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わかるよって言われてる気がした

「うん、順調だね。すくすく育ってるよ。オメガは出産早いから、来週くらいには筋肉が発達して胎動も始まるかもねぇ。」 「おお…、ちっちぇー‥」 「俊くん呼ぶ?そろそろお腹見せてもいいでしょ、入れる方じゃなくなったし。」 そうなのだ、ついに僕は経腹法にシフトチェンジしたのだ。熱っぽいままお腹に冷たいジェルを 塗られたときは変な声出たが、新庄先生が鼻歌交じりにお腹にエコーを当てたときに、もう突っ込まれなくていいのだという安心感で力が抜けた。 「んー‥、」 ちらりと自分のお腹を見る。ポコンとした下腹部は幼児体型のような感じで、新庄先生いわく、オメガの出産は早いことから、ここから一気にお腹も大きくなっていくらしい。貧相な体で、お腹だけ膨らんでいる今の体型は、妊娠しているとはいえあまり見られたくない気がした。 「俊くん見たいと思うなぁ、それにプローブが経腹法に変わったら立ち会う約束だったんだよね?」 「うん…お腹みられるのかぁ、」 「なにてれてんの、もっとすごいとこ見せてるでしょーが。」 「ぅぐっ」 それを言われるとそうなのだ。なんなら尻の穴までばっちり履修済みである。かといってバランスの悪い体を見られる勇気もあんましないなぁ、とおもっていたら、容赦なく新庄先生が俊くんを呼びに行った。まじで勢いがすごい。 「…………よ、」 「ぶふっ、」 ものっすごい遠慮しながら少しだけドアを開いて顔の半分だけ覗かせてきた!! というか一緒にきたのに、よっ、てなんだ。めちゃくちゃおもしろすぎるでしょ。そんな俊くんの目線のやり場を悩むようななんとも言えない顔と、若干の興奮で頬を染めてるかんじをみてたら、見られたくないとかいえないじゃないか。 「俊くんこっち、」 「え、いいの。」 「なんで遠慮してんの、俊くんべびーだぞ。」 「お、おう。」 いつも堂々として余裕の顔を浮かべている俊くんが、僕の前だとこんなかんじなのだと改めて理解すると面白い。恐る恐るそばの椅子に座ると、先生に促されて仰臥する。ポコンと膨らんだお腹にエコーを当てると、そこには手足の細いベビーが立体映像で見て取れた。 体育座りみたいな形でへその緒と繋がっている。俊くんが目を丸くしながらジィっと見つめる様子はなんだか可愛く、ふはっと小さく吹き出した。   「俊くんの遺伝子がしっかり受け継がれてるのか、4ヶ月なのにしっかりした大きさなんだよね。この感じなら来週くらいには寝返りしてもすぐわかるかもね。と、いうか俊くん。」 「あ、はい。」 「きいちくんの妊娠前の体重っていくつ?」 「55キロくらいっすかね。」 「うそでしょなんでしってんの!!」 驚愕の事実である。俊くんいわく、抱けばわかるとのこと。何が怖いかって誤差500グラム位なのだ、こっわ! 「うんうん、なら今の体重増加が4ヶ月で2キロ前後。一週間に500グラムくらい増えてほしいからもうちょっと増やそうか。」  「え、何キロまで…」 「妊娠前の体重プラス6キロはほしいかなぁ。」 「がんばります。」 「えっ、俊くんががんばるんだ…?」 にこにこといい笑顔で言われたが、今まで食べてきたものもしっかり栄養としてベビーに行き渡っているから大丈夫と言われた。むしろ栄養とられてきいちくんの体重があんま増えてないのは褒められないなぁと言われる始末、まじかよ。 「カロリー高いの食えとは言わないけど、毎日体重計乗ってる?朝起きたら検温と体重測定してね。」 「ふぁい…」 「また脳貧血で倒れたくないでしょ?」 「ああ~‥」 眉間にシワを寄せながら渋い顔をしている俊くんは、あのときのことを思い出しているらしい。その説はすみませんでしたなぁ… 検診の終わった僕のお腹をタオルで拭いた後、俊くんが自分の仕事と言わんばかりに僕のお腹を服にしまってくれる。そのまま先生に風邪は薬出せないから温かい格好して栄養をとって寝てねと言われてしまった。 幸い熱は少し下がってたので、そのままお家帰ったらまた巣ごもりコースになるだろう。 「バナナ買って届けるわ。」 「バナナ大好きみたいになってんじゃん僕…」 ふんす、と意気込んでいる俊くんのブルゾンを肩にかけられながらおうちにかえる。おかんが車に乗ってけばというのに、買い物があるんでと丁寧に断った俊くんは、そのまま僕の栄養をあさりに意気込みたかだかに夕方の街に消えていった。 「なんかさぁ、やっぱアルファってちょっと馬鹿になっちゃうなかな。」 「おうよ。番まっしぐらだからなあいつらは。」 「そっかぁ。」 けほけほと噎せながら、お腹を撫でながら笑う。くん、と俊くんの残り香がして肩に触れると、返し忘れたままのブルゾンがそのままになっていた。 「あーあ、また忘れちゃった。」 「いいだろ、今度来たとき返せば。」 「これ抱きまくらにして寝ようかな。」 「親の前でのろけやがる。」 おかんがにやにやとからかう。ぽろりと出てしまった一言に思わず頬を染めると、そのままブルゾンをお腹にかけて背もたれに背を預けた。 早く逢いたいけどゆっくり育ってほしい。君のパパは若干バカになりつつあるけど、きっと溺愛してくれるだろう、そんな自信があるよ。 よしよしとそんなことを思いながら撫でていると、すこしだけもぞりとお腹の中が動いた気がした。 気のせいかもしれないけど、僕はそれがなんだか同意のように思えてしまって、面白くなってケラケラ笑ってしまった。 おかんには壊れたのかきいちと言われたが、このことは僕とこの子の二人だけの秘密にしよう。 「んひ、なーんもない。」 「あん?」

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