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第45話
ー学園祭当日ー
「中村くん、これ着てね」
そう言って女子に衣装を渡される。
女子たちは目がギラギラしててなんか怖い。
俺は小さくため息をついた。
………引き受けてしまった以上やるしかないけど、本当に俺が着るのか………これ……
渡されたのは白いシャツに黒のズボンに黒のベスト、ジャケットは燕尾使用。
………これ、ウェイターと言うより執事に見えるんだけどな。
俺は取り敢えず、渡された衣装に着替えて教室に向かった。
教室に入ると、途端に教室の中がざわめく。皆の視線が集まって、何かヒソヒソと話す。
………やっぱり、引き受けるんじゃなかった。30分とはいえ、かなり気を使いそう。
何もトラブルがないと良いんだけど…………
時刻は9時半、学園祭が始まった。
期間は3日間。
一日目、二日目は各クラスの催し物。
一日目は生徒だけで、二日目に一般客が入る。
三日目は、有志による催し物、閉会式、後夜祭がある。
うちのクラスは在り来たりな催し物なんだけど、なせが初っぱなから大盛況だった。
俺は接客とか出来ないって言ったら、立ってるだけでいいと言われた。
本当に立ってるだけでいいのか分からないけど、俺は言われた通り教室の角の方で立っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(秋哉side)
「………なんかあのクラス盛り上がってるな」
あれは、緋桜のクラスか?
「あれ、会長、知らないんですか?」
「何?」
開会式が終わって、各クラスが催し物を始める。
俺は問題がないか見回ってる最中だった。
一緒に回ってるのは、二年の先輩で書記の日向 朱春。
「あのクラス、中村くんがウェイターをするって噂になってて、しかも一日目の30分だけっていう超レアなんですよ。だから、その姿を一目見ようと人が集まってるんです」
『彼、人を寄せ付けない感じですけど、実際はすごい人気ありますよね』と日向先輩が言う。
ただ、俺には先輩の言葉は耳に入ってなかった。
………緋桜が、ウェイター?
俺は考えるより先に走り出していた。
「え、ちょっと、会長!?」
そんな俺に日向先輩が驚いた声を上げた。
俺はガラッと教室のドアを開ける。その瞬間、教室の中がざわめいた。
俺は教室の中を見回して、隅の方に緋桜の姿を見つけた。
俺が緋桜に近くと、緋桜は驚いた顔をした。
「……木崎、なんで?」
「見回りの最中………」
「……そう、なんだ」
「緋桜こそ、ウェイターなんてどういう風の吹き回し?」
そう聞くと、緋桜の視線が少し泳ぐ。
「……………最初は断ったけど、女子の気迫に負けた。30分だけっていう条件で、引き受けた」
そう言う緋桜に、俺は思わず笑ってしまった。
「言ってくれればいいのに」
「忙しそうだったし………知らせるほどでもないかと思って……」
「ひどいな。俺だって緋桜のウェイター姿見たいのに」
そう言って俺は緋桜の姿を上から下までざっと見た。
「でも、ウェイターって言うより執事……かな?」
「………俺もそう思う」
「うん、でも似合ってる」
「……別に、俺は………」
そう言って緋桜は俯いてしまった。
俯いてしまった緋桜の顔が赤いような気がして、俺は緋桜に手を伸ばした。
「会長!早く行かないと時間がないですよ」
緋桜に手を伸ばし掛けた瞬間、日向先輩に呼ばれて俺は我に返った。
「え、あ、そうだった!ごめん緋桜、俺もう行かなきゃ!」
そう言って俺は急いで教室を出た。
「……会長、中村くんと仲良かったんですね」
教室を出て目的地に向かう途中で日向先輩がそう言う。
「え?」
「俺、中村くんがあんなに人と話すのを初めて見ましたよ」
「そうですか?緋桜は比較的話す方だと思いますけど………?」
「そんな事ないと思いますよ」
そう言って意味あり気に笑う先輩に、俺は首を傾げた。
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