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第461話 青木
本当に偶然だった。
たまたま一真さんのところに来ていて、客が来たみたいだから帰ろうと思ってた。
まさかそれが中村と木崎だとは思わなかった。
一真さんも二人が来たことに驚いてたから、来るなんて思ってなかったんだろう。
中村は俺を見た瞬間、震えて木崎にすがる。
無理もない。俺はそれだけの事を仕出かしてしまったんだ。
本当なら俺は二度と二人の前に顔を出しちゃいけない存在。
木崎が震える中村を抱き締めて落ち着かせている。
その後、俺を睨んできた。
俺は木崎の顔が見れなくて、目を逸らした。
罵声でも浴びせられるのかと覚悟した。
でも木崎は一瞬目を伏せた後、俺を一度も見ること無く『今日は帰る』と言って店を出ていった。
俺は二人が居なくなって気が抜けたのか、その場に座り込んでしまった。
「康介くん!?」
座り込んでしまった俺に一真さんが駆け寄ってくる。
「康介くん、大丈夫?」
そう言って、一真さんは座り込んでしまった俺を引っ張って立たせてくれた。
「……すいません」
「ううん、まさか俺も二人が来るとは思ってなかったから」
「………俺、もうここには来ない方が良いですよね」
俺がここに出入りしてるとまた鉢合わせする可能性がある。
「そんな事言わないで。二人には俺からフォロー入れておくから」
『ね?』と言って、一真さんは俺の頭に手を置いた。
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