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「なるほど。では、キジマ鉄鋼はスバルホームズの一番客になると?」  本部長が鋭い視線で指摘する。小鳥遊は大きくゆっくりと頷いた。 「はい。スバルホームズの社長直々に長いお付き合いをと命じられております」 「それではウチは子会社のような扱いになると?」  先程まで黙って話を聞いていた宇津木社長が口を開く。途端に緊迫した空気が流れた。 「いいえ。まだまだ成長途中の御社を子会社として扱うつもりは毛頭ありません。公平な取引の元で対等の関係を築きたいと考えております」  横溝課長に何度も口添えされたことを思い出す。相手を不快にさせないように、かつ自社の提案が通るように話を進めるのは容易なことではない。堂々と|下手《へた》に下に出ず話をしてこいと口酸っぱく言われていた。微かな手応えを感じながらも、社長の顔には変化がない。しばし考え込むような間があいた。 「スバルさんは住宅販売の中でも大きな会社ですからねぇ。社長、ここは話に乗ってみるのもいいのではないですか?」  キジマ鉄鋼は社員と社長との距離が近い会社だということで有名だった。社員は家族と位置付けているらしい。そこではアルファもベータも関係なく対等に仕事をしているという。まだオメガの雇用の機会はないと聞いているが、この会社ならたとえオメガであっても安心して仕事をすることができるだろうと小鳥遊は考える。 「ウチの鉄鋼が広く使われるのは最もです。宣伝効果もあるのでしょう?」  本部長がやや上向きにこちらを眺める。小鳥遊ははっきりと頷く。 「もちろん。契約成立の折にはコマーシャルの中にも宣伝文句をつけさせていただく予定です」  ほう、と宇津木社長の表情が柔らかいものに変わった。何度か頷くと小鳥遊をまっすぐ見据える。その瞳は何年も先の会社の未来を探っているような目だった。

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