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第243話
(秋哉side)
「…ごめん、ここに住むのが嫌な訳じゃないんだ……寧ろすごく嬉しい。でも、本当にここに居て良いのかって思ったら……」
少し間を置いて落ち着いたとこで、緋桜はまたポツポツと話始める。
多分緋桜は俺と一緒に住むってことを漠然としか考えてなかった。
それがゆかりさんのメールで実感出来るものになった。
ふんわりしてたものが、急にはっきりした形で目の前に突き付けられた。
それは誰だってビビるけど、緋桜は人一倍ってことか……
『ここに居て良いのか』なんて、そんなのもう既に答えが出てるのに。
緋桜はいつもそれにぶつかる。
いつになったら気付いてくれるのかな。
「ねぇ緋桜、これは俺の我が儘だよ。俺が緋桜に側に居てほしい、俺が緋桜と離れるのが嫌なんだよ」
そう言って緋桜を抱き締める。
緋桜もそれに答えるように俺の服を握った。
「……でも俺、何も出来ない」
「いつも言ってるでしょ、何かしようなんて考えなくていい。そのままで良いんだよ。側に居てくれるだけでいい」
そう言うと、俺の服を握る緋桜の手に更に力がこもった。
「あ、でも、緋桜が不安ならあの部屋はそのままにしとこうか?」
「え?」
俺の言葉に緋桜はきょとんとする。
多分緋桜にとってあの部屋は、ここから出て行くための逃げ道。
緋桜自身はその自覚は無いけど、緋桜はいつもここから出て行く時のことを頭の隅に置いてる。
そんな逃げ道があるのは俺としては不本意だけど、それで緋桜が安心するなら別にいい。
「あの部屋があることで緋桜が安心するなら、そのままにしとこうよ」
そう言うと、緋桜は少し考える素振りをする。
少し考えて、緋桜は小さく首を振った。
「……もう、大丈夫」
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