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第46話

約束の30分が過ぎて、俺は更衣室になっている教室に向かっていた。 ………疲れた。 そう思って、俺はため息をつく。 教室を出るとき、引き留められたけどこれ以上はさすがに無理だった。 「あ、中村だ」 更衣室のドアに手をかけた時、急に声を掛けられた。 その声に体がビクッと跳ねる。 声がした方を見ると、佐倉先輩がニコッと笑って立っていた。 ………何でこの人が。 「中村、凄い噂になってるぞ。……へぇ、それが衣装?」 そう言って佐倉先輩がジロジロ見ながら近付いてくる。 俺、この人は苦手だ……… 「ウェイターって聞いたけど、どっちかって言うと執事だな」 そう言って近付いてくる先輩に、俺は思わず後退った。 「そんな逃げなくてもいいじゃん」 先輩は笑いながら更に近付いてきた。 ……この人、なんか怖い。 そう思っていると、佐倉先輩の後ろから女の人が出てきた。 「こら、止めなさい!怖がってるでしょ!」 そう言って、その人は佐倉先輩の頭をバシッと叩く。 ……この人、たしか副会長の。 この学校は、副会長を二人置く決まりがある。この二人が今の副会長だ。 「いったいなぁ!何するんだよ、翠」 佐倉先輩は叩かれた頭を押さえる。 「あなたが後輩を苛めてるからでしょ!」 「ただ話してただけだろ」 「明らかに怖がってるでしょ」 そう言うと、その人はくるっとこっちを向いた。 「ごめんね、怖がらせて」 「……あ、いえ、大丈夫……です」 そう言うと、その人はパアッと笑った。 「ヤバい!この子可愛い!」 そう言って、その人は佐倉先輩の肩をバシバシと叩く。 「痛い痛い!分かったから叩くなって!」 そう言って、佐倉先輩は叩いてくる手を止める。 ………何なんだろ、この人たち。 そう思って見てると、女の人と目が合った。 「あぁ、ごめんね。私は副会長の宮藤 翠」 よろしくと言って宮藤先輩は手を出してきた。 俺は、その手を取ることを躊躇した。 まだ人に触れることが出来なかった。 宮藤先輩は何か察したのか、その手を引っ込める。 何か申し訳ないと思って見ていると、宮藤先輩はニコッと笑った。 「でも、これは……秋哉くんが気に入るの分かるなぁ」 そう言って、宮藤先輩がじっと見てきた。 緋桜は少し怯んでしまう。 それを見て、宮藤先輩は笑った。 「ねぇ中村くん、秋哉くんのところ行こうか」

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