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第4話 終/ルイス視点※
「良かった、無事で」
部屋に入ってすぐアルベルトに抱きしめられた。
暖炉に火の魔石が入れられて暖かい。こうして抱きしめられていると部屋の暖かさとアルベルトの体温でようやく心が芯から温まったような気がした。
「ん、」
初めはたどたどしく口を触れ合わせるだけのキスを、次第にちゅちゅ、とリップ音が鳴るようなキスを何度もされる。少しだけ口を開けたら下唇をぱくっと噛まれた。
一度、唇を離したあと、後頭部をぐっと引き寄せられ再び唇を合わせる。今度はさっきまでの軽いキスではなく、唇を割って舌が入ってきた。
「ん……、ぅうん……」
エンダーさんにキスされた時はあんなにも気持ち悪くて嫌悪感が先に立ったのに、今は何も考えられないほど気持ちが良い。アルベルトの舌が歯列をなぞるように動いて快感を与える。僕も自分の舌を動かして、食べて欲しいとアルベルトの舌へと絡み合わせた。
息をするように、と束の間舌を離される。息をす、と取り込むと再び舌が入ってきて口腔内を蹂躙した。触れ合う舌と舌が熱を持ち暖かさと息苦しさで顔が赤くなる。
長いキスの後、唇を離したアルベルトは飲み切れずにお互いの口につ、と流れ出た唾液を僕に見せつけるかのように音を立てて飲み干し、上唇をペロッと舐めた。深い紫の瞳に情欲の火が揺らめくのが見える。う、色気が凄い。
「首の傷、治してやる」
アルベルトが指で僕の首の傷をすっとなぞると痛みもなく傷痕が消えた。魔法だ。そういえばアルベルトは学園で剣術も勉強も魔法も何でも良くできていた。僕は剣術はからっきしで、試験が一番だったと言われても勉学の方だけで、総合評価ではアルベルトには絶対に勝てそうにない。勉強が出来て運動も出来て、王位継承権は望めないが王子で将来の宰相。何もかもハイスペックなのだ、この人は。
アルベルトが風呂の湯を張りに行っているうちに、クローゼットにあったハンガーに濡れたコートを脱いで掛けた。王子様に風呂を入れてもらうなんて申し訳なさすぎる。学園時代も平民として通っていたから何でも自分でやっていたな、と懐かしく思い出す。
一枚服が薄くなったのと、さっきまで寄り添っていたアルベルトの体温がなくなったので少しだけ震えてくしゅんと小さく一度だけくしゃみをした。
「寒い? 風邪ひかないように一緒にお風呂で温まろう」
戻ってきたアルベルトに背中から甘い声で囁かれ、すっと髪を梳かれた。
僕はこれからこの人と…………。想像すると居たたまれなかったけれど、何とか小さく頷いた。
ふ、と軽やかに笑って背中から両手を前に回し、僕のシャツのボタンを一つずつ外していく。手が大きくて指が長い。僕はなす術もなく立ち尽くし、首元にアルベルトの吐息を感じて身体が熱を持った。
ボタンを外し終わり、ジャケットとシャツを同時に肩から外されて脱がされた。背にピッタリとアルベルトの身体がくっついているおかげで寒くない。
「っう? や、なに……? くすぐったい」
指で胸の尖りを挟まれる。弾力を確かめるようにふにふにと押されたり摘まれたりしているうちに何だかむずむずするような変な気持ちになっていった。
「あっ、んっ!」
甘くて高い声に自分で驚いた。今のって自分の声?
(は、恥ずかしすぎる……!!)
でもそんな恥ずかしさがどうでも良くなる程、赤くなってきた粒を少しだけ強い力でくっと摘まれきゅっとひねられると、立っていられないほどの快感が襲う。下着の中で自分の下半身が緩く立ち上がっている。
「やだ、……こんな…………女の、子、みたいな……、ああっ!」
ここがこんなにも感じるなんて今まで知らなかった。
ふらり、と倒れそうになって腰を支えられる。ふとアルベルトが上半身裸になっているのに気がついた。えっ? いつ服脱いだの?
最後に優しくちゅ、と頭に一つキスを落とした。
「……そろそろ風呂の湯も溜まったかな。じゃ行こうか」
腰に回した手でぐっと押されて、僕は風呂へと連行された。
二人で湯に浸かった。
冷えていた身体に火が入ったようにぽかぽかして温かくなり、ようやく気分が落ち着いた。
何というか、アルベルトの身体は凄かった……。筋肉が。
着痩せするタイプなのか、服を着ている時は普通の成人男性の体型だと思っていたのに、脱いだらその鍛え抜かれた肉体に、剣の腕も立つし、この人は宰相補佐みたいな文官じゃなくて騎士団とかに入れば良かったんじゃないかなあと思う。
そっと胸筋に手を遣ると、ピクンと少しだけアルベルト身体が反応した。
「あっ、ごめん。筋肉凄いなって思って。良いなあ筋肉。僕、昔よりは丈夫になって、働くようになってから少しは筋肉ついたと思っていたんだけど、全然まだまだだね」
さわさわとお腹の筋肉を撫でさする。おお、腹筋割れていて羨ましい。ここまでになるのにどれだけ鍛錬すればいいんだろう。しばらく撫でさすっていたら、真っ赤な顔をしたアルベルトに手をつかまれ止められた。
「身体洗ってあげるから出て」
手を引っ張られて湯船から出され、椅子に座ったアルベルトの膝の上に向かい合わせで座らされた。この体勢はまずいと思って逃げようとしたけど、脇の下から背に手を回されて抱きしめられる。
「そんなに……、煽るな」
アルベルトは背中に回した手で石鹸から泡を作り、そのまま脇から腰へと泡のついた手を動かした。ゆっくりと腰から脇腹に回されて円を描く。身体がびくんと跳ねた。
「じ、自分で洗うから」
「ダメ。させて……ね。変なところは触らないから」
「うーー」
アルベルトの声に甘さが混じる。
「ん、んんっ」
泡のついた手で性器以外の全身を、頭から足下まで綺麗に洗われた。確かに変なところは一切触ってないけれど、むしろ避けて洗われるほうが何とも言えず変な気持ちになって、自分の性器が熱を持ってきてしまう。
「ここ、触ってほしいの?」
「や、違っ」
あ、と思った時にはすでに陰茎を大きな手で握られていた。
「ルイスも……、俺の触って?」
熱い眼差しで言われて背筋がゾクゾクする。紫の眼に射すくめられて動けないでいると、アルベルトはお互いの性器をくっつけ合ってひとまとめにしてから二本まとめて僕の手で握らせて、その上からアルベルトの大きな手で全体を包み込む。それをゆるゆると揺らすとお互いのものがこすれて快感が背中を襲った。
「んーー、ん、うぅ……んっ」
僕は性欲は弱い方だ。どうしても我慢できない時にだけ自分で抜くことはあるけれどここまで感じなかった。でも人の手でこすられるとこんなにも気持ち良いものなのか。そう思っているといきなり首すじを強く吸われた。
「考えごとする余裕があるんだ」
「ああっ! ぅああっ」
ひときわ強く上下に陰茎をこすられて声が上がる。自分のものから先走りが溢れてアルベルトのものも一緒にぬめっている。
「気持ち良いね」
「ぁあっ! やぁああん」
いきなり乳首を口に含まれて柔らかく転がされ、その衝撃で出そうになるのを何とか止めた。でもそろそろ限界が近い。陰茎をこする手もさっきより激しくなっている。強くこすられながら胸の尖りを責められて、もう何も考えられず目の前が白くなる。
「やあ、ダメ……だからっ! もう、いっちゃう、からぁ!」
乳首を強く噛まれたところで耐え切れなくなり、僕はアルベルトの手に吐精した。
はあはあと息をする。身体が熱い。
アルベルトの隣はいつも太陽の匂いがする。
(うわっ……)
学生の頃、保健室へ運ばれた時よりも重くなっているのに、軽々と持ち上げて横抱きにしてベッドまで運んだ。そんなに僕は軽いかな? それともアルベルトの力が強いのか。ベッドに運ばれた僕はうつ伏せにされて、下に枕を入れてお尻を高く上げさせられる。カタカタ音がしたのでふと音のする方を見ると、アルベルトがベッドサイドテーブルの引き出しから瓶を取り出す所だった。
見なければこれから行うことを想像しなくて済んだのに……。
「ひゃっ」
尻の割れ目にローションがたっぷりと垂らされて指で全体に塗りつける。僕の後孔につぷんと一本だけ指を入れて中の襞を伸ばしながらぐちゅぐちゅと掻き回されて入口がひくひくと痙攣した。違和感が凄い。
中を広げるように指先を動かしながら、空いたもう片方の手が胸に回され、尖った先端をクリクリとつまむ。
「はぁっ、ん、ん」
「ここ好き?」
「…………うん、好き…………ってああ!」
上半身に気を取られているうちに二本目の指が入ってきた。何かを探すように指がぐるりと回すように動かされる。その指がある一点に触れた時、身体が跳ねるようにびくりと動いた。
「ひぁあっ!!」
「ここが気持ちいいんだね」
「あああんっ! だめっ、ああっ!」
そこからは執拗に同じ場所ばかりを指で責められた。気づかないうちに指が三本に増えている。触れられるたびに跳ねるように身体がビクビク勝手に跳ねた。気持ち良すぎてどうにかなりそうで、知らないうちに嬌声が溢れて落ちる。さっき風呂場で抜いたばかりの性器がこれでもかというくらいにそそり勃って、恥ずかしいくらいに鈴口から先走りがひっきりなしに出る。
後ろだけではイけなくて、前を触って射精しようと触ろうとしたけれど、その手を止められて首に回すようにと誘導された。
「え、何で? お願い…………いかせて……?」
「今は駄目だ。後ろだけでイけるようになろうね」
「え…、やだぁ……。ね、アル、アルベルトぉ……」
「くっ、そんな声を出すな。我慢出来なくなる」
指を抜かれて一瞬で身体の向きをひっくり返され、片足を持ち上げられてアルベルトの肩にかけられた。硬いものが僕の後孔に当てられる。息も吐かせない流れるような動作だった。
もしかしてアルベルトはこういう事するの慣れてる……!?
学生の時と自分がいなかった三年間。何人を相手にした事があるのか気にならないけど。気にならないけど!
「ごめん、初めてだから手加減と言うものが分からない」
キスで口を塞がれると同時に、アルベルトのものがぐっと入ってきた。
何だ、アルベルトも初めてだったんだ。
そう思うと胸がきゅんとして、アルベルトが愛しくて、身体の力を抜いて彼の全てのものを受け入れた。
「アルベルト、好き…………」
「ああ、俺も愛してる。もう二度と離さない」
「あっ…ああーー! っやあぁ、あ……ぅんん、ああーー!!」
外はまだ雪が降っているだろう。
でももう寒くない。
突き上げられる熱いものを身体の最奥で感じながら、ゆるやかに意識を手放した。
「ああ、ルイス! もう身体は平気かい?」
昼近くになってから店に戻った僕の肩を女将のレジーナが軽く抱きしめた。店ではアルベルトを待っていたニコラスが客席に座ってお茶を飲んでいる。
「もう大丈夫です。昨日は仕事出来なくてごめんなさい」
「なぁに言ってんだい。転んで怪我したんだろ? 昨日は雪が降ってお客さんも少なそうだったし、ルイスもいなかったから店は開けなかったんだよ。だから気にしなくていいよ」
そう言ってレジーナは僕の肩をポンポンと叩きながら明るく笑った。とても機嫌が良さそうだ。
「待たせたな、ニコラス。俺たちも帰るか」
「おう」
帰ろうとする二人をレジーナが大きな声で呼び止めた。
「ちょっと待ちな! 力が強そうな大人が二人もいるんだから、帰る前に店の前の雪かきをしていきな! あ、ルイスは病み上がりだから休んでていいよ」
女将に逆らえず、面倒臭そうに雪かきをする二人を僕は笑いながら窓から眺めた。
後日、アルベルトから特別手当をもらったニコラスは、女将さんが好きな王都の有名店のチョコレートと大きな花束を抱えて店にやってきた。僕たちがいなかった夜に女将さんとニコラスとの間に何があったのかは想像しかできないけれど。
女将さんは真っ赤な顔をしてニコラスの顔を見ていた。さっさとその場を離れた僕を誰か褒めてほしい。
アルベルトとニコラスはここモンタナの街に別邸を借りて毎朝ここから王都へ通っている。どうせ馬で三十分だからと言って笑うけれど、二人よりも馬が可哀想だ。僕も女将さんもそろそろ先のことを考えないといけないかもしれない。アルベルトはこのままでもいいと言ってくれているけれど。
でもあと少し。
家での嫌な記憶が薄れるまで、心の傷が消えるまでこのままで。
毎夜、アルベルトに抱きしめられるたびに、心がどんどん温かくなっているから。
きっと近いうちに心に降り積もった雪は解けるだろう。
…END…
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