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Liquidation 2-2
救急隊が到着し、ジェイクの容態を看たが、彼は即死だった。しかし鑑識のアレックス・ジャクソンが確認したところ状況は一変した。
「アレックスくん、彼はジェイクじゃないよ」
アレックスから死体の確認を求められたサムは断言した。よく似た背格好の男に、ジェイクのジャケットが羽織らされているだけのお粗末な偽装だ。
「顔の損傷が激しいが僕にはわかる。疑うなら指紋を――おっと、焼かれているな。実に巧妙だ。多少時間を要するが歯型を照合しろ。カーター巡査部長のものと一致しないだろうが」
「あなたを信じますよ、警部補。それにしても彼は何者なのでしょうかね。前があれば身元の特定は容易なんですが……」
「アレックスくん。これはオフレコだけど、僕はついさっきまでビルと話していた」
「爆弾魔とですか?」
「ああ。僕のせいでジェイクを人質に取られた。生死は定かではないが、生きていてほしいと願うのは僕個人の感情なんだろうか。だがあいつは容赦のない男でね。僕に復讐するためならなんだってやるさ。現にひとりの男が身代わりとして殺された。ビルは自分とは別に実行犯の男がいると匂わせた。彼がそうなのかもしれないし、違うかもしれない。とにかくこの死体の身元がわかれば手がかりになるだろう。手がかりになればジェイクの――」
「お言葉ですが」
サムの熱弁は自分よりも一回り以上も年下の若者の、冷静な一言に遮られた。
「あなたの気持ちは理解できます、ウィリアムズ警部補。だが指揮官はあなただ。あなたはこの事件に関わっている全員のうちの、誰よりも冷静でいなければならない。俺の言いたいこと、伝わりますよね」
「……言ってくれるね、君も」
アレックスの言うとおりだ。思えば初めから――ビルが関わっていると知った時から、サムは自分でも常軌を逸していると思っていた。
だがこれはあくまでも自分とビルとの問題で、周りの人間を巻きこみたくなかった。
特にジェイクだけは。
結果は最悪の形でサムに降りかかった。
「この一件で、おそらく僕は指揮官から外されるだろうね。身元の特定は君に任せたよ、アレックスくん」
「口元がにやけていることも、当然オフレコですね」
「君も僕のことわかってきたじゃないか」
独りのほうが気楽に動ける。誰もがこれからの行いを暴走というだろう。だがサムは、ジェイクを取り戻すためならば、バッジどころか命すら捨てても構わなかった。
マイルズ・ロビンソン警部のオフィスから出たサムを迎えたのはケビン・モリタ巡査だった。モリタは警部のオフィスにサムが呼ばれた理由を知っている。今にも泣きそうなその顔は、まるで迷子の子犬を思わせる。
「そんな顔するなよ、モリタ巡査」
「……ウィリアムズ警部補」
「お察しの通り、僕は指揮官どころか捜査から外された。僕の後任は知らないけど、きっとまともな人が務めるはずだ。爆弾魔とジェイクを頼むよ」
「単独でカーター巡査部長を捜すつもりですよね」
「はは、まいったなあ。アレックスくんから聞いたのかい?」
モリタとアレックスは部署こそ違うが十七分署で働くたったふたりの同期だ。それゆえ同期という枠を超えて親交が深い。昔のサムとビルのように。
「アレックスからは何も。ただ、僕が警部補の立場だったら同じことをすると思うから……」
この新米刑事は優等生の顔を持ちつつも、ジェイクに対してよこしまな感情を抱いている。だが彼もジェイクを心から心配するうちのひとりだ。
「ビル……爆弾魔の情報だが」
「はい、カーター巡査部長が持っている情報は、僕がすべて把握しています。若輩ながらも、捜査の役に立てます」
「それを聞いてますます安心だ。じゃあね、モリタ巡査。僕とジェイクが無事に戻れたら、また会おう」
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