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66 原因は俺? R18

「それではこちらの容器に精液を採取してきてください」  三井産婦人科の受付で保険証と診察券を渡した後に容器を手渡された。受付の女性の名前は四谷というらしく、小鳥遊は以前の電話の相手だったなと思い返す。隣にいる岸本はやや驚いたように固まっていた。四谷に促されるようにして個室に案内される。 「それでは採取が終わったら受付に持ってきてください」  部屋の前に立ち尽くす岸本に声をかける。 「おい。大丈夫か」 「あの、えっと……ここでするってことですよね?」 「ああ」 「めっちゃ恥ずかしいんですけど……部長は緊張してないんですか?」 「まあな。前にも受けたことのある検査だ。部屋の中に色々置いてあるから勝手に使えばいい」  じゃあなと言って小鳥遊は個室に入っていってしまう。岸本はおろおろしながら個室の扉を引いた。鍵がかかっているか何度もチェックしながら3畳ほどのスペースに座り込む。床はフローリングになっていて座椅子が置いてあった。ゆっくりと腰を下ろして透明な容器をまじまじと見つめた。すぐ隣で小鳥遊も服を脱いでいるのだと思うと勝手に体が熱くなってくる。きっと小鳥遊は検査のためだけにする行為だというのに、岸本の頭の中には発情期の際に触れてくれた小鳥遊の温もりがよみがえってくる。 「……っ」  防音だから安心してくださいとは言われているものの、口を閉じて声を押し殺す。隣にいる小鳥遊に聞かれたくなかった。備え付けのローションを手に取りまだ兆しの見えないそれに塗りつける。くちゅくちゅと水音が響いて頭がぼんやりしてくる。だんだんと熱を帯びてきたそこに罪悪感を覚えた。しかし萎えてしまってはまた勃たせなければならないので、頭を振って快感を得ようとする。

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