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初恋の裏側
俺が初めて恋したのは、高校の部活仲間。身長も体重も運動能力も同じ。性別も、ね。とっても真面目で一生懸命で。気づけば、いつもお前の背中を目で追っている自分がいる。
あれから十年経った。俺たちはずっと友達。身長はとっくに差がついた。お前は趣味のスポーツが高じて選手になって、プロにもなった。長身のイケメンはモテモテだ。それでも、ずっと隣にいる。
愛されたい。その筋肉に触れたい。抱かれたい。そういう本能がない、と言ったら嘘になる。肩も組むし、お互いの部屋にも泊まる。なんだったら、旅先の大浴場で裸の付き合いだってあるわけで。
でもそんな些細な情慾よりも、笑って一緒に過ごす時間の方が大切だ。告白なんて壊すような事、考えられなくなってしまった。
今年の夏、祖父が亡くなった。内孫の俺には一軒家が遺される。築百年はある古い木造。庭もある。しっかりした造りで価値はあるけれど、手がかかる。
この面倒くさい感じが俺に似ている気がして、自分で手入れをして住むことにした。でも、一人で住むには広すぎる。
「なあ、一緒に住まないか?」
お前が独り身のうちなら、友達と暮らすのもいいだろう?
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