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第78話

その後、ディルが剣と魔法を使った剣舞を見せてくれた。 俺はレイスと二人で、用意された椅子に座ってその様子を眺めていた。 ディルは魔法剣士で、火と風の魔法が得意らしい。 洗礼された剣技と火魔法が合わさって、すごくキレイで格好いい。 俺はそんなディルに見惚れた。 「……すごい、きれい」 「ディルの魔法と剣技は一流だからな」 レイスが少し嬉しそうに言う。 「俺はレイスの剣技もすごいと思うよ?ゴブリン倒した時とか、俺見入っちゃったもん」 「…でも俺は魔法が使えないから」 そう言ってレイスが少し気落ちする。 俺は、レイスは今でもすごいと思うけど…… レイスは何か、魔法が使えないことに引け目を感じてる部分がある気がする。 「誰にだって出来ない事の1つや2つあるのは当たり前だよ。確かにレイスは魔法が使えないかもしれないけど、それ以上にもっと凄いもの一杯持ってる。それに、レイスが魔法使えたら、俺要らなくない?」 俺がそう言うと、レイスはフッと吹き出した。 「そうだな」 レイスがクスクスと笑いながら俺の頭を撫でた。 「……ありがとう」 そう言ってレイスは微笑んだ。 しばらくすると、剣舞を終えたディルが戻ってきた。 「どうだった?」 「すごいキレイだった」 そう感想を言うと、ディルはニッコリと笑った。 わぁ、王子様スマイルの破壊力半端ないなぁ。 その後すぐ、ディルはレイスに絡んでいった。 「レイス、手合わせをしよう」 そう言って、ディルがレイスに剣を掲げる。 「…今からか?」 レイスは少し呆れ気味にそう返す。レイスはいまいち乗り気じゃないみたいだ。 ………レイスとディルの手合わせか。 「……見てみたいな」 無意識にそう呟く。 俺はハッとして二人を見ると、二人とも俺を見下ろしていた。 レイスが大きくため息をついたかと思ったら、俺の頭に手を置いてポンポンと叩く。 「一本だけだからな」 そう言ってレイスは自分の剣を手に持った。

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