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第44話

☆雨を見て何を想ふ☆ 俺の視力は2.0といい方だ。 先日行われた身体検査で設けられた位置よりわざと二歩下がってやったぐらいである。 担当の教師にはよく見えるもんだ、と褒めれたこともあり、間違うはずない。 だけど目に写る光景を俺は信じられなかった。 信じたくない。 でも信じなくちゃいけない。 東条 千秋がいることに。 本当にいたんだ…。 けど東条 千秋は俺がナンパされた所より少し離れたバス停にいた。 きっと雨宿りしているのだろう。 東条 千秋は携帯をいじっていて俺には気づいていない。 というか東条 千秋より結構距離が離れたところにいるから気づくはずはないんだけど。 「えー、マジか」 うーんと、ビニールを引っ掻く。 …てか、なんでいるんだよ。 土曜日だぞ? 学生の週2日しかない貴重な休日をこんなところで潰すなよ。 馬鹿だろう…。 東条 千秋。 あんたは馬鹿だ。 もう会えない人物をいくら待とうが来ないんだ。 しかもたった1日、1回しか会ってないやつに惚れるなんて。 あんな貼り付けた笑顔で惚れるなんて。 馬鹿だ、馬鹿。 学力とかそんなの無視して、本当の馬鹿。 でもあんたは待ち続けてる。 『井上 春』を。 こんな大粒の雨が降りしきる中も待ってる。 じゃあ、俺は? 俺は逃げてる。 噂とか『怒らせるな』という言葉に怖がって。 東条 千秋という男に向きあわなかった。 そんな奴があんたに馬鹿なんて言えないか。 ……本当の馬鹿野郎は俺か。 あはは「ははは」ははは 笑える。 東条 千秋に気づかれたくないから小さく笑う。 本当、俺は東条 千秋を甘く見ていた。 そして俺は道を引き返し、走りだした。

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