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144 当日
社内はささやかなハロウィンムードだった。俺も佐久間や米原にお菓子をもらった。佐久間からは無難なチョコバーで、米原は目玉のデザインの丸い飴玉だった。米原らしいなと思って苦笑する。
すると、帰宅してソファでくつろいでいた俺に後ろから声がかかる。
「がおーっ」
「……馬鹿が」
猫耳を頭につけた阿保面と相見える。がおーってなんだ。それはライオンじゃないのか。お前は猫の仮装をしてるんじゃないのか。
さまざまな疑問が頭の中を飛び回る。しかし、細かいことを気にしない岸本は四つん這いで床を這う。そして、俺の座る足の間にちょこんと座り込んできた。
「えへへ。びっくりしました?」
「お前の馬鹿さ加減に驚いていたところだ」
「意地悪だなぁ……まぁそんなところも嫌いじゃないけど」
そして俺の股間に頬を擦り付けてきた。やめろ……今は分が悪い。
「いわゆる、疲れマラってやつですね」
「っ」
ここ何日か自己処理ができていなかった。そのせいか、岸本の顔が近くにあるというだけで熱を持ってしまう。いや、岸本の顔に欲情しているわけじゃない、絶対に。
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