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そんな目で見るな!
あれから一週間が経ち、高杉くんと清水さんは退学を余儀なくされた。僕は高杉くんだけでも停学にならないのかと先生に詰め寄ったけど、やっぱりやらかしたことが大きすぎたらしい。
清水さんは仕方がないとはおもうけど、被害者が今回の件は無かったことにして良いって言っても駄目だった。
ままならないストレスは緩和することはなくて、なんとなく僕が関わっているのは分かっているのだろう、いじめこそなくなったが腫れ物扱いはしばらく続きそうだ。
「すっっっごくストレスなんですけど!!!」
「わかる、わかるけどとりあえず落ち着こうか。」
あいにくの雨だったのでグラウンドは使えず、体育館でバレーボールの授業である。
僕は別にやる気満々だったのだけれど、何故かクラス全員まさかの満場一致で得点係である。解せぬ、学が小さい体を生かしてリベロで大活躍してるのを見てるのはめちゃくちゃ面白いけども。
「吉崎って以外と運動神経いいんだな。」
「何いってんの益子。学の瞬発力はすごいよ?主に逃げ特化とか言ってたけど。」
「逃げ特化大活躍じゃん…」
ちなみに50メートル走では7秒台を切ることもあるとか。めっちゃ楽しそうにボール拾いまくってるのを見ると若干狂気さえ感じる。バレーボール部員顔負けの大活躍だ。
体育館履きの擦れる音が館内に響くのが少しだけ沁みる、青春の音の一つだなぁ。
「なんかさ、別にいいんだけどさ、こう…ちょーーーっとだけ寂しくなっちゃうよネ…」
「お、すねてんのかきいち?すねちゃってんのか?うん?」
「だってさぁ、なんかそんなつもり無いのに察してちゃんみたいになってんの大変不本意なんだけども!」
「でた!変な日本語。お前説明できないとき難しい言葉使えばいいとか思ってんだろ。」
バレてるでござる。思わずむぐりと口を紡ぐと益子に笑われた。教師の笛の音が響いて試合終了の合図とともに元気よく挨拶している。一番輝いてる学が、オァーッス!!とか男らしい声を上げてて笑った。
「そういや今年の体育祭実行委員は誰になんだろ。」
「3年不参加だしな、内申目当てで成績やばいやつが積極的に参加しそうだけどな。」
確かにとうなずく。誰もやりたがらないイベントの実行委員は成績が悪い人たちにとっては神頼みの一つだ。真面目に取り組んでても頭悪いだけなんですという言い訳になるらしい。知らんけど先輩がそれで留年を回避してから、みんな目の色が変わったのだ。
「きいちは?やんの実行委員。」
「やりませんけど!むしろ体育祭も不参加でお願いしたいくらいなんですけど。」
「あー、文化祭はお前が先生に名指しされてたっけか。」
「うん。起きてたらなってた、とんだサプライズだったわぁ…」
委員会決めで爆睡ぶっこいてたのでね、すまんの!
けして不真面目ではないんですけどねぇ、どうもホームルームはだめだ。
「見てたか俺の勇姿!!惚れてもいいんだぜ!?」
「学テンション高いな!」
「体育の後に謎に雄味が増すのほんと面白いからやめろ。」
学も何かが吹っ切れたのかあれからまた一緒にいるようになって嬉しい。生徒会で細々したことでちょいちょい姿を消すけど、なんか毎回連絡をくれる。彼女か。
益子情報がどこまで正しいかわからないけど、末永くんが学のことを気になっているらしい。もし二人がうまいこと言ったら人気者のビッグカップルの誕生だ。学はちなみに知らないらしい、先は長そうである。
「あー!やっぱ体育はいいな!汗を流すのいいわ!デスクワークはクソ!!」
「よほど事務処理にストレスが溜まっていたらしい。」
「輝いちゃってんもんね、タオル振り回してごきげんだなもう…」
はしゃぐ学は面白いけども、周りの学の隠れファンの奴らは微笑ましく眺めている。まるで親戚の孫を見るような優しい眼差しだけど、前みたいにギラギラした視線は少ない。おそらくふるい落とされて今は選抜された隊員たちしか残ってないのだろう、おもしろすぎる。
3人で仲良くクラスに帰る。なんだか早く帰ってきたみたいで僕等しかまだ付いてなかった。これ幸いと学が豪快に服を脱いで汗を拭っている。僕もなんだかんだ汗はかいてないけど、このださい体育着を脱ぎたくてそのままジャージと纏めて脱ごうとした。
脱ぎかけのときのタイミングが重なり、ガラリとクラスメイトが賑賑しく扉を豪快に開けた。なんとなくドアの開く音がすると顔を向けてしまう本能に身を任せて学と二人で扉の方を向い途端。
「ごごごご、ごめん!!!」
「ん!?」
「ぶふっ、ぐ、くくくくくっ」
わたわたした野球部三人組は謎に顔を赤らめながら扉を慌てて締めると、何故か今は入るなー!!とか叫んでいる。呆気に取られて学と顔を見合わせると、何がそんなに受けたのかシャツにジャージの中途半端な格好の益子が机を叩いで爆笑していた。
なんとなくムッとした学がガシリと僕の腕を掴んでそのまま扉に向かうと、先程とは逆に勢いよく扉を開いた。僕まだシャツ引っ掛けただけなんですけど!?
「お前ら!!何勘違いしてんだ!!」
「っ、きゃァァ!!」
「きいちは男だぞ!?俺だってちんこついてる!!」
「学くん!?なんのはなし!?」
ドアキーパーを請け負ってた三人組は顔を赤くしたり青くしたりしながら乙女のような叫び声で後退りした。指の隙間からばっちり目があってるよ!!そして学は何故か力いっぱい僕のぺったんこな胸を叩いた。
「いぁ…っ…たい!!」
「これの!!どこが!!おっぱいにみえんだ!!」
げほげほむせながら見事な紅葉を人の胸板に付けながらドヤ顔をする学の横で悶絶する。素肌にビンタはやめてほしい!
謎のテンションを醸し出してた野球部その他はあわあわしながら頷くと、なぜか失礼します!!と言いながら入ってきた。なんでだよ。
「おいおいお前ら、きいちと学がいくら色っぽくっ立って中身ゴリラだぞ?見た目で判断してるようじゃ童貞のままだぜ?」
「は!!益子まさかおまえ童貞を抜けたというのか!!」
「なんの、一体いつの話をしてるんだ。そんなの、とっくにきまってるだろ?」
くそおおおという男味あふれる雄叫びを上げるその他クラスメイト男子共から謎に益子が祭り上げられたけど、だからなんでだよ!!
結局その時は全く意味がわからなかったが、僕が謎のイケメンにお姫様だっこで運ばれていった様子を見たやつがいたらしい。あまりに親密だったので僕が抱かれたのではないかという噂が流れたようだ。
いや間違いじゃないけども!!抱かれてるけど、そのときは違うというかなんというか、真相はいかに?と期待の目で見つめられても困るというか。
「ていうか僕尻でしか抱いたことないじゃん!!僕だって俊くんで童貞脱したいんですけど!!」
「ぶほぉっ!!!」
尻で抱くというワードでついに限界を迎えた益子がヒーヒー言いながら転げ回って笑っている。
学がつま先で蹴っても全く動じない。脱童貞はメンタルも鋼なのか!
というか僕だって童貞だから仲間でしかないじゃん!?期待を込めてクラスメイトを見ると、やっぱり抱かれたのかという目で見られた。
何だその目!キラキラした目でこっちを見るな!
そしてしばらくの間俊くんが発信源の尻で抱くというワードは一部の受け側の子たちの中で一大ブームになったということを、後になって僕は知ったのである。
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