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シャワーを浴び終え明日の支度を済ませると、どちらともなく体に触れる。
俺は自分がこんなにも感情をストレートに出せるようになって驚いている。キスをしたければ岸本の顎を掴み、唇を合わせる。抱きしめたければ、後ろからそっと壊れ物を扱うかのように抱きしめる。その温もりに心が癒されていた。
「小鳥遊さん」
いつからか、岸本は俺のことを部長と呼ぶことは少なくなった。俺の名前を恥じらいながらも呼んでくれる。それが嬉しいのだ。だから俺も、岸本の名前をまっすぐと呼ぶ。
「雄馬」
名前を呼ぶだけで耳まで真っ赤にさせる岸本が面白くて。俺はついつい名前を呼びたくなってしまう。
今日も朝まで離してやれないな……なんてことを思いながら、シーツに縫いつける。岸本の顔は期待と不安とで満ちている。
「小鳥遊さん……」
重なり合う直前、掠れた声で岸本が俺の名前を呼んだ。
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