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「もっと欲しくないの?欲しいよね?」 「んっ……ほ、し……」 「そうだね、葵はこれ好きだもんね」 美智にただ促され、言わされているだけ。でもそれでいい。自分の発した言霊で混乱し、惑い、そして騙されればいい。 美智の肩口に顔を埋め、啜り泣く姿はどうしようもない劣情を催させる。 「それとも、ここ沢山突いてほしいってことかな?それでもいいよ」 「あっ、んんっ、ダメ……、あぁ……っ!」 浅い部分にあるしこりを狙って押し込めば、葵からは悲鳴のような嬌声が上がる。美智を締め付ける粘膜がきつく痙攣し始めた。でもこれで絶頂を迎えさせるわけにはいかない。 葵の腰が反るギリギリのタイミングで動きを止め、熱の行き場をなくして悶える葵に口付ける。 「ここも好きだけど、奥も好きでしょ。さっき彰吾に沢山突いてもらったとこ、俺にも可愛がってほしいくせに」 唾液に濡れた唇を啄ばみながら意地の悪い台詞を与えると、葵は目にいっぱいの涙を溜めて見つめてくる。 「んっ……はせべ、さん」 「なに?」 尋ね返しても葵はその先を紡げなかった。美智のことを呼ぶのが今の葵の精一杯らしい。何をどう求めるのが正解なのかも分からないのだろう。 「本当に可愛いな。いいよ、今日はもう許してあげる」 「……や……っ、あっ、んんっ!」 葵の腰を掴み、中途半端に挿入された屹立を引き抜くと、一気に奥まで叩きつける。ソファのスプリングを利用しそのまま突き上げを始めれば、葵は美智にただしがみつき、揺さぶられるだけの玩具になった。 「あっ、んんっ、ダメ……、あぁ……っ」 「葵、こういう時は“もっと”っておねだりするんだよ」 自然と溢れでた拒絶の言葉を注意すれば、葵は美智に回す腕の力を強める。でも動きを緩慢なものに変え催促すると、葵からは消え入りそうな声で“もっと”と返ってきた。 「いいよ、もっとあげる」 「んっ、あっ……、あぁ…、ん───ッ!」 ねだられた通りにより一層激しい抽挿を繰り返せば、葵は美智のシャツに溜まりきった熱を放った。少し遅れて、美智も葵の中に精を吐き出す。 「やっぱり下のお口の方が優秀だね。早くこっちも追いつこうね」 揶揄するように唇を奪う。すると葵は絶頂による甘い余韻に浸りながらも、コクリと頷いてみせた。従順で、淫らで、それでいて無垢な存在。本当にいいものを見つけた。 「あーあ、汚しちゃったね。どうしようか、これ」 「……ごめ、なさい。ごめんなさい」 美智のシャツについた染みが何によるものか。はっきり告げずとも葵は理解したのだろう。そうさせたのは美智なのに、真っ赤になって謝罪を口にするウブなところも加虐心を煽る。 「いいよ、上着れば見えないから。泣かなくていい」 葵に罪悪感を与えれば、さらに美智に抗えなくなる。葵はまだ涙を零すが、意図を察している様子の彰吾は呆れたような視線を送ってきた。 後処理には、彰吾も参加してきたが、見学はつまらなかったのだろう。ボタンを留める合間に軽く胸を吸い上げたり、濡れた箇所をハンカチで拭うという建前で敏感な部分を擦り上げたりするような遊びを混ぜ込んでくる。 美智も当然それに乗じたせいで、せっかく身支度を整えさせても、葵からは淫靡な雰囲気が拭えないでいた。冷めない熱を抱え、体が疼いて仕方ないのだろう。時間が許すならば、物欲しそうな表情をする葵をもう一度押し倒したくなる。

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