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3度目の病院

「末永くん。益子が言う病院に外来受付しておいて。そこに学連れてくから!」 「あー、葵んとこの!おっけ、まかしとけ。」 「なんだかよく分からんけどよろしく頼む!」 末永くんを抑えながら鼻にティッシュを詰めた益子が任せろと合図を送る。再びドアを閉じれば、保健の先生は何があったかわかったようで、戸棚から大きなタオルとジャージを出していた。 「困ったわ、オメガ用のエピペン切らしてる…救急車だと大事になるわね、車でも出そうかしら…」 「僕持ってるからそれ使うよ。とりあえずここで発散させるわけにも行かないしなぁ…病院ついてくんで回してもらっていいですか?」 「もちろんよ、末永くんたちには先生から説明する?」 「や、あとから学の荷物持って来てもらいましょ。学、ちょっと抑制剤射すよ?先生は後ろ向いて。」 そのままカーディガンを巻いて、ポーチから出したエピペンをカシュリと音が鳴るまで押し込んだ。 ビクンと足をはねさせ痛みに眉間にシワを寄せた。ごめんよ、15分は辛いままかもしれん。 「せんせ、あとやっとくんで車回してきてもらえますか。」 「そ、そうね!!と、とりあえず回してくるから手短にね!」 顔を赤らめた先生が慌てて車の鍵片手にわたわたと保健室を飛び出していくのを見送れば、小さく震える学の頭を優しくなでた。 「学、だしといた方が体楽になるけど、どうする?」 「っ、ん…だす、て…っ」 「んー、と…これ…」 とろけた顔で見上げる学にわかるように、手で筒を作って上下に動かしてジェスチャーする。なんだこれ善意とはいえめちゃくちゃはずかしいな!?意味を正しく理解した学が泣きそうな顔で震える手で僕の手を握ってきた。 「し、て…」 「ん?…、うん!?」 「てつだ、ってぇ…っ…」 えぐえぐと泣きながら言われたまさかの申し出にいまだかつて無いほど動揺した。こ、これはどうなんだ、浮気にならないのか!?というか僕でいいのか、お陰様で自慰をしなくなったからへたっぴでも許してくれるのだろうか。 学の手を握る握力からして、力が入らないのは理解した。これは後で俊くんにスライディング土下座をかます方向でいくしかない。 そんなこと考え、やっと腹をくくろうとした時、握られていた手が導かれるように学の辛そうな性器へと導かれた。 「いっしょ、してぇ…っ…」 「あっ、ハイ。」 スンとしてしまった。これ僕がオメガで良かったけど、普通の男なら据え膳というやつに違いないのでは!?なんだっけ、こういうときは素数?素数を数えればいいのか!素数がわかんないときは3.14ナントカカントカ 「あっ…」 「3.14159265…」 「ふぅ、ぁっ…」 「35897932あっむりむり」 無理だろうが!!むしろここまで言えただけえらくない!?学の性器を緩々と握りながら手を滑らせるようにして動かしているけど、ぬちぬちという音が耳に毒だ。そして何故か僕の右手は学のお口に親指がinしているのでどうする、オーケーとりあえず天井のシミでも数えていよう。 「うぅ、イ、ぅ…っ」 「イきましょう!!いい子だから一発出しましょ、ね!」 「いやぁ、あっ!」 「なんっっっで!!!」 ふるふると震える学を極力見ないようにしながら性器全体に先走りを塗り込める、学の唇に吸われている指先からじくじくと背筋に痺れが走るのは許してほしい、僕も思春期なのである。これは俊くんにバレたらどうなるの!?オメガ同士だから許されるかな!?ひえええせんせえええはやくきてええええ 「ひ、ぁっ…!」 「うぁ、っ…」 ビクンと大きく腰をはねさせた学が、びゅくびゅくと堰ためていた精液を数回に分けて漏らすように吐き出す。この長い射精が終わったら少しは熱も収まるだろう。僕は慌ててタオルで汚れを拭き取ると、じくりと下肢に無視を決込みながらベッドのシーツごと学をぐるぐる巻きにした。ようやく先生の準備が出来たようで、外付けされた車からクラクションで合図が送られた。 学はというと、長い射精で疲れたのか先程より薄くなったフェロモンに安心しつつ、耳を近づけたら微かな寝息が聞こえてきた。 「ま、まいぺーす…」 なんだかどっと疲れた。ひとまずエピペンも効いてきたようで何より。ついでに僕ももらってから帰ろうかなぁ…。抱き上げた学を身体にもたれさせながら保健室から出ると、バタバタ走ってきた益子と末永くんがトランクの中に僕の荷物やら学の荷物を次々と詰め込んだ。見事な連携プレーである。 「なんつーか、大丈夫かきいち。」 「ん?うん、まあなんとか…」 益子が目を泳がせながら言う。なんだか全く分けがわからない反応だが、末永くんを見るとなんとも言えない顔で下を見ている。下を? 「ひょわっ…」 学を手伝ったとはいえ僕も思春期だということを忘れていた!!!!あんだけシミやら素数を数えまくったというのに、見事に雰囲気にやられてご起立しておられました、本当にお疲れさまでした。 学をだっこしてるのでモロバレでござる。オメガだからといって慎ましいサイズで勃つものは勃つんだよ!!!! 結局事情は察してもらったが、これは学が回復したら道連れ弁解コースである。僕は先生に急かされたので逃げるように車に乗り込んだ。 あとから益子から、ドンマイ☆とメッセが飛んできて割とガチめに殺意が芽生えたのだが、これは後程忽那さんに言いつけてやることに決めた。 なんだかものすごい早退の仕方をしてしまった。俊くんに対する弁解を頭の中で考えつつ、学を抱きながら揺れる車内で頭を抱えていた。

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