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お前ら本当に元気だな

「なにが出るかなッなにがでるかなっ」 「おい誰だこんな回しにくいでかいもん買ってきたやつ。」 「あ、わりぃ俺だ。」 「俊くんのプレゼントは僕に回してぇ!」 「忖度しか感じねぇ…」 楽しみにしていた28日がついにきた!まあ誘ってくれた益子が拝み倒して会場は俊くんのうちになったのだが、何だかんだ俊くんも満更ではなかったようで心良く貸してくれた。さすが僕の番である。 会場作りこそしてないが、ケータリングと雰囲気作りにツリーだけは買っておいた。 「わ、なんだろこれ。」 「それは俺からのだ!」 忽那さんが引き当てたのは学が選んだプレゼントで、赤い光沢のある袋から取り出した箱をみた忽那さんのテンションは一気に上がった。 「しいたけ栽培キットだ!!!」 「なにそのチョイス!?!?」 「いや、俺は止めたんだけどな…」 誇らしげな学とは反対に疲れたような顔で溜息を吐く末永くん。どうやら仲良く二人で買いに出かけたらしい。忽那さんはきのこが好きなのか、めちゃくちゃ嬉しそうに箱を抱きしめてはしゃいでいて可愛い。益子は、俺が指輪上げたときより喜んでる気がすると落ち込んでいた。めんどいから放置だ。 「俊くんのプレゼントはなに?」 「安心してくれ、まともなやつだ。」 「あ、これ末永くんがえらんだやつか。ならへいきそう…」 紙で包まれたそれをペリペリ剥がして出てきたのは、結構な分厚さを誇る自己啓発本だった。ぽかんとする僕をよそに、鍋置きにちょうど良さそうだなとつぶやく俊くんの反応からして読まなさそうだ。すまんね末永くん。 「俺は止めた。本だけはやめろと。」 「む、なぜだ。その作者はホームレスから成り上がった成功者だぞ。なかなかに面白い内容だからぜひ目を通してみてくれ。」 「…わかった。とりあえず本棚には入れておく。」 微妙な顔をした俊くんの横で、学が自分の持っていた袋を漁る。その中身は僕が選んだもので、まさか学が当てるとは思わず少しだけ申し訳なくおもった。 「なんだこれ!?コスプレセットじゃねーか!」 「メイドさんだな。これは…」 「僕でーす」 「ええ!それこそ葵にあてぅぐぉっ」 益子の奇声が聞こえた気がしたけど、学よりも末永くんが興味津々である。ふと疑問に思ったことを二人に聞いてみた。 「てかもうエッチしたの?」 「ぶ、」 学の顔色が勢い良く羞恥の色に染まる。おお、ついにしたのか。キラキラした目で末永くんのほうを見ると、キリッとした顔で答えてくれた。 「まだだ。クリスマス会終わったらする約束をし、っ」 ドゴォッと見事な音を立てて末永くんが机に沈む。そうか、このあとするのか。初エッチ。生暖かい目で益子と俊くんが学を見つめる。忽那さんは机に沈んだ末永くんのいい音を聞いていたため痛ましそうに見つめていた。 ということは僕のプレゼントは渡りに船じゃね? 「学、それ洗濯したら何回でも使えるから。」 「別に聞いてねぇ!!!」 「俺んちのベッドは使わせねえぞ。」 「ホテルとってっからきにすんな!!」 「へえ???」 揚げ足を取るかのように益子がにやにやと煽る。そうかぁ、ついにかあ。ホテルとったということはラブホではないのだろう。末永くんのことだ、初めてはきちんとした場所でとか思ったんだろうなあ。頭大丈夫かな?白目向いてるけど。 きゃんきゃんやかましい学の口にポテトを突っ込んで益子が黙らせると、ウキウキしながらプレゼントを開けた。俊くんが選んだでかいやつだ。 大きいからいいとは限らない気がするけど、俊くんの選んだものというだけでなんだか羨ましい。 「なんっっっだこれ!!!!でけぇ!!!」 「わぁぁあ!!かわいいい!!」 益子が取り出したのは巨大な大根型の抱き枕だった。なにそのチョイス!!僕も欲しいんだけど!! やはり忍さんの血を引いているせいか、わけのわからないデザインのものを選ぶのは本能に刷り込まれてるらしい。 忽那さんは大はしゃぎでその抱き枕に抱きついている。そうだよね、益子のもんは必然的に忽那さんのものになるもんね。白い大根に抱きつく美人、眼福である。 「はぁあ…なにこれ、悠也よりいい…」 「は!?離れなさい!!浮気は許さんぞ!?!?」 肌触りが気に入ったのか、学と一緒に大根をなでてみると、たしかに癖になる。何だこれやっぱり僕もおねだりして買ってもらおう。 「ってことは、きいちくんのは俺のだね。」 「わーい!忽那さんのギフトなんだろ、ちょっとワクワクする!」 ガサガサと包み紙を開けてでて来たのはジグソーパズルで、それを完成させると神話の様な美しい絵が出来上がる代物だった。2000ピースにも及ぶそれは超大作になりそうだ。むふ、僕こういうのダイスキでーす!大当たりである。 「やばい!!すき!!」 「あはは!よかったよかった。俺もその画家さんの作品好きでさ、写真集もってるんだよね。」 「ほええ…すげーいいものもらっちゃったや…」 末永くんもパズルが好きなのか、若干羨ましそうである。製造メーカーの写メを撮らしてくれと言われたので、調べて買うのかもしれない。学が辟易した顔でそれを見ていたので、もしかしたら一緒に作らされる覚悟でもしたのかも。学は不器用なので細かい作業とかはできないと言っていた、訓練だと思って頑張れ学! 「てことは、俺のは末永かぁ。」 益子がにやにやしながら末永くんの持つ化粧品が入ってそうな箱を見やる。忽那さんも買い物に付き合ったのか、なんとも言えない顔でその箱を見つめていた。 「ああ、お前…セオリーどおりいったな?」 「ま、男の子だもんで?」 俊くんの様子からしてみると、中身はなにかわかっているような口振りである。 末永くんがその箱をくるりと回して剥がす場所を見つけると、丁寧にペリペリと包装を剥いていった。 するとでてきたのは、所謂大人のオモチャであった。 「益子サイテー!!」 「何いってんだぁ!実に実用的だろうが!!今日使え、な!?」 「なるほど。」 「なるほどじゃねぇんだよ!!ぽいってしなさいそんなもの!!」 興味深そうにローターの商品説明を読みながら、付属で入っていたコンドームやらローションをとりだす生徒会長はなかなかにシュールだ。学が奪おうとするのを見事にいなしながら鞄にしまっていたので、確実につかうだろう。末永くんがご機嫌で学の口にポテトを突っ込んでいた。骨だけは拾うよ… なんだかんだあったが、クリスマスの醍醐味であるプレゼント交換も無事終了した。今日一番悲鳴を上げていた学は、この後ごきげんな末永くんによって美味しく頂かれることになるのは興味深いけど、多分ここのメンバー全員性夜を過ごすことになりそうだ。 「じゃあ学と末永の為に経験者から一言どうぞ?」 益子がターキーをマイク変わりに僕に向けてくる。なんだ、事前準備なんて今更だろうし何を言えばいいのか。とりあえず俊くんを見ると、俺は気にしないといった感じで肩をすくめられた。ならいいかぁ。 「もう、まな板の上の鯉になれ。なにもするな。以上」 「…マグロってことか?」 「いや、もう僕の場合はそんな余裕なかったからさ…全部俊くんがしてくれた。」 「おお、おう…なんか…あれだな。」 「まあ、完勃ち前に入れるほうが負担は少ないぞ。」 「嘘でしょアレで完勃ちじゃなかっただと…?」 益子から受け取ったターキーをもりもり食べながら俊くんによる衝撃の事実を受けとめる。初めて抱かれたときでさえ尻がぶっ壊れるかと思ったのに、アレで…? 「なるほど。」 「ちなみに忽那さんは?」 「えぇ、っと…俺にもきくのそれ…」 末永くんがふむふむとスマホにメモをとる様子に学がドン引きしている。僕だけじゃ恥ずかしいので忽那さんにも巻き込まれて貰うと、にやにやした益子がその細い肩を抱いた。 「俺が、初体験だったんだと。」 「うっっっっそなにそれえろい。」 「っ、~!!きいちくん!!」 「あっスンマセーン。」 おっとつい本音が。こんなお綺麗な人の初めてを益子に食べられるとかいやらしいでしょ。つい妄想がはかどってしまった…、顔を赤らめる忽那さんは、照れ隠しかピザをぱくついてるが、そんな様子も可愛いとデレデレ微笑む益子は、完全にエロオヤジである。 「いやぁ、年の差気にして泣きながら感じてる葵が本当にかわいグェッ…」 「いやここのピザおいしいね、このチーズクアトロ一番好きだな俺。」 「腹筋鍛えられるねぇ益子。」 「お゛…お゛かげさまでな…っ」 さすがに同情は出来ない。やり方って聞いてんだからどんなふうに鳴いてたかとかは言われたくなかっただろう。僕も俊くんが言ったら殴ってしまうかもしれん。ちなみに涼しい顔して俊くんはジュースを飲んでいるけど、末永くんは見事なボディーブローに学のそれは可愛いものだと再認識したようである。 そうなんだよ、忽那さんこんなに儚い見た目でも急所を狙った攻撃はマジですごいのだ。益子が鍛えたようなものだけど。 そんなこんなで各各が猥談混じりで番に粛清を食らう中、宴もたけなわなそろそろいい時間なわけである。末永くんがアラームを設定してたおかげで時刻に気づいたのだけど、ホテルに行く時間逆算して目覚まし掛けてる末永くんが面白すぎてちょっと笑った。学が恥ずかしそうにぶっ叩いていたけど、本人はなんで叩かれたかはわからなかったようだ。

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