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「シーツすみません。ベッドも汚してしまって……」 「構わない。そろそろ新しいものをと思っていたところだ」  おまえと2人で寝るには狭いからなと恨みがましそうな目で言われる。それをくすっと笑って小鳥遊部長の広い肩を見つめた。男らしくて格好いい。部長の逞しい裸が見れるのも自分だけなのだと思うと嬉しくなる。独占欲が満たされて幸せな気分になれる。今日もずいぶん気持ち良くしてもらった。1人では発情期を鎮めることはできなかったかもしれない。 「夕飯どうしましょう。準備できてないんです」 「そんなもの白米に卵をかければすむ。おまえは明後日の研修会に向けて体調を整えろ。それから……どうして番になったのに発情期がやってきてしまったのか病院に行って聞いてみようと思うがどうだ?」  病院という言葉に体が固まる。昔から好きではなかった。しかし、原因を追求しなければせっかく小鳥遊と番になった意味がない。岸本はゆっくりと頷いた。 「じゃあ馴染みの産婦人科に予約を入れておく。土曜でいいか」 「はい。日時は部長にお任せします」  お湯がぬるくなった頃ようやく小鳥遊は風呂から上がっていった。早く出たいと駄々をこねる岸本を肩までゆっくりと浸からせる。だいぶ体力を消耗しているはずなので長風呂させることにした。  風呂から上がって髪をわしゃわしゃと豪快に拭いている岸本の姿を見て一瞬口元が緩んだ。が、またすぐに真一文字に結び直す。  最近は社外だと上司と部下の関係を超えてさらに近くに岸本の存在を感じるようになっていた。それが良いのか悪いのか小鳥遊には判断できない。なにせ半径1メートル以内に人を入れるのは以前の恋人以来だったからだ。唯一親しいといえる百田とも2メートルは距離を保っている。いつのまにか小鳥遊のすぐ近くに岸本はいた。自然に、まるでそれが当然かのようにそばにいる。

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