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「っは」
頭の中に浮かんだのは小鳥遊の吐息と熱い舌だった。肉厚な舌が自身の舌を撫でるように舐めてくれたことを思い出す。想像した瞬間ぞわりと腰が震えた。
またして欲しい……。
岸本はそっと自身の片方の指を口に突っ込んだ。
たしかこんなふうにしてくれた。
指を舌に見立て絡め合う。何度かそれを続けているとだんだんと下半身が兆してきた。すぐに容器を持てるように手元に置いておく。
「っはぁ」
そろそろ熱が弾けそうになるのを感じて懸命に手を動かす。隣ではカラリと扉が引かれる音がしたので岸本は小鳥遊が行為を終えたのだと理解する。
待たせちゃいけない……早くイかないと。
「岸本」
「うっ、あ!」
扉越しに名前を呼ばれた。その瞬間勢いよく精液が込み上げてくる予感がして容器を先端に当てがう。びゅく、びゅくと途切れ途切れに溢れる白濁を見つめながら大きく息を吐いた。
疲れた。それにしても名前を呼ばれただけでイくなんて……どうかしてる。
「……お待たせしました」
「早く渡しにいけ」
「はい」
賢者モードに入りつつある体を鞭打ってなんとか受付の前にたどり着く。果てたあとは強い眠気に誘われるのが常だった。無事に容器を渡し終えるとソファにどかっと座り込んだ。壁に頭を寄せて目を閉じる。三井産婦人科は南向きに大きな出窓があるので、岸本の座っている席にはぽかぽかとした陽の光が差し込んでいる。それがまだ眠気を誘ってくる。向かいの席では小鳥遊が両足を組んでスマホを眺めている。こんなときにも仕事か、と出来る上司をぼんやりと見つめながら岸本は睡魔に襲われた。
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