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 らしくない岸本の姿が面白くて、たまには俺からも反撃してやろうと顎を掴む。そのまま上を向かせた。驚きと期待に満ちた瞳と目が合う。その期待に応えてやろうか、わざと気づかないふりをしてやろうか一瞬だけ悩む。しかし、悠長に考える暇はなかった。微かに震える岸本の唇が光っている。熟れた桃のような唇が旨そうで吸い付きたくなって、そのまま唇を重ねた。 「んむっ」  ただ触れるだけのキスに岸本は心底驚いたらしい。小鳥遊の肩に手をかけて引き離そうとしてくる。抵抗されると燃えるというのはこのような状態のことを言うんだろう。 「ん……」  しかしすぐに諦めたのか抵抗するのをやめた。壁に背中を預けてキスに甘んじている。無抵抗の印に岸本は静かに目を閉じた。少し背の高い男にキスをするのは疲れる。軽く踵を上げてのしかかるように体重を預ける。酔っ払いのキスなんてすこぶる臭くて嫌だろうに、岸本は俺が崩れ落ちないように腰を支えてくれている。  なんて心地いいんだ。  俺はぼうっとしながらそんなことを考えた。この心地よさが気持ちよくて次第に目が霞んでいく。このまま眠ってしまいたい。意識を手放してしまいたい。 「……部長ってほんと」  何かを言いかけた岸本だがすぐに口を閉ざしてしまった。俺の体をぎゅっと抱きしめてくれる。その温もりが優しくて、逞しくて、泣きたいくらいにあたたかくて俺は目を閉じた。  そのあとはどうなったのかよく覚えていない。翌朝目が覚めるとベッドに2人で横になっていた。岸本が運んでくれたのかもしれない。スーツからスウェットに変わっている。おそらく着替えさせてくれたのだろう。

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