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「岸本、横になれ」  いつのまにかスイッチの入ってしまった部長に指示されて横になる。すると力強く抱きしめられた。そのまま胸の飾りを吸われる。片方の突起は指で、もう片方は舌先で弄られた。乳首弱いんだよな……。もうバレてんのかな。  体の力が抜けていく。今度は正面から抱かれた。顔の両脇に部長の手がある。囲われるような体勢にどきどきしながら顔を見上げる。汗ばんだこめかみがエロい。そんなことを考えていると 「余裕そうだな」  と囁かれて首筋にキスを落とされた。いつもとは違う噛み付くようなキスに驚く。ちくっとした痛みが首に走った。再び目を合わせると嫉妬したような目でこちらを見下ろしてくる。そういえば夏季研修の説明会のときから部長は変だった。その理由が知りたくてこの行為が終わったら聞こうと考える。 「岸本……出す、ぞ……っ」 「はぁっ……」  最後は1番奥深くに部長を感じた。のしかかってきた小鳥遊部長の肩に腕を回す。たいていの男は果てるとすぐに賢者モードに入るのだが部長は違った。ある程度はピロートークに付き合ってくれる。だからこのときにさっきの疑問をぶつけることにした。 「なんで最近機嫌悪かったんですか?」  息を整えながら小鳥遊部長は呟く。耳のあたりに口があるからくすぐったい。 「……おまえが発情したら他のアルファに抱かれるだろうと思って心配していた」  心配していてくれたんだ。部長は言葉にしないからなかなか考えていることがわからない。そして再び口を開く。 「それとおまえの手料理の味を他の奴らに教えたくなかった」  それはいったいどういう意味として受け取ればいいんだろう。俺は反応に困ってしまう。だから「そうですか」と返すしかなかった。

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