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「今日は何もしないよ」 長い時間触れ続けてきた体だ。例え布に包まれていようと、その下のどこに何があるかなんて馨には簡単に見抜けてしまう。だから馨はあえてその箇所を避けて、パジャマ越しの胸元へと指を這わせてみせる。 「ん、ん……あ」 鎖骨の溝を伝い、そして真ん中を通り、あばらの形を確かめるように丁寧になぞると、葵からは控えめに声が溢れた。そのまま下腹部に向かわせた指先で臍の窪みをくすぐり、そしてまた指を上へとのぼらせる。 たったこれだけで、きっともうあの場所はツンと主張し始めているに違いない。指で摘んで、捏ねて、舌で少し痛みを感じるほど抉り、舐め上げ、そして吸ってほしくなっているはず。そう教え込んできたのだから、当然だ。 何かを訴えるように葵が涙目で馨を見上げてくるけれど、宣言通り、今夜はこれ以上の悪戯をしかけるつもりはない。父の言うことを聞くわけではない。葵の試験を心配しているわけでもない。ただ勉強に夢中だった葵に小さな罰を与えたかっただけ。 「そろそろベッドに行こうか」 ひとしきり葵を震わせた後そう提案すると、ようやくきちんと触れてもらえると思ったのだろう。どこか期待した目をして葵は頷いてくるが、そうはいかない。 寝室に連れ込んだ葵を馨は布団の中で背後から抱き締め、再びパジャマの上から胸元に指を這わす。けれど、今度は尖る部分のギリギリを攻めるだけ。もう少しで撫でられるというところで、指を離し、また別の場所に着陸させる。 それを繰り返すと、葵の肩がひくつきだした。泣いてしまったのかもしれない。それでも馨はすでにこの遊びが楽しくなり始めていた。紅く染まりだした耳たぶだけを啄んでやり、葵にとってひたすらもどかしい刺激を与え続ける。 明日もまたこの遊びをしたくなってきた。そうして焦らしに焦らした葵を明後日味わい尽くす。最高に盛り上がるはずだ。 「二日間、試験を頑張ったらご褒美に沢山可愛がってあげるからね。残りの試験も頑張れるように」 あくまで明後日の夜までこれ以上の悪戯をする気が馨にないと分かり、葵の震えが激しくなった。何も暴力的なことなしていないというのに、開発され尽くした体にはこれが十分に罰になってしまう。 「それとも、試験が全部終わるまでお預けにしようか?体が疲れてしまったらかわいそうだものね」 ぷっくりと膨らんでいるであろう突起の周囲をするすると撫でながら、馨はさらに葵を泣かせにかかる。馨が葵を焦らすほど、きっと葵は試験中も馨に抱かれることだけを考えてしまうはずだろう。だからこうして葵に暗示をかけていく。 「パパにどんなことをされたいか、よく考えておきなさい。葵の大好きなこと、全部してあげるからね」 この言葉だけでもう想像してしまったのだろう。葵からまた熱い吐息が漏れた。本当に可愛く育ったものだ。 体がどれほど疼いたとて、葵は馨にねだるような品のない真似はしない。自分で自分の体を勝手に慰めることなどもってのほか。 あくまで馨の手に可愛がられるのを健気に待ち続ける、上品なお人形。これが馨の理想。 おやすみと囁いて胸元を弄る手をウエストに回し直しても、葵の震えが止まることはなかった。

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