てっきり僕は、イかせてくれるものだと思った。 　しょうがない子ですね、なんて言って、切羽詰まってる僕のモノをあったかい手のひらで包んでくれるって。 　ナカを擦られながらイくのってどんな感じんだろう……そんな期待を込めてりっくんの指を締め付けようとしたのに、じゅぷっと卑猥な音を立てて三本一気に引き抜かれてしまった。 「はぁ、っ……ふぅっ……」 　二回も寸止めされるのはツラい。下っ腹に集まった熱が溜まりまくってて、おかしくなりそうだ。 　引き抜かれた拍子に、お尻が激しく上下に揺れた。先端に溜まったカウパーがたくさんシーツに散った気がするけど、それを確認できるほど心身に余裕は無くて。 　ただただ、漏らしたみたいで恥ずかしい……。 　それもこれも、分かっててイかせてくれないりっくんのせいだ。 「……りっくん……」 　下半身の感覚が無くなっちゃたみたいな、大袈裟に言うとギリギリイけない絶望感で僕は不貞腐れた。 　濡れたアナルを気にしながら息を整えて、りっくんに少しだけ非難の目を向ける。とぼけてニッコリ微笑まれでもしたら、僕の機嫌はきっと一発で治っちゃうんだろう。 　そんなことを考えて頑張ってムスッとした僕に、りっくんは突然「すみません」と謝ってきた。 「本当にすみません。あの、冬季くん……その……」 「……な、なに？　なんで急に謝るの……？」 　この土壇場で謝るなんて、悪いことしか浮かばない。 　我慢できなくて喘いでしまった僕の声が嫌だった？　〝やっぱり男は無理〟って言う気？ 　すぐに気持ちが落ち込んで自傷行為に走る僕には、病む思考が簡単に出来た。 　四つん這いを崩してぺたんと寝そべった僕は、今の今まで僕のナカをいじくりまくってた指をティッシュで拭うりっくんを凝視した。 　イけない絶望感よりひどい感情を抱いたその時、僕は自分で自分が何をしでかすか分からない。 　出来ればりっくんには、否定的な事は言ってほしくない……。僕のお尻をジッと見つめてるりっくんが何を考えてるか、予想するのも怖い。 　でも、りっくんが嫌だと思うことを無理にはさせられない。 　そうだ。りっくんはノンケなんだから、最初っからうまくいくなんて思ってちゃいけなかったんだ。 　僕は、りっくんのそばにいられたらそれでいい──。 「あのですね、冬季くん。……挿れたい、です。もう限界です……」 「うん、……えっ！？」 　どんな言葉で宥めるのかと気を張った僕に、りっくんの方こそ切羽詰まった顔で「限界です！」と小さく叫んだ。 「冬季くんも限界なのは分かっているんですが、俺もギリギリでして、その……挿れたくてたまらなくて……。お恥ずかしい話、興奮のあまり下着が濡れてしまって気持ち悪いんです……とりあえず窮屈なので出してもいいですか？」 「えぇっ！？　そ、そんなこと改まって言われても……っ」 「君を啼かせている指に嫉妬し始めていたので、俺は今本当に限界だと思うんです……！」 「指に嫉妬っ！？　りっくん、それはちょっとどうかと思……んんっ！」 　とんでもない事を言い始めたりっくんが、予想外の言葉にたじろぐ僕にガバッと覆い被さってきた。 　無理な体勢で、濃いキスを迫られる。かぷっと下唇を噛まれた僕が薄く開いたそこに、にゅるんとりっくんの舌が入ってくる。 　やっと、「絡ませ方が上手になった」と褒めてもらえるようになったのに……圧迫感も手伝って早々にギブアップしてしまった。 「ん、むっ……んっ、り、……くん、くるし……っ」 　僕は、あったかい舌に追いかけ回されるのが好きになった。ちょっとだけ、呼吸の仕方も舌の動かし方も覚えてきたんだ。 　だけど一回り以上大きなりっくんが興奮気味に僕の背中に乗っていて、求められるままに後ろを振り返ってのキスだからすぐに力尽きてしまう。 　りっくんの限界発言にドキドキがぶり返した僕も、もっと長くキスしてたかったんだけど無理だった。 「んくっ……う、っ……！」 「冬季くん……っ、挿れたいです！」 「ひっ……あぁっ……」 　唇が離れてったと同時に、呼吸を整える間もなくりっくんのモノをお尻に擦り付けられる。 　いつの間に出してたの……っ？　ていうか、りっくん……めちゃくちゃ興奮してくれてる。 　お尻の割れ目に沿うモノが、まるで僕のモノとは比べものにならないくらい固くて長い。おまけにわざわざ見なくても分かるほどガチガチで、たしかに……濡れている。 「あっ、りっくん……、やらしい……っ」 　ぬちゅ、ぬちゅ、と僕のお尻に擦り付けてくるりっくんの熱いモノは、少し角度を変えるだけでスルッと入ってきちゃいそうだ。 　僕の闇堕ちなんて他愛もないことだった。 「冬季くん……、可愛いです……っ」 「ん……っ！　りっくんっ、だめ……っ、そんなに動いたら入っちゃうってば……っ」 「堪え性がなくてすみません！　大人げなくてすみません！　全然スパダリじゃなくてすみません……っ！」 「わ、分かったから落ち着いて、りっくん！」 「は、はい……っ」 　僕で興奮してくれてるのは、よく分かった。 　二回も寸止めされて今も継続中なんだけど、このりっくんの様子を見てたら無理もないかと、なぜか僕はいたく冷静だった。