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第460話

青木さんを見た瞬間、呼吸が上手く出来なくなった。 体が震えて、俺は隣に居た秋哉にすがった。 ……なんで、なんで青木さんがここに そう思って、俺は秋哉の服をギュッと掴んだ。 自分に『大丈夫』だと何度も言い聞かせる。 それでも体の震えが止まらなくて段々とパニックになってくる。 どうしたら良いのか分からなくなっていると、何かに包まれた。 見ると秋哉に抱き締められていた。 『大丈夫』 耳元でそう聞こえて、俺はホッと息を吐いて秋哉に身を委ねた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (秋哉side) ノワールに行くと、青木が居た。 俺たちもアポなしで行ったから、完全な偶然だ。 前もって高橋さんに連絡取ってれば鉢合わせはしなかっただろう。 俺は今回に限って連絡しなかったことを後悔して舌打ちをした。 緋桜を見ると、顔が青ざめてカタカタと震えている。 俺の服を握って、必死に耐えていた。 そんな緋桜を抱き締める。 そうすると、緋桜の震えが少し和らいだ。 「木崎くん、緋桜くんは……?」 高橋さんが緋桜を心配して駆け寄ってくる。 その足音に緋桜が体を震わせた。 俺は駆け寄ってくる高橋さんを止めた。 高橋さんも察したのか、それ以上は近付いて来なかった。 「すいません、今日は帰ります。これからはちゃんと事前に連絡するようにするので」 そう言いながら青木を見ると、青木は顔を逸らした。 今回はこちらに非がある。 青木に怒りをぶつけるのはお門違いだ。 そう思って、俺は息を吐いた。 「緋桜、行こう」 そう言うと、緋桜は小さく頷いた。 緋桜を連れて佐々木の元に戻る。 佐々木は緋桜の様子がおかしいのに気付いて慌てて車から下りてきた。 「緋桜くん、どうしたんですか!?」 答えられそうにない緋桜に代わって、佐々木は俺に聞いてくる。 「青木が居た」 「……青木って」 『青木』って名前と緋桜の様子を見て、佐々木は全部理解したみたいだった。 「分かりました、取り合えず乗ってください」 そう言って佐々木は車のドアを開けた。 緋桜を先に乗せて、俺もその隣に乗り込んだ。 その瞬間、また緋桜がくっついてくる。 くっつくっていっても、俺の服を握って少し体を寄せるっていう控えめなもの。 俺はそんな緋桜を抱き寄せた。 緋桜はそれには抵抗せず、身を委ねてきた。

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