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 どれくらい眠っていたか分からない。体が熱を帯びている気がして、熱い息を零しながら身を起こそうとするが、どうしてかピクリとも動けない。 「……、ん……?」  下半身に違和感を覚えながら、薄っすらと目蓋を押し上げていくと、自分の上に、黒い影があるのが見えた。その形は人のように見え、ゆらゆらと前後に揺れている。  動き方からあることを連想させられた瞬間、下半身に暴力的な程の快感が襲いかかってきて、高い声が出そうになるが、吐息にしかならない。 「は、……っ、ぁ、ふ……ぅ……」  何がどうなっているのか理解しようとしてもできないまま、されるがままになっていると、微かに声がした。 「れお、玲雄……っ」  訴えかけてくるその声は、達矢のものによく似ているが、不自然に歪んでいる。  だが、意識が朦朧としてきていた俺は、目の前の影が達矢に思えてきて、手を伸ばそうとした。手が空を掴んだのとほとんど同時に、どこからか聞き慣れた着信音が聞こえ始める。  その音色に促され、次第に意識がはっきりとしていく中で、自分の体の上にあった影は掻き消えていく。  気がつけば、俺は暗い部屋の中で、荒く息をつきながらベッドの上に座っていた。鳴り続けているスマートフォンを見ると、達矢からの着信だ。  急いで出ようとしながら、壁に目を向ける。そこには、人の手のひらのような形のシミが浮き上がっていた。

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