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5*
解しきった場所から指を抜くと、この先のことを思い描いたのか、葵は馨の肩にしがみついてきた。
「このままここでしたい?それともベッドに行く?」
すぐに貫かれると思っていたらしい葵は、馨に問われて戸惑った顔をしてみせた。それすらも可愛らしい。
葵にこうして選択を迫っても、彼は何も選べない。馨の意思に従順でいることだけを教えてきたからだ。
「選べないから、両方、でいいか。ね、葵」
葵に煽られるまま、今夜はじっくり食べ尽くしてしまおう。そう宣言して蕩けきった場所にゆっくりと己の昂りを埋め込んでいく。中まで塗り込んだジェルのおかげで、根元まで咥え込ませるのはそれほど難しいことではなかった。
「……あぁぁッ、んん」
待ち侘びた刺激に、室内に葵の嬌声が響く。馨の腹に当たったものが震える感覚に、葵が挿入だけで達してしまったことがわかった。だが馨は葵が落ち着くのを待たずに、腰を揺すってやる。
「あ、んっ……んーーーッ」
「イキっぱなしで気持ち良さそうだね」
激しい動きは必要ない。葵の弱いところだけを的確に抉ってやれば、葵は背を反らして泣き始めた。突き出されるようにした胸を再び舐めてやると、それは余計にひどくなる。
葵が喘ぐこともできないほどぐったりとしたところで、ようやく馨はその体を湯から引き上げてやった。
ジェルをもう一度手に取りまだ達せていない自身に塗すと、壁に背を預けさせた葵の片足を抱え上げ、ゆっくりと挿れ直す。
「ん……んんッ」
かろうじて馨の肩にはしがみついているものの、ただ揺さぶられるだけの葵は本当に人形のようだ。それでも唇を重ねてやると、しっかりと馨を締め付け、快感に導いてくれる。
「眠そうだね。ベッドでもするんでしょう?」
馨が葵の中に熱を吐き出した途端目を瞑ってしまったことを叱ると、葵は重たそうな瞼を健気に開いてくる。けれど、すぐにまた長い睫毛の重みにさえ耐えられない様子で伏せてしまう。
眠っていたところを、こうして馨の欲望に付き合わせているのだ。とっくに体力の限界を迎えているのだろう。
「仕方ないな。だから学校になんて行かせたくなかったのに」
完全に落ちてしまった葵の体を清めてやり、馨は誰にでもなく愚痴を溢した。
アメリカでは、葵を馨の生活リズムに合わせることが出来ていた。帰りが遅くなる日は、日中に眠らせ、きちんと出迎えられるよう調整までしていたのに。馨もほとんど仕事に従事している時間帯とはいえ、葵を学校に拘束されるのはやはり耐え難い。
タオルに包んだ葵を運ぶ先は葵のではなく、馨の寝室。そもそも分ける必要はないと思っているのだが、部屋は余っているし、こんな風にすれ違いの生活が見越せていたから致し方なく形だけ、用意したまでだ。
後から無言で着いてきた使用人が脱衣所に残した葵のパジャマを入口に置いてくれるが、それを着せる気にはならなかった。
「愛してるよ、葵」
共に布団に潜り込み、生まれたままの姿の葵を抱き締め、そして愛を囁く。これを間違っているとか、異常だとか、そんな風に非難する権利が誰にあるのだろうか。
馨は相変わらず甘い香りを放つ葵を腕に閉じ込めながら、この時が永遠に止まればいいと、そう願った。
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