俺事、大多喜燐は引きこもり歴四年と言う地味なスキルも持っている。 きっかけは些細な事だったと思う。どうでもいい様な事がどうしようもなく引っ掛かり、不登校から引きこもりへと徐々に移行していったのは確かである。 だから、社会や人間関係に愛想を尽かした訳でもないから、通信教育は親に言われる前から自ら進んでやっていた。 「母さん、美羽、ちょっと出掛けて来る」 自室からそう出て来ない俺はそう言って、何年振りにかの階段を降りてコレまた何年振りかの玄関の扉を開いた。その間の母さんと美羽の顔は面白い程、大きく口が開かれていた。 ソレもそうだろう。服装も身形も持ち物もネットで調べて、今時の男子高校を演じてんだ。しかも、喋り方もテンションの上げ方も某サイトでひたすら練習をしたのを使っている。 「あ、え…、い、ってらっしゃい？」 扉が閉まる前にそう発せられた母さんの声が聞こえて来たけど、発狂した美羽のキャーは大袈裟だと思った。そう叫んだら近所迷惑だぞと思いながら隣のおばさんん家の庭を見たら、隣のおばさんが花の手入れをしていた。 無視するのも可笑しいと思い、今日わと軽い会釈をしたら、隣のおばさんが黄色い声を上げて家の中に入って行った。アナター、アナターと隣のおじさんを呼ぶ隣のおばさんの声は、美羽以上に近所迷惑なモノだった。 俺は画面越しの世界と違ってリアルは小煩いモノだと改めて知り、隣のおじさんが出て来ない内にさっさと出掛けようと小走りに門扉に向かった。 門扉を出てから少し歩いた所でリュックからスマホを取り出して、電源を入れる。歩きナビのアプリを起動させて、俺はココで逢おうと誘って来たネットで知り合った友達との約束場所まで急いだ。