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大切だから、心配なんだ

6ヶ月の検診が終わり、次からは2週間ごとの検査でいいよと言われた。なにやら胎児に異常がないかをしらべる検査も行うらしく、名前もスクリーニング検査とかいう緊張を煽る名前で、なんだか帰る頃には憂鬱になってしまった。 新庄先生が言うには、殆ど大丈夫だからリラックスして受けるようにとのことだった。心臓のお部屋がちゃんと育ってるか、骨格の異常がないかだとか、とにかく細かい検査をするらしい。 めちゃくちゃ集中するから、番同伴でもいいけど最中は静かにしててね、と念押しされた。 「なんか、受験よりも憂鬱なんですけど。」 「おい、大丈夫かきいち。なんか具合悪い顔してるぞ。」 「具合悪いってか、うん…なんかちょっと、不安がねぇ…」 「今日やめとくか?俺が断っておこうか。」 「いや、いく。大丈夫大丈夫、話聞くくらいならなんもないし。」 俊くんに心配されながら、そのまま葵さんの家に向かう。自分が緊張しいなのはわかっているので、次の検診にびびっていたとしても、今は考えたくなかったのだ。 それに葵さんだって心配だった。葵さんが益子のことを一番に考えている人だというのを知っていたし、不安を口にしないで溜め込む癖があるというのも益子から聞いている。 なら僕が出来るのは、その不安を取り除いて上げるようにお話を聞いてあげることだ。 帰る頃には連絡する約束をしてマンションに入る。 お腹をさすりながら、扉の前につくとインターホンを鳴らした。 しばらくして、カチャリと扉の開く音がしてひょっこりと葵さんが顔を出した。 「きいちくん、こんにちは…」 細い体にショールを纏って、寝ていたのだろうか寝癖の付いた髪で出迎えてくれた。 少しだけ目元の隈が目立つ。なんだかいつになく細く感じてしまって、思わずぎゅうと抱きついてしまった。 「っわ、…ふふ、なんかごめんね、急に。」 「んーん、葵さんこそ大丈夫?」 「うん、でも、なんかすこしだけ緊張してて…」 顔を赤らめながらつぶやく葵さんに、少しだけほっとする。もっと深刻そうなのかと思っていたからだ。 「葵さん、目の隈やばいよ?一緒にねよ!」 「え?あ、やっぱし?…ならそうしようかな。」 悠也のこととか、考えてると寝られなくて。 葵さんは苦笑いしながら言うと、僕を部屋の中に案内してくれた。寝室に入ると、二人してベッドに腰掛けた。 「お腹さわってもいい?」 「ん、もちろん。もう最近くるしくってさ。」 「わ…あったかい…、うわっ、」 葵さんの優しい手に反応したのか、ポコンと挨拶をするように腹を蹴る。蒼さんは頬を赤く染めながら、フフッと嬉しそうに笑った。なんだかその顔がとても綺麗で、思わず葵さんの頭を撫でてしまった。 「わっ…、きいちくん?」 「んー、なんかしたくなっちゃって」 「うん?構わないけど、なんだか照れるね…」 葵さんは緩く結んでいたヘアゴムを外すと、横になって隣をポンポンと叩いた。すこし楽しげに、俺のココ、空いてますよなんて、言うもんだから面白い。 僕も葵さんにならって髪を解いて葵さんの隣に寝転ぶと、その細い指が顔に掛かった髪を流してくれた。 「葵さん、緊張してるって言ったのって、妊娠してるかどうかってこと?」 その手をそっと握ると、僕の言葉が当たっていたのか、きゅうと柔らかく握り返して小さく頷く。 葵さんの手に指を絡めて握り返しながら、多分、悩みすぎて寝られてないんだなと当たりをつけた。 「…調べたんだ。いつものヒートとは違ったから。」 「うん、」 「そしたら、そんなふうに書いてあって…まだ決まったわけじゃないけど、」 「こわいの?」 僕が聞くと、葵さんはコクリと喉を鳴らして少しだけ伏し目がちになった。ぽつりと漏らした言葉は、調べていくことで知った自分の体質だった。もし妊娠していたとして、成熟するのが遅かった分の影響が出ないか、そしてなにより益子が望んでたとしても、負担にならないかという心配だった。 「それ、ちゃんと益子には言えたのかな。」 「まだ、言えてない。」 「言うのも怖いかぁ…」 葵さんと向かい合いながら、大人だからこそ遠慮する部分もあるのだと思った。 益子は普段あんな感じだから伝わりづらいが、意外と大人な一面もある。葵さんと番ってからは特にそうだ。 「話してみなって、多分葵さんが思ってる以上にあいつは大人だよ。多分、いますごい歯噛みしてると思うし。」 「え?」 「だって、番じゃないやつが葵さんの本心を先に聞けるんだよ?そりゃずるいって思うっしょ。」 ぱちぱちと瞬きをして、思い至らなかったという顔をした葵さんは、すこしだけバツが悪そうにした。話す勇気がないなら、勇気がもてるようになればいい。 益子のいったこと、そして調べたことが本当かどうか確かめてから二人で話し合えばいいと言うことを伝えて、今度僕が検診に行くときに合わせて葵さんも検査をしに行く約束をした。 妊娠してるかわからないといっているが、葵さんの香りは少しだけ変わったように思う。 「益子が見たら怒りそうな気がしてきた。」 「そんな、俺も俊くんに怒られるよ。」 二人で手を繋ぎながらくすくす笑う。くありと欠伸をした葵さんにつられて、僕も眠たくなってきた。 すこしだけ、と決めて目覚ましをセットすると、二人で手を繋いだまま目を閉じた。 おい益子、お前の番めっちゃ健気なんだから嫉妬ばっかしてないでちゃんと言葉にしてやんなきゃだめだぞ。 僕は明日益子にあったら文句の一つでも言ってやろう。葵さんが嫌になったらいつでもうちに逃げ込める準備はできてるんだからなと、脅しも含めてドヤ顔してやるんだ。 葵さんの手を握りながら、二人でくっついて眠る。 葵さんの甘い香りと、ポカポカ温かい体のおかげで二人してぐっすりと眠ってしまった。 なかなか帰ってこない僕にしびれを切らした俊くんが益子を連れて突撃してくるまであと2時間。 益子がきいちには惚れないでくれとアホなこと抜かして葵さんにぶっ叩かれるのも、あと2時間後である。

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