、役に立ててるのかなって、よく思ってたので」 「んー? 役立ってるに決まってるだろ」 「今週、仕事楽しかったですよ。業務量は多かったですけど、安西さんと会社でしゃべれて、うれしかったです」 「……そっか」  うれしく思っていたなんて、全く気づかなかった。  いや、思い返してみても、常に無表情だった気がするが。  布団に深く潜りながら、篠山の鎖骨の辺りに、額を寄せる。  篠山は、いいこいいことするようにオレの頭を撫でた。 「なんか、もったいなくて、寝たくないです。朝までずっとこうしてたいな……って」 「それじゃ呼んだ意味ないだろ。寝てほしいっつってんのに」 「多分、自分が眠るより、寝てる安西さんを見てる方が癒されます」 「変わった奴だな」  と言いつつ、本気で眠い。  自分も意外と疲れていたのだと知る。  現実と夢の境があいまいになる。  うとうとしながら、篠山がくすっと笑うのが聞こえた。  そして、こんなことを言った気がした。  ――仕事納めしたら、しばらく会えないの。寂しいですね  都合のよい夢なのか、本当にそう言ったのかは、分からなかった。

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