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夕飯の懐石はなかなかのボリュームで、食べ終わったあとに思わず、『ゴールデンウィーク最高』とつぶやいてしまった。
「風呂入ったら、卓球しに行かない?」
密かに楽しみにしていたことだ。
楽しくラリーをしながら仕事の愚痴でもこぼすのかな……と思っていたのだが。
「しないです」
「え? 卓球苦手?」
「いえ、運動全般は人並みにできます」
じゃあなんで……と聞こうとしていた、そのときだった。
「人がどれだけ我慢してるか、全っ然分かってないですよね?」
「うお!?」
体当たりのように抱きしめられ、そのまま世界がひっくり返る。
押し倒されたのだと気づいたのは、2秒ほど呆然としたあとだった。
歩夢がうなるように言う。
「あー……キーリング交換したりあんなプロポーズみたいなこと言われて、ほんとは旅館に戻ったタイミングで抱きたかったですよ」
「え、まじ……? 全然そんな風に見えなかっ……」
「懐石料理の上でうろうろ迷い箸してるのが可愛すぎるし、たまにチラチラ温泉見て気にしてるのも可愛いし、もう全部可愛くて我慢するの大変だったんです。なので、卓球はしません」
こいつ、こんな早口でしゃべれたのか……という感想は口にできなかった。
キスでふさがれたからだ。
「お風呂入りましょうか。せっかくの温泉ですしね。洗ってあげますので」
歩夢の言う『洗ってあげる』は、『ボディソープの泡で前戯してあげる』と同義だ。
高い垣根と屋根があるので、絶対に人に見られることはないが、声を出したら隣に聞こえるだろうなと思う――いい感じにエコーがかかって。
窓際に立ち、向かい合う。
浴衣の帯がしゅるりと抜かれると、いとも簡単に服がはだけた。
オレも同じように帯をほどくと、均衡の取れた体が露わになる。
手を引かれ、お湯に浸かると、ほうっと息が漏れた。
都会では見られない、澄んだ星空。
歩夢に背を預け、あごの辺りまで沈んでみると、世界から切り離されたような感覚になる。
お湯がぽちゃりと跳ねる音がして、うしろからぎゅっと抱きしめられた。
「ゴールデンウィーク最高、ですね」
「うん。すげー贅沢な気分」
歩夢は、側頭部にキスをしながら乳首をいじり始めた。
温かいお湯の中で、きゅうっとつまんだり、指先で潰すようにこねたり、爪で軽く引っ掻いたり。
「ん……、ん」
「安西さん、もう勃ってますね。期待しちゃいますか?」
「……してる」
やわやわと胸や尻を揉まれて、興奮が増してくる。
体が十分に温まったところで上がり、お互いの体を洗った。
わざといやらしい手つきで、ぬるぬると触られる。
「ん、あゆむ……、それ違……」
「気持ちよさそうですね」
「ひぁ」
指が腹の中に侵入してくる。
ぐにぐにと入口をほぐすように動かしてきて、思わず身悶えた。
「すごい。ちょっと触っただけで、すぐやわらかくなりましたよ。エッチな体になっちゃいましたね」
「ふ……んぅ、もっと拡げて欲し……」
「柱に手をついて、お尻こっちに向けてください」
言われた通りの格好になると、さらに指を増やして、中を刺激される。
身長差的に、少しだけ背伸びをしなげればならない。
足がピンとなるので、感じやすくなってしまう。
「体、ビクビクしちゃってますね」
「はあっ、この姿勢、だめ……、んぁ」
「イッちゃいそうですか?」
「だめ、イキそ……やだ、」
「露天でイッちゃう恥ずかしいところ、見せてください」
前立腺をぎゅうぎゅうと押しながら、ペニスをしごかれる。
思わず声が裏返った。
「あ、……も、イッ……やぁ」
「イッていいですよ」
「……だめ、イク、イクッ…………っ、ああぁ……ッ!……ぁああぁぁあ…………!!」
ビュクビュクと射精する。
歩夢はふらつきかけた体を支え、オレの表情をうかがった。
おそらく、恍惚と羞恥がないまぜになった、だらしない顔をしているだろう。
歩夢はオレの体にお湯をかけ、簡単に清めてざっくりと拭くと、そのまま横抱きにして布団の上に下ろした。
電気を消すと、静かな暗闇だ。
荷物を漁った歩夢が覆いかぶさってきて、閉じ込めるように、顔の横に両手をつく。
やがて夜目が慣れてくると、歩夢が穏やかな顔でオレの顔を眺めていることが分かった。
「訳わかんなくなる前に、言っとく。歩夢、大好きだよ」
「……うれしいです。好きな人に、そう言ってもらえて」
夢みたいだ、とつぶやきながら、体のあちこちにキスをしてきた。
たっぷりローションを塗られ、クチュクチュと音を立てながら中を探られる。
「すぐ入りそうですね。中、やわらかい」
「んん、んッ、はあ、……んん、」
「もう挿れていいですか?」
こくりとうなずくと、歩夢の侵入を感じた。
自重でずぷずぷと沈んでくるその表情は、普段の内向的な篠山と、同一人物とは思えないような……色香をまとったものだった。
「すごい、飲み込まれてるみたいです。気持ちいい」
「ん……ぁ、あ」
歩夢の首の後ろへ手を回す。
うっすら目を開けると、歩夢は、切なそうに目を細めながら、ゆるゆると腰を動かし始めた。
たしかな質量を持った塊が、腹の中の粘膜を擦り、快感を高めてゆく。
「締め付けすごいですよ。いつもと違うシチュエーションで、興奮してますか?」
「……ん、すごい、エッチな気持ち」
乳首をつまんだりくりくりといじりながら、中を突いてくる。
かき回すような腰つきで、思わずあごが跳ね上がった。
「ぁあッ、んン……、はあ」
「こういうの、したことないですよね」
「あ、これだめ、はぁ……っ、は、」
知らない感触で混ぜられると、どんどん呼吸が乱れくる。
歩夢の手がそろそろと下に伸びてきて、しかし、期待するところには触れてくれない。
ねだるように腰を浮かせると、両手で腰骨をがっちりホールドされた。
勢いをつけ、一定の速さで奥を突かれる。
「あっ、あゆむ、ぁ……ッ」
「なんでしょう」
「い、意地悪すんなぁっ」
泣きそうになりながらシーツを掴むと、歩夢はふっと微笑んでから、ペニスに手を伸ばした。
全体をしごいたり、亀頭のくぼみをぐにぐにといじったり、先端を軽く爪でいじめたり。
その間も律動は一定の速度を保っており、だんだん訳が分からなくなってくる。
「ああっ、あッ、ん……っ、あぁンッ」
「泣くほど気持ちいいの?」
「はあっ、きもちぃ、……っ、もっとして」
「可愛い。エッチな体になっちゃったね」
「あぁッ……」
言葉責めに興奮して、あられもない声が出た。
歩夢は妖しい目つきでオレの全身を見回しながら、さらに言葉を続ける。
「安西さんが気持ちいいところ、まだまだいっぱいあると思うよ」
扱く手が強く、速まってきた。
ぼろぼろと泣きながら嬌声を上げ、背を反らす。
「俺、安西さんの体で、知らないところがないくらいになりたいな」
「んぅっ、そこ、そこ……ッ、きもちぃっ」
「もっと教えて?」
入口の良いところをえぐりなら、さらに奥へ。
「ぁああっ、ひ、ぁ……っ」
「……っ、気持ちいい」
「あ……ん、あ、あゆむっ……」
呼ぶ声が上ずって、全身が強張る。
手の中のものをゴリゴリとこすりつつ、奥へガンガン当ててくる。
ぶわっと熱がせり上がって、我慢ができない。
「んぁっ、やだ、あッ……イッ、ちゃ、」
「俺もイキそ……、」
その切羽詰まった表情が、オレを絶頂に導いた。
「あ、もぅ、イクッ、……イ、……イク……ッ!ああああっ……!……ッ、ぁああああぁッ!!」
ビクッビクッと体が跳ねて、濁った液が飛び散る。
歩夢はオレの頭を抱え、耳元でささやいた。
「……、周…………ッ……」
強く抱きしめられながら、最奥で歩夢が熱を放つのを感じた。
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