141 / 163

141

 シャワーを浴び終え明日の支度を済ませると、どちらともなく体に触れる。  俺は自分がこんなにも感情をストレートに出せるようになって驚いている。キスをしたければ岸本の顎を掴み、唇を合わせる。抱きしめたければ、後ろからそっと壊れ物を扱うかのように抱きしめる。その温もりに心が癒されていた。 「小鳥遊さん」  いつからか、岸本は俺のことを部長と呼ぶことは少なくなった。俺の名前を恥じらいながらも呼んでくれる。それが嬉しいのだ。だから俺も、岸本の名前をまっすぐと呼ぶ。 「雄馬」  名前を呼ぶだけで耳まで真っ赤にさせる岸本が面白くて。俺はついつい名前を呼びたくなってしまう。  今日も朝まで離してやれないな……なんてことを思いながら、シーツに縫いつける。岸本の顔は期待と不安とで満ちている。 「小鳥遊さん……」  重なり合う直前、掠れた声で岸本が俺の名前を呼んだ。

ともだちにシェアしよう!