123 / 125
後日猥談 ─初夜─15
◇ ◇ ◇
今自分がどこにいるのか、何をしてたのか、意識が飛んでどれくらい経ったのか、星が散った頭では何にも考えられない。
分かるのは、下半身がやたらとだるいってことだけ。
あ……そっか。僕イったんだっけ。
ナカと外からの猛烈な刺激と快感に耐えきれなくて、イっただけで気を失っちゃったんだ……。
「── 冬季くん、大丈夫ですか?」
りっくんのひどく心配そうな声が聞こえる。僕を呼ぶその優しくて甘い声に、さっきまでの欲は感じない。
この穏やかで落ち着いた声、好きだなぁ……。
いつの間にか横向きに寝そべってた僕のお尻を揉まれながらじゃ、いい声と余韻になんて浸れないんだけどさ。
「……大丈夫じゃない」
「うっ……ごめんなさい……!」
僕が意識を飛ばしてたのは、ほんの数分だっったみたいだ。
歯医者さんルックのりっくんはまだ、こめかみを流れた汗でサイドの髪が濡れてるし。遠慮なく僕のお尻を揉む手のひらは、しっとりどころかじっとりしてるし。
「…………っ」
無表情でお尻を揉んでくるりっくんと目が合って、咄嗟に顔を背けてしまった。
な、なんでそんなに平然と僕のお尻を触ってるの……。
そんなことをしそうにはとても見えない、一見清廉としか言いようのないりっくんが、僕を心配しつつも真顔でお尻をもみもみしてるというチグハグさに、思わず吹き出しそうになった。
「冬季くん? 怒っていますか?」
「い、いや……怒っては……っ」
別に僕は、怒りたくも不機嫌になりたくもないんだ。意識が飛ぶくらい気持ちいいことを、他でもないりっくんが与えてくれたんだから。
じゃあ、この感情は何なんだろう。
拗ねたくないのに、拗ねたような態度を取ってしまう。謝ってほしくなんかないのに、りっくんの優しさに甘えてそっぽを向いちゃうのはどうしてなの。
「や、やめてって言ったのに……違うの出ちゃったらどうしてたの、りっくん……」
自分でも見るに堪えないほど尖った唇が、勝手に動いた。
まるでホントにいじけてるみたいだけど、僕自身が何をそんなにモヤモヤイジイジしてるのか分かんないから、りっくんの真顔を直視出来ないでいた。
「ん〜……。それは俺、何でもいいです、って言いましたよ?」
「僕がよくないの!」
「うっ……」
初めてのセックスで漏らしちゃうなんて、そんなの誰だってイヤに決まってるじゃんっ。
尿道から飛び出したのが精液で良かった、って心の底から思ってるんだよ。
りっくんの手のひらでは受け止めきれないくらいたくさん出ちゃったけど、あれはりっくんがナカで前立腺を刺激しまくったせい(しかもすんごくやらしい腰つきで!)だ。
あぁ、分かった……分かったぞ……っ。
僕、拗ねても怒ってもない。もちろん不貞腐れても、いじけてもない。
いろんな醜態を晒したことが今さらながらに恥ずかしくなって、照れてるんだ……!
「ごめんなさい……機嫌を治してください、冬季くん」
「や、やだ、もう謝らなくていいよ。怒ってるわけじゃないんだって、今気付いた。なんか色々……衝撃的で、恥ずかしくて、……」
「…………?」
言ってるうちに、顔が赤くなってくのが分かった。
ほっぺたが熱い。りっくんのうっとり顔を思い出すと、お尻がキュンッてなる。
抱きしめられるあったかさを知って、舌が絡み合うキスも知って、感じるって知らなかった平らなおっぱいを開発してもらって、ついには挿入。あげく前立腺も暴かれてしまった。
最中は必死でそんな余裕は無かった。
でもいざ思い返すと……ドキドキが止まらなくなってくる。
僕、どれだけ喘いでた?
僕が闇雲に掴んだ分だけ、りっくんの白衣がヨレヨレになっちゃってるよ?
あまりにも僕が何度も呻くから、りっくんはこんなに汗だくになるまで我慢して、優しく抱いてくれたってことだよね?
思ってたほど揺さぶられた記憶も無いし、そもそも全部入ったのかもまだふめいだ。
……ていうことはつまり、今日のは序の口セックス……そういう事?
ともだちにシェアしよう!