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駄々しか捏ねていない *
「ァあ、アッあ、だ、だめ、ぇっや、ひ、ぅっ!」
「っぁ、いい…」
「ふぁ、ま、また…いや、ぁっ…」
くってよし、とお許しを出したまではよかった。だけど、悠也の興奮度を図り間違えていた俺は、すでに何度も死ぬかと思うほどの快感に泣かされ、そして言葉と裏腹の体を若い精力で何度も揺さぶられた。
「う、ぁ…っ、だす、葵、奥入れて…」
「も、はいんない…っ、は、いんな…いよ、ぉ…!」
「あ、イく…はぁ、あ…っ」
「んや、ぁ、あっ…ま、た…ァっ」
腹が破けるのではと思うほどの精液が、律動に合わせて掻き出され、シーツに液溜まりをつくる。
熱い性器が奥の大切な部分に強く押し付けられる。
脳内がスパークするようなきつい快感に、年上だというのに泣きながら感じ入ってしまった。
「ゆ、ゃ…も、ぉし…まぃ、っ」
「だめ。」
「やぁ、あっやだ、ぁっ、ひ、しぬぅ…っ」
「しなない、っ」
「ばか、ぁっ、ぁあ、あ!あ!だ、だめ、ぇえっおわってぇ、えっ!!」
がくがくと激しく揺さぶられ、力が抜けた体はいともたやすく拓いてしまう。熱に浮かされた足りない頭では、喃語のような駄々しかこねられない。
まさかそれに悠也が更に興奮するだなんて思わなかった。俺は必死に止めないと、大人として駄目になりそうなくらい情けない姿を晒すことになりそうだったのだ。
「っ、ここ…張ってる…ここきもちい?」
「ぁ、だ、だめぇ…やぇ、っ」
「ここ、押し付けると…締まる…っ」
「んぁ、ぁあっは、らめ、ぇっ…もぇ、ちゃ…っ」
腹の内側は悠也の精液を飲み込み、そして性器でごりごりと前立腺と膀胱を刺激されれば、出すものがなくなった情けない性器から迸るのは尿意にも似た感覚だった。
「ひ、ぃや、だ!や、やっ…みちゃ、や…だぁ、あっ!」
ぶしっ、とせき止めていたホースから水が突然吹き出したかのように、ばしゃばしゃと揺さぶられるままに撒き散らした。
「うぁ、あっ、ァ、は、んぁ、あ、あぁ、っ」
「っ、いいね。もっと、みせ、ろ…って!」
「ぅ、ぐすっ、ばか、ばかぁ、あっ!ば、かぁ、あぁっ」
まるで律動に合わせるかのように強弱をつけながらぶしゅぶしゅと漏れるそれは、容易くベッドのシーツに染みを広げ、汗とは違うぬめりでリアルに悠也の性器の硬さや熱さ、押し広げられる内壁の収縮も感じ取れる位に敏感にさせ、俺の頭も馬鹿にさせた。
腰を打ち付ける乾いた音が、水面を叩くような音に変わる。腰を掴む熱い手のひらから体が解かれ、行き過ぎた性感に恐怖し、貪るように口付けてきた悠也の背に縋りついた。
「ふぁ、ぁっんぅ、うっ、ンゆ、やっ…」
「ぁ…っ、悪ィ…はぁ、っ…」
「ひ、ぅ、う、っゃ、やー···うぇ、えっ…」
「また、っ…泣かせて、ごめん…っ」
ぐじゃぐじゃのぐずぐずだ。涙もよだれも鼻水も、どろどろに溶けた俺の顔を愛しそうに見つめながら困ったように笑う。恥ずかしいのに、頭を撫でる手が気持ちよくてもっともっとと強請るように手に擦り寄る。
髪をかきあげるように撫でられながら、何度も唇を重ね、胎を震わし、声にならない悲鳴をあげた。
「っ、くそ…!」
「い、ぁっ…、ぁ…」
ぐぱりと奥が開いた。太く腫れ上がった先端がそのまま飲み込まれた瞬間、何度目かわからない長い射精とともに、耐えきれなかった悠也の犬歯が肩に強く突き刺さった。
「ぐ、…っ…」
「っ、…い、ぅ…っ…」
項ではないことはわかっているのに、その鋭い痛みに背筋を震わせて、全部漏らした。
血と、汗と、精液と、潮と尿。いい歳した大人が、快感を全て受け入れた結果、尊厳とプライドと意識を手放して、そのまま体は開放感とともにシャットダウンしたのだった。
「大変、大変申し訳ございませんでした。」
「っ、うるさい…」
「葵?葵さん?もう顔見せて、なぁ、仲直りしよ?ね?」
「ひぅ、うー····っ、」
「また!!また泣く!!!水、水飲もう!このままじゃ脱水症状で大変だから!!ね!?ね!?」
「誰のせい…でぇ、っ…おれ、っ…俺大人なのに、ひぅうっ…」
「あああああ泣かないでええええ!!!」
濡れたシーツも剥ぎ取られ、きれいにベッドメイキングをされた後、微睡みから冷めるようにゆっくりと目を開けた先に、大変ご機嫌で輝かしい笑顔の悠也が目の前で頬杖をついていた。
カラダは清拭された後のようですっきりしていた。開口一番に吸水ポリマーシーツが下に敷いてあったから大丈夫だよと言われた俺の気持ちを誰かわかってほしい。
「おもらし可愛かったよ!!俺興奮し」
「デリカシーゼロ。俺もうしない!絶対しない!!
「します!えっちはしますよ!?そして最高だったのでもういっぱ」
「帰る…やだ、おうち、かえる…うぇ、っ…」
「葵ぃ!ちゅうしよう!!お膝おいで、俺と遊ぼう!!」
「やぁあー!!!」
恥ずかしいを通り越して情けなくなって泣き喚く。もう体裁とかしらん、とばかりに枕を投げたり、包まったシーツから意地でも出ないつもりでベッドの隅でシーツ篭城する。もう情緒が壊れた。大人のお兄さんの忽那葵は今はいません!
ブスくれていじけて駄々をこねまくりの俺に、シーツごと抱きしめながらでれでれと顔を溶かす悠也が反省を示すまでは絶対に無視を決め込むことにした。
腰のあたりに当る信じられない熱源が身の危険を顕著に知らせる。高校生怖い。インドア派な俺だけど、今後のことを考えてジムにでも行こうかと考える位には体力の差に戦いた。
「葵?まじでごめんて。ほんと、顔だけでも見せて。」
先程の声のトーンとは違う悠也が気になって、恐る恐る隙間から目だけだした。自然と首を動かしたので、肩口の嚙まれた跡がじくりと熱を持つ。ぴくんと俺が反応したのに気づいたのか、シーツごと俺を膝の上に抱きかかえると、シーツ越しに頭に口付けをされた。
「首、ごめんな。てか、肩か。」
「めちゃ痛い…」
「うん、あのまま後ろからしてたら確実に項噛んでたわ…」
「…まだだめだぞ。」
シーツから顔を出してもぞもぞ動いて抱きかかえやすい体制になる。胡座をかいた悠也の足の隙間に尻を落ち着かせれば、胸板を背もたれ代わりにして寄りかかる。
「でも、少しだけうれし…」
「余裕ないの、かっこわるくね?」
「今日かっこ悪かったのは間違いなく俺だからな…」
「可愛かったよ?」
シーツを肩から落とすと、髪を耳にかけるようにして自分がつけた歯型にそっと触れられる。じくじくと熱を持って痛いけど、指輪と同じくらい嬉しかった。傷口に触れる悠也の手に、自分の手を重ねた。
「帰ったら消毒しような。」
「うん、……あ。」
瞼に口付けた悠也が、急に冷静になった俺にキョトンとする。その顔はあどけなくて可愛いけど、重要なことに気がついてしまい、青褪めたまま悠也を見上げた。
「俺の下着…ない…」
「あー、と…ノーパンだな。」
いろんな体液でお亡くなりになったレースの下着はもう履けない。
結局コンビニで替えのボクサーを買うまでノーパンで運転するしかないようだ。
思春期のたくましい想像力の中、新たな性癖に付き合う羽目になる未来があることを、このときはまだ知らなかった。
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