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第338話

扉が開くと、出てきたのは俺と同じ高校生くらいの男の人。 その人は俺に気付いて、睨むように見てきた。 「あんた、何?」 そう言ってその人は睨んでくる。 俺は思わず後退ってしまった。 「ここで何してんの?ここ、関係者以外立ち入り禁止なんだけど」 「……ぁ……俺は……」 ちゃんと今日からここで働くって言わなきゃいけないのに、言葉が出てこなかった。 「青木くん?どうした……って緋桜くん!?」 その人に不信がられて何も言えなくてどうしようと思っていると、その人の後ろから高橋さんが俺に気付いて顔を出す。 俺は高橋さんの顔を見てホッと息を吐いた。 「いやぁ~ごめんね、びっくりしたでしょ?本当は俺が出迎える予定だったんだけど」 そう言って高橋さんが謝ってくる。 「……大丈夫、です」 俺が首を振ると、高橋さんはクスッと笑う。 「じゃあ、はい、これ制服ね」 俺はスタッフルームに案内されると、シャツとエプロンを渡された。 「ロッカーはここを使って、着替え終わったら店内に来てね」 そう言って高橋さんはスタッフルームを出ていった。 俺は言われたようにロッカーに荷物を仕舞うと、渡されたシャツに着替えた。 エプロンを着けてスタッフルームにあった鏡で一通り自分の姿を確認した。 ……これであってるよね? 格好からして、俺がやるのはウェイターみたいだ。 そういえば学校の文化祭でもウェイターしたなと思い出す。 あの時は30分だけ立ってただけだったけど。 俺はこれで多分大丈夫だろうと思ってスタッフルームを出た。 前と違って今は営業中だからお客さんが居るかもと思って、俺は柱の影に隠れて店の中の様子を伺った。 「何してんの?あんた」 店の中を見ていると、急に声を掛けられてビクッと体が跳ねた。 見るとさっきの人で、その人はじっと俺を見下ろす。 俺はその目が怖くて、思わず目を逸らしてしまった。 そんな俺を見て、その人はため息をつく。 その後カウンターにいた高橋さんに何かを伝えていた。 その人が高橋さんに何を伝えたのか分からないけど、すぐに高橋さんが俺のところに来た。 「うん、似合ってるね」 俺の姿を見るなり、高橋さんがそう言ってニコッと笑う。 「じゃあ、こっち来て」 そう言われて、俺は店内に案内された。 今はお客さんは居ないみたいだ。 そう思って俺は店内を見渡した。 店内は前に来たときとは違って、コーヒーの香りや甘い香りが漂っていて、落ち着いたクラシックが小さめに流れている。 営業中ってだけで、店の雰囲気がガラッと違うように思えた。 「緋桜くん、紹介するよ」 そう言って高橋さんが連れてきたのはさっきの人。 「彼は青木 康介くん、君と同じバイトだよ」 そう言って高橋さんからさっき人が紹介された。 「…ぁ……えと……中村……緋桜です」 俺も名前を名乗ると、青木さんはまたじっと見てきた。 俺は思わず、また目を逸らしてしまった。

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