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 やわらかな朝日で目が覚める。  歩夢はなんとも幸せそうな表情でこちらを見ており、聞けば、30分ほど前に目が覚めてから、ずっとオレの寝顔を眺めていたらしい。 「なあ、歩夢。昨日の夜、最後、覚えてる? オレのこと名前で呼んだの。あと、敬語取れてたの」  先手を打った。  こう言ってしまえば、そのままタメ口で話してくれる気がしたからだ。  しかし、そうそううまくはいかないらしい。 「覚えてはいます、けど」 「あれ、勢い?」 「まあ、そう……ですね。いつか下の名前で呼んでみたいなって、思ってたので」 「敬語に戻ってんぞ」 「……まだ努力項目です」  真っ赤な顔で布団の中に潜っていくので、思わず笑ってしまった。 「んー。もっと甘えろ~無礼になりやがれ~」 「からかわないでください」 「だってすげー可愛いんだもん」  わしゃわしゃと髪をかき混ぜると、歩夢はくすぐったそうにしながら……やり返してきた。 「敬語やめるの、1ヶ月ください。その間にFixします」  いよいよおかしくなって、大笑いする。 「飯行く前に、風呂入らない? 朝風呂、気持ちいいと思うから」 「そうですね。温泉を味わっておきたいです。その……きのうは、安西さんを味わうのに夢中になってしまったので……」  と言いながら、ついにすっぽりと頭から布団をかぶってしまった。  オレも潜って、布団の中で小さくキスをする。 「かーわいっ」 「……こんなことしてたら、朝食ビュッフェに間に合わないですね」  と言いつつ、指を絡めて、何度も口づけてくれた。  幸せを噛みしめながら、ぼんやりと思う。  人と人は、少しずつ手順を踏みながら、仲を深めてゆくものらしい。  始まりは地獄体験だったが、歩夢は自分の殻を破ってけじめをつけ、オレはオレで、もやっとしていた過去を終わらせることができた。  求め合って、乗り越えて、たまに立ち止まりながら、この先もずっと一緒にいたい。  これがオレの、人生の最重要項目になった。

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