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後日譚 恋敵は息子 **
高杉のおかげで先方と話はつけれたが時差を忘れていた。帰る時間が押してしまい、結局深夜だ。早く帰って抱こうと決めていたのに今日はもう無理そうだなと思う。
高杉も新婚だというのに、3日も連れ回して悪かったというと気にしないでくださいと笑って許してくれた。
「ただいま…」
「ふあ、おかえりぃ…」
「きいち、寝てなくてよかったのか?」
「ん、そろそろかえってくるかなって…」
起こさないように玄関の明かりをつけなかったのに、きいちはパジャマにショールをかけたまま眠そうに出迎えてくれた。普段結ばれている髪が垂らされていて色っぽい。子どもたちはもう寝ているようで、静かな夜に今だけは二人だけだ。
「はああ…」
「おやぁ、お疲れですね?」
「あいつらは?」
「凪と千颯と3人で寝てたんだよ、だから今俊くんのお部屋で二人は爆睡。」
「あ?高校生にもなって何してんだアイツら…」
アルファとしての性がそうさせるのか、我が子ながらきいちにたいする愛情表現が重い。流石にわきまえてはいるが、待ちあわせ場所にきいちが柄の悪い男を侍らせていたときはナンパかと思ったら息子だった。あのときの衝撃はわすれられない。腰を抱くな、肩に顎を乗せるなと言ったら、親父まじで狭量とか言いやがった。
「ふひ、俊くん眉間にシワ寄ってる。かぁいいじゃん、俊くんいなくて寂しかったんだよきっと。」
「ぜっっったいにちげえ。」
「そうかなぁ。あ、ご飯どうする?煮込みハンバーグだけど重いかな?」
「きいちがつくったもんなら何でも食うよ。いつもありがとうな。」
「んーん、俊くんもいつもありがと。」
嫁がきょうもこんなに可愛い。
ぐっと噛み締めていると、きいちに手を引かれて浴室に向かう。どうやら風呂も沸かしといてくれたらしい。先にさっぱりしておいでと言われてスーツのジャケットを脱がされる。そのままきいちの目の前でぽいぽい脱いでいくと、凪たちに似てるぅとか聞き捨てならないことを言ってスーツを回収していった。あいつらきいちの前で平気で脱ぐのか。躾け直しが必要な気がしてくる。
体を洗って、ゆっくりこうして湯船に浸かるのも久しぶりだ。忙しくてシャワーばかりだったので、こうして足を伸ばせるのはいい。
浴室から見える夜景が気に入って購入した。きいちと入るときは電気を暗くして、窓ガラス越しに映るきいちの裸体をたのしみながら行為に耽ることもある。二人を会社の合宿と称して山に送り出して楽しんだ濃厚な三日間。あれはいい、今度は1週間位中島に扱いてもらおうか。
そんな事を考えていると、ろくに抜いてなかったせいか兆してしまった。無駄撃ちするつもりはないので冷たいシャワーで鎮めると、さっさと風呂から上がる。時間は無限ではないのだ。きいちを抱くにも彼奴等が起きてこないとは言えない。
出されていた下着とバスローブに着替える。ここ最近は健康法と称して下着で寝ることにしているからだ。実際はきいちをその気にさせる為にしているのだが、きいちはなるほどなぁといって気がついてない。相変わらずすこしだけずれているところも愛おしい。
「俊くんおいで、髪乾かしてあげる。」
「おう、頼む。」
家に帰るとずっとこうだ。きいちが甘やかしてくれるままに髪を乾かしてもらう。今日は俊くんで3回目とか言うので、アイツらもしてもらったらしい。
「高校生なんだから自分で乾かせって言え。」
「ええ?頼りにされてるみたいで嬉しいのにぃ。」
「まさか風呂まで一緒に入ってるとかいわんよな?」
「今日は兄弟で入らせたよ?」
「今日は!?」
あ、やべといった顔で目を逸らす。なるほどアイツらは未だに親離れできていないらしい。
俺と風呂に入るというと逃げ出すクセに許さん。
「ずるい。俺も甘えたい。」
「あの子達みたいなこというじゃん!」
あははと楽しげに笑う。きいちが幸せそうならそれでいいが、俺だって頑張った。あのインド人のムカつく顔を殴り飛ばしてやりたかったのをこらえるのに必死だったのだ。代わりに高杉は胃を痛めたが。
「ワイン開ける?」
「いやいい、いただきます。」
きいちの用意してくれた煮込みハンバーグは俺の好物のひとつだ。どうせ胃袋に収めるだけなのに、人参もあの二人が喜ぶからと飾り切りにして煮込む。手間のかかる下処理も丁寧に行い、俺の体を思って米も玄米を混ぜて炊く。
電子レンジでいいといったのに、わざわざコンロで温め直してもくれるのだ。パジャマにエプロンしてるのはキッチンに立つときの癖だろう。温めるだけなのにわざわざエプロンをつけるあたりちょっとアホっぽくて可愛い。細い腰に食い込む紐も、座ると柔らかい尻肉が強調され、S字にしなるしなやかな背筋も括れも全部エロい。
食欲と性欲は似ているというが、きいちをみているとまじでそう思う。しゃこしゃこと何故か歯を磨きはじめるきいちに首を傾げると、お腹空いてきちゃったから我慢するために…と顔を赤らめながら言う。おしりの肉付きがきになるからダイエットしているらしい。それはきいちが隠れて飲んでるプロテインのせいだと思うが、言わないでおこう。
「ごちそうさま。美味かった。」
「お粗末さまでした。俊くん寝酒もしないの?」
「しない。やけにのませたがるな?」
「んー、一口舐めさせてもらいたいなって。たまには。」
「飲む。」
「ぶはっ、やさしい!」
そんな可愛い嫁のおねだりに応えないわけ無いだろう。きいちはどうやら俺の為にウイスキーを買っていたらしい。なんでもパッケージが可愛かったからと言う理由でだが、グラスに少量注いだそれは香りも良く、とろりと深みのある甘さが特徴的だった。
度数はそれなりにあるので、多分きいちのことだからすぐ酔うだろう。
「んー、ふふ、いい匂い…」
「ロックにするか。」
「飲み方わかんないし、俊くんにおまかせで」
「ならいい飲み方がある。」
おいでと呼ぶと、きいちが嬉しそうに近づいてきたので、腰を引き寄せて膝に跨がらせる。そっと肩に手を置いたきいちの尻をやわやわと揉みながらウイスキーを一口飲むと、その薄い唇を塞いだ。
「ん、っ…ふぁ…」
「いい香りだな、これ」
「わかんない…にが…」
「俺は好き。チョコレートと食うといいかもな。」
「ふぁ、っ…」
ちゅ、と熱い舌を唇で挟んで甘く吸い付く。薄いパジャマ越しにきいちの蕾に触れれば、布越しでもわかるくらいに、きゅんとひくつく。仕事に忙殺されて抱けていなかった。きいちも期待しているのか、コクリと喉を鳴らしてぬれた瞳で見詰め返してくる。
「こ、子どもたち…起きちゃ、あっ」
「あいつらは一度寝たら起きない、大丈夫だから、」
「で、も…っ、」
「今は親じゃなくて、俺のオメガとして抱かれろ。」
「ぁ、っ…」
あぐ、と首を甘く喰む。ふわりとフェロモンを出すとトロけた目をしてきいちも応える。内腿に猛った性器を擦り付ける。ボクサーの布越しのそれに興奮したのか、とろりとしたぬめりがパジャマから滲む。
「あ、あんま激しいの…やだよ…」
「悪いけど、約束はできんな。」
「ひ、ぁう…っ!」
ソファーに組み敷き、パジャマを捲り乳首に吸い付く。ふくりとふくらんだままのそこを数度甘く吸いながら歯をかすめるようにして愛撫すると、はふ、と甘やかな吐息を漏らした。
「ん、ん、ん、っ」
「はぁ、っ…興奮するな、きいち…」
中途半端に脱がしたパジャマのボトム。きいちのボクサー越しの蕾に腰を打ち付けるようにして性器を押し付けると、插入の快感を思い出すかのようにしてフルリと身を震わせながら足をかすかに開く。
従順に従いますといったいやらしい格好に、血流が下肢に集まった。
ウエストから胸元にかけて、手で皮膚を覆うようにして滑らせる。手指が柔らかなきいちの肌に吸い付いては、弾力のあるその感触を楽しむようにしてやわやわと揉む。細いのに適度な肉づきがいやらしい。形のいいへそにキスをすると、ひくんと腹部が震えた。
「あ、あ、しゅ、んっまって…っ、ぼ、ぼく…もう…っ、」
「イきそうか?年々お前はえろくなっていくな。」
「ァ、んっ…ばか、い、イく…イ、くぅ…っ、」
耳元で甘く囁きながら耳朶を食むと、ぐしゅ、と粘着質な音がして、きいちのボクサー越しに精液が滲む。かくりかくりと余韻に腰を揺らめかせると、そのぬめりを塗りつけるかのようにして俺の腹を汚した。
「ん…溜まってた?」
「っ、俊に…抱いてほしかっ、んんっ…!」
こいつは、と頭に血が上るままに深く口付ける。じゅぷじゅぷと互いの唾液を攪拌するように舌を絡ませる。飲みきれなかった唾液がソファーに染みを作ると、きいちのまとっていたパジャマごとボクサーを引き下げた。
ソファーの下に乱雑に投げ捨てたそれを、パジャマの裾を握りしめながら勃起した性器を隠すようにして俺を煽るきいちが見つめる。期待に震える内腿を、撫でるようにして押し開いてやり、腰の下にクッションをおく。そうすると、抱かれ慣れたきいちはそっと膝裏に自分の手を添えて足を抱く。この誘い方も、煽り方も、すべて体に仕込ませた。
グロスを塗り込めたかのように艷やかな蕾に、にゅくりと指を差し入れてやれば、子供を産んだきいちの胎は、まるで纏わりつくように媚肉を蠕かせた。
「ん…っ、あ、あのね…っ、もう、欲しい…な、」
「…まさか」
「お風呂…のとき、一人で…っ、」
シちゃった。声を震わせながら呟いた。きいちのとんでもないその文句は、危うく暴発してしまいそうになるくらいには腰にキた。
「今度、見せてくれ…っ、一人でするとこ…」
「んぁ、は、はいっ…て、っ…やだぁ…ぁンッ…」
俺の怒張した性器が、ずぶずぶときいちの薄い腹に飲み込まれていく。押し込むごとに内側からにじみでる粘液が、茂みや尻のあわいを濡らす。少し揺すってやれば、にちゃ、ぐち、といった酷く欲を掻き立てる音を発し、きいちの可愛い性器はふるふると喜ぶ。
「ひぅ、っあ…や、し、しゅん…っ、ご、ごむ…ごむしてぇ…っ…」
「ん…、わり、生だ…っ…なるべく、外に出す…」
「あ、っ…うん、っ…ちんち…すご…っ…」
ミチリと膨らんだ性器に蕾の縁を伸ばされたきいちは、震える指先でそっと収まっている下腹部を撫でる。脳が解けるほどの快感だ、外で出す自信はあまりない。きいちにならってそっと腹を撫でてやれば、確かに俺の性器を飲み込んだ腹は、かすかに膨れていた。
「はぁ、ぁ…僕の…なか、きもちい…?」
「ああ、纏わりつく…すぐイったらごめんな。」
「ん…いーよぉ…ぁっ、ぼく、も…多分、もたない…」
ぴんとたった胸の突起をみても、きいちは腹を甘く締め付けるたびに感じているのがわかる。少し腰を揺らめかせると、こつんと奥に当たるのだ。産んでからは結腸も下がり、子宮の入り口を擦ってやれば悲鳴を上げて喜ぶ。今も少し擦ってやっただけで、全身にぶわりと痺れを巡らせ背筋をそらす。びくんとわかりやすく反応をする感じ易い身体に征服欲を掻き立てられながら、きいちを横向きにさせると右足を抱え込んで腰を一気に打ち付けた。
「ぃあっ!!あ、あ、あ、ッあ、ァら、めぇ、っそ、そぇ…っお、おぐっぁだっでるっ、で、でちゃ、うからぁあっ!!」
「っぐ、あぁ、わかる…ここ、っ…好きなくせしてよくいう…っ」
「だ、ぇ…っ、やぇへ…っ!か、かんじすぎちゃ…あ、あ、っいや、ぁ、あっ!」
「あ…、っすげえな、ここ…っ、はは…きもち、いいな…」
ぱんぱんと乾いた音を立てながら、何度も腰を打ち付ける。時折じゅぽっと吸い付いてくる奥に性器をぐりぐりと押し付けると、感じすぎて泣き出したきいちが、自分の髪をその細い手でぐしゃりと乱して視界を遮ろうとする。
「ぁ、あっんぅ、ふ、ぇっや、やだよぅ…っ、も、きもち、の…こ、こぁ、いっ…しゅん、ぁ、俊くんっ!」
「ああ、可愛いなきいち。おいで、抱きしめてやる。」
「はぁ、ぁっい、いっ、イってぅっ、ぼ、ぼくっ、いまぁ、あっイっ、でぅ゛…!!」
「ふ…っ、メスイキ?出てねぇな…っ、えろい…」
「ふ、ぁー‥、ぁ、ひ…っ…」
足を腰に絡め、首に顔を擦り寄せるようにして甘えてくるきいちを抱きしめ返しながら、ひどくねっとりと絡みついてくる内壁を蹂躪するかのように何度もがくがくと揺さぶる。まるでピンポイントに亀頭だけを激しく舐め回されるような胎の動きに自然と腰を打ち付けるスピードは早まった。
ぶらぶらと揺れるきいちの細い脚を抱え上げながら、バツバツと鈍い音に変わるくらいの力強いピストンに、のけぞり感じるきいちの白い首筋に歯を立てた。
「っぁ、あ゛も、やだぁ、ぁ、あっ!ちんち、こぁれちゃ…っ!こぁれぅ、やぁあっ!!」
「っぐ、あ…イ、きそ…っ、」
「ひぅうっ!な、がっ、らめぇ、えっそ、そどぉっ、だひ、てぇ、えっぁあんっ!」
「んぐ、ぁ…っ、全部、…つ、飲め…っ」
「い、ぁっ!!しゅ、んンっ、ん、ん、ん、っんぅっーーーー!!」
ごちんと結腸に先端を含ませると、そのままきいちの悲鳴を飲み込むようにして深く舌を絡ませ射精する。結腸が震えて、ごくごくと飲み込むようにして奥が収縮する。きいちの舌を何度か甘く吸い付いてそっと唇を離すと、真っ赤な顔に泣きはらした
目でぐったりと放心しながらじょろりと性器から漏らす。
ソファーを伝って投げ捨てたきいちのパジャマに染み込みながら、あぐあぐと肩口や腕、胸に何度も噛み付いてはぐったりとするきいちを抱きしめながら、何度も性器を腹の奥に擦り付けた。
「ぁ、あ、っ、うそ、だ、だめぇ…」
「ん、まだだ。付き合えきいち。」
「ゃ、だぁ…っ、ふぇ、っ…んぁ、あっやら、ぁっ」
「駄目だ、力抜け。そう…うまいぞ、」
「は、ひぅっぁ、あ、あー‥」
きいちの柔らかい尻を揉みながら、抜かずに再び腰を揺らめかせる。奥に吐き出したものを先端で掻き出すようにして抜き差ししながら、その体を再び開いていく。ふわりと香るきいちの俺を誘う香りも、
吸い付くような柔肌も、歳を重ねるごとにどんどん離れがたくなっている。
きいちには謝ろう。抱き潰してしまうだろうから。
俺の可愛い愛しい番の細腕が、俺を求めて絡み付いてくるのだ。だから抗えるわけがない。
「しゅ、んっ…しゅんぅっ!お、おっきぃの、またぁ…き、きちゃぅ…っ、も、とま、ってぇ…」
「いやだ、な。こんなに…やらしく、て…綺麗なのに…」
「やぁ、ぁンっらめ、ぁっそ、そこぉ、とんとんやらぁ、ぁっあ、あ、あ、イ、イぐ、っ!!」
はひゅ、と一際大きく体を震わした瞬間、ぶしゅりときいちの性器から吹き出した潮と、のけぞったことで晒された乳首にぢゅぅっ、と吸い付く。強い胎の蠕動に、袋にぎゅるりと集まった精液が再び出口を求めてかけ上がる。
「あ、っ…くふ、っ…」
「きゃ、ぅ…っ…ぁー‥‥」
そのまま乱暴に性器を引き抜くと、きいちの上半身にびしゃびしゃと間欠泉のように吹き出す精液を、その蠱惑的な肢体にむけてぶっかけた。
きいちのへそや胸元、高く飛んだそれは顔にもかかり、顎を伝って首筋に落ちていくなまめかしい様子に血管が切れそうだった。
「はぁ、っ…舐めて…」
「ん、んぁ…ぅ…」
にゅくにゅくと残滓を絞り出すように性器を目の前で扱きながら、きいちの薄い舌に塗りつけるように先端を押し付けた後、その形の良い頭をそっと支えながらゆっくりと腰を押し付けた。
「ぉ、ごっ…んん、ぶ…っ…」
「は、…じょうず…」
ぶびゅ、と情けない音がして、きいちの性器から精液が溢れた。喉奥まで飲み込まされてなお性感を感じたらしい。溶け切った顔で、涙で濡れた睫毛を震わしながらじゅるじゅると唾液と共に残滓を啜る。
そっと後手に蕾に触れると、そこは縦に口を開いては俺の吐き出した精を漏らしている。
「はあ、っ…飲みたいか?」
「んぶ、っ…」
目に涙を溜めながら、眉根を寄せて甘く吸う。きいちの口の中に含ませた性器の硬さが、少しずつ戻っていく。
我ながらひどい絶倫だ。きいちの細い指が俺の性器の根本に添えられる。白い手と淫水焼けしたそれのコントラストが酷く卑猥だった。
「ぷぁ、っ…ん、っ…らひ、へ…」
じゅぞ、っと端ない音を立てながら深く飲み込む。そのまま搾り取るように吸い付きながら唇を離すと、蕩けた顔でかぱりと口を開いた。
「最ッ高。」
「ふ、んぁ…っぅぶ、っ…」
ぶわりと膨らんだ性器にひくんと身を跳ねさせると、ギュッと目を瞑るきいちの赤い舌目掛けて薄くなった精液をびしゃりとかける。口端から溢れたそれを、拭い取って口に含むとごくんと喉を鳴らして飲み込んだ。
「ぁ、…」
かぱりと開いて見せた口内、残さず飲めたよとアピールするその様子に酷く支配欲が満たされた。
俺の精液に塗れたきいちをキツく抱きしめる。お互いにシャワーを浴びないといけないくらいの有り様だ。中に出し切ったものも洗わねばならない。明らかに無理をさせたので、弛緩した身体を抱き上げると、びしょ、と濡れた何かを踏んだ。
「あー‥、」
「お、おしっこ…ごめんね…」
「凄く興奮した。」
「ば、ばかぁ…」
ぽたぽたと内腿から垂れる雫は、落ちた先にあったきいちの漏らしたそれと濡れそぼったパジャマに染み込む。恐らく彼奴等が起きてくるまで3時間はある。その間に証拠隠滅をしなくては。
恥ずかしそうに俺に抱かれたまますり寄るように首に顔を埋める。愛しさに頬に口付けると、顔を赤らめながら泣きそうな顔で微笑んだ。
あの後すべての証拠隠滅を手伝ってくれた静音機能付の洗濯機に汚れ物をぶち込み、事前に購入しておいた防水性のおなじソファーカバーを被せる俺に、準備万端すぎてむしろ引くと心外な事を言うきいちを寝かせた。腰が立たなかったからだ。
凪と千颯の部屋から持ってきた布団をきいちに被せ、俺も少しだけ仮眠をした後はお察しだろう。
「か、母さん!?!?」
「し、信じられねえ!!寝てる息子から親を、奪うか普通!?」
「けほっ、ぁ…ちが…」
やかましい音と共に凪と千颯がソファーに身を預けるきいちに駆け寄る。真相はきいちがおきて抜け出したのが正解だが、気恥かしそうにするきいちの掠れた声では何も言えないだろう。
「高校生にもなって何時までも親と寝てるんじゃねえ。」
「アラフォーの癖して母さん抱き潰しといてよく言うぜ。」
「ああ、こんな噛み跡だらけで…僕がお風呂に入れて差し上げますね、起き上がれますか?」
「千颯抜け駆けはゆるさねー!」
千颯はくたりとしたきいちの髪の毛をすくうようにして耳にかける。心底心配しているような面でいるが、千颯は弟特権を全面に出してはきいちに甘えるので油断ならない。
「きいちはもう風呂にいれたから千颯も凪もさっさと顔洗ってこい。」
「あ、あの…」
「父さんが絶倫なのはかまいませんが、母さんの体力を無視した行為は許せません。」
「ち、ちぃ…」
顔を真っ赤にしながらきいちがなにか言いかける。凪がそっと布団を捲ると、年々俺に似てくる面をぶわりと赤く染めた。
「あ、だ、だめぇ…」
あわててきいちが凪から布団を取り返す。一瞬晒された白い肌に散らされた噛み跡は、思春期のこいつらには刺激が強すぎたらしい。
「最低。」
「右に同じく。」
「もう…いいこだから二人とも朝の支度してぇ…」
じとりと顔を赤くしながらふたりできいちにくっついている高校生二人に頭の痛い思いをしながら、千颯はほそっこいきいちの手を握ると自身の頭に手を載せて甘える。まて、どこでそんなあざとい行為を覚えてきた。
「千颯は傷付きました。母さんよしよししてください。」
「ちぃ、心配かけてごめんねえ…今日のご飯は俊くんだから仲良く食べてね、凪も。」
「致し方なし。俺も撫でて母さん。」
「二人は甘えんぼさんだねぇ、僕の子離れ応援してよ。」
「子離れしないでください。」
「そうだよ父さんは子離れしてほしいけど。」
二人を撫でるために両手を広げたきいちの胸元に息子が嬉しそうにすり寄る。何だそれクソ羨ましい。
さっきまで俺のものだったきいちが、もう既に息子のものになっている。
「オイコラお前らきいちから離れろ、朝飯を食え。」
「父さん怖いです。」
「えーん!」
「ええ、幼児返りぃ?」
よしよしと撫でるきいちの腕の隙間から、凪と千颯のしてやったりという嫌みな笑みを見てしまい、俺の堪忍袋の緖はもうだめだった。
「クソガキ共が!!」
「クソガキだからなぁ!」
「しごき倒してやる。」
「職権濫用は大人気ありませんねえ。」
「千颯はきいちの腰を抱くな!!」
「もー!!3人ともわかったから静かにしなさい!!口効かないよ!!」
ついに限界を迎えたきいちからでた最強の一言に、まるで場面を切り替えるかのように大人しくなる。俺の言うことは職場以外では聞かないくせに、千颯も凪もマザコンを拗らせてるので効果覿面だった。
「もう…僕寝るから…3人で仲良くしてくれないと泣くからね…」
「勿論です母さん。」
「親父はまかせて母さん」
「ん、お休みぃ」
「おいいまなにした!?」
ちゅ、ちゅ、と二人がお休みのキスを送ると、あろう事がきいちも気にせず唇でそれを受ける。
子供の頃から唇にキスをしていたが、それをまだしているのかという衝撃と二人のしてやったりの顔に再び俺が着火して、ついにきいちがマジキレをする事になるのは、数分後の話しだ。
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