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初恋の裏側 .2

 引っ越し蕎麦の前に、丸めた団子もついでに茹でる。縁側に二人分並べて月見の夕餉。お前が越して来た日は、ちょうど中秋の名月。  月の光の下に、お前がズルズル豪快に啜る音と鈴虫の声。なんだかおかしくて、声を上げて笑ってしまう。情緒もへったくれもない。 「嬉しそうだな」 「ああ、最高だ」  月も満ち、腹も満ち、心も満ち、ぼーっと空を眺める。  ふいに。本当にふいに、視界と唇が塞がれる。 「へ? お前! 何考えてんだ!」 「十年間ずっと、僕は君の事しか考えられないよ。プロポーズ、嬉しかった」  こんなフィクションの中みたいな、幸せな誤解って、あるんだね。  お前に愛されて、この夜、世界が変わった。

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