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9 心配性の恋人は嫉妬深くもあったわけで・終
「だから言ったでしょ? 男子大学生なんて自由奔放で性欲の塊だって」
「んなこと……ぅぁ……ッ! も、無理だ、て……っ!」
「大丈夫だよ。コウちゃんのここ随分柔らかくなったし、いつもこのくらいはパクッと咥えちゃうでしょ」
「ひ……ッ!? ぃッ……ぁ……っ!」
「ん……、まだちょっとキツいかなぁ。でもナカは気持ちよさそうに動いてるし……うっ、ちょっとコウちゃん、急に締めたりしたら出ちゃうってば」
「う、っせぇ……ぅ、ぁ……ッ!」
「もう、ほんとツンデレなんだから」
(ツンデレとか言ってんじゃねぇ! つーか、これ以上突っ込まれたら腹が破ける……!)
恐ろしいくらいデカくした幸佑 の息子に腹の奥をグイグイ押されて、あまりの圧迫感に涙が出てきた。「いつもと同じだよ?」なんて言っていたが、違うのは経験が浅いオレにだってわかる。
(んな奥、いつもは入れたり、しねぇだろ、が……ッ)
いつもの場所だって散々慣らしてようやく入るくらいだ。それなのにろくに慣らしもせずにいつもよりずっと奥に入れるなんてあり得ない。息ができないくらい苦しいわ、胃がひっくり返りそうになるわで泣きたくなってきた。
(そもそもお仕置きって、何なんだよ……!)
玄関を開けて靴を脱いでいると、いきなり背後から抱きしめられて驚いた。どうしたのかと振り返れば、ニッコリ笑いながらベルトを抜かれて本気で焦った。
オレが待てと言うより前にベルトがなくなり、止めようと手を掴んでも幸佑 の手は止まらない。こういうときの幸佑 はやたらと力が強いうえに信じられないくらい器用で、あっという間に下半身をひん剥かれてしまった。そのまま尻穴を触られそうになり、さすがに全力で腕を掴んで必死に止めた。
幸佑 がしたがっていることはわかった。しかしいきなりは無理だ。そのことは幸佑 だってわかっているはずなのに、「いつも綺麗に洗ってるから大丈夫だよ」なんて恐ろしいことを言いやがった。
もちろんオレは「んなことあるか!」と一喝し、浴室へ逃げようとした。ところが「大丈夫、浣腸は持ってるから」なんて言って見慣れた丸いフォルムに突起がついているものを取り出した。そのままひん剥いた尻穴に突っ込もうとするのだからたまったもんじゃない。
「ふざけんなッ!」
思い切り叫んで腕を振り払ったオレは、玄関から一番近いトイレに駆け込んだ。ドアの向こうで「いい子だから出ておいでよー」なんて恐ろしい声が聞こえたが全部無視した。
オレは覚悟を決め、トイレにも常備してある浣腸を取り出して準備をすることにした。初めてのときは「慣れる日なんて来るはずがない」と思っていたのに、いまでは幸佑 にされるよりもうまくなったような気がする。
「やっぱり何かを失った気がする」と思いながら二度目の洗浄をしていると、ドアの向こうから「コウちゃんはいつまで経っても恥ずかしがり屋さんだなぁ」という声が聞こえてきて「この変態が!」と怒鳴り返してしまった。
(いや、あの言葉は間違いじゃない。オレは間違っていない)
三度目の洗浄が終わり、そっとトイレのドアを開けると思ったとおり幸佑 が立っていた。眩しいくらいの笑顔を浮かべながら「やっと出てきた」と言って下半身がすっぽんぽんのままのオレの腰に腕を回し、引きずるようにベッドに連れて行った。
「待てって!」
「ダメ、待たない。コウちゃん、これはお仕置きだからね? 俺があれだけ注意してたのにあんな奴に油断なんかして」
「お仕置きって何だよ! それに高橋のことなら知らなかったんだから仕方ねぇだろ!」
「あいつの名前なんて呼ばないで。コウちゃん、俺だけ見て? ね?」
オレを見下ろしている幸佑 の目が尋常じゃないことにはすぐに気がついた。これはかつてないくらいまずい状況だ。わかっていても、逃げることも拒絶することもできない。
そうして慣らすのもそこそこにデカい息子を突っ込まれ、いまに至っている。
「ふぅ、ナカとっても気持ちよさそうに動いちゃって。もしかしてコウちゃん、ひどくされるの好き?」
「ふ、ざけ、な……ぁあッ!」
「大丈夫、ひどくしても俺は絶対にコウちゃんを傷つけたりしないから。でも、今日はお仕置きだからね?」
「な、に言って、ふ、んぁッ!?」
「こんなに感じちゃって、これじゃあお仕置きにならないよ。あ、でもコウちゃんって快感に弱いから、そういう意味ではお仕置きになるか」
「こ、すけ、ちょっと待て、ってば……ァん!」
尻穴をこれでもかとこじ開けていた幸佑 の息子が急に抜けて、不覚にも甘ったるい声が漏れた。慌てて拳で口を覆ったが、「ほら、ひっくり返って」と太ももを軽く叩かれて「んっ」と声を漏らしてしまった。
まさか叩かれても気持ちがいいなんて思わなかった。オレも驚いたが、一瞬目を見開いた幸佑 がニコッと笑った顔が怖くて慌ててうつ伏せになる。
「コウちゃんとなら、やったことないことも楽しめそうだなぁ。って、ほら、お尻上げて。あぁもう、駄々こねないの。はい、お尻上げる。……うわ、いつにも増してエロい穴」
尻たぶをペチペチと叩かれる感触も気持ちがよくて、慌てて尻を上げた。するとぐぅっと尻たぶを掴まれ、さらにグイッと割れ目を割り開かれる。
まさかそんなことをされるとは思わなかった。それなのに「やめろ」と言えなくて、泣きそうになるのをこらえるため枕に顔をぐっと押しつけた。
「俺のを咥えてたから、穴閉じないね。うわぁ、ヒクヒクしてすっごいエロい。それに縁は赤く膨らんでるし、使ってますって感じだ。……ね、結婚したら生で挿れてもいい? ここに俺のたっぷり注ぎ込みたいなぁ」
「……ッ!」
「あ、想像しちゃった? 穴がきゅうって締まったよ?」
心の中では「うるせぇ!」と叫べるのに、実際には「う」の字も出てこない。それどころか見られている恥ずかしさよりも気持ちよさが勝りそうで、揺れる腰を必死に押し留めるのが精一杯だった。
そんなオレに気づくことなく、幸佑 が開いた尻穴に容器を突っ込む。「あっ」と声を出したときには、中にたっぷりとローションが注ぎ込まれていた。
「うん、これだけたっぷり使えば大丈夫かな。コウちゃん、プルプル震えちゃってかわいーんだから」
(ほんとにおまえ、何なんだよ……!)
恥ずかしいのと気持ちいいのが混ざり合って訳がわからなくなる。尻穴はどんどん熱くなるし、勝手に穴が開閉するせいでローションが太ももを垂れる感触にゾクッとした。
そんな尻穴に、さっきよりもさらにデカくなったものがズン! と一気に入ってきた。
「ぅ、あ……ッ!」
「ふーっ、いつものとこまでは入った。……はは、バックでやるのもエッチでいいね。コウちゃんの背中がビクビクしてるの、見ててほんとやばい」
「……ッ、っ、……っ!」
「うん、ちゃんと呼吸もしてえらいね。じゃあ、もうちょっとがんばろっか」
尻だけ高く突き上げた格好だからか、厚手の服の裾が首元までずり落ちて背中に冷たい空気が当たる。そんな俺の背中に幸佑 が触れ、何かを確かめるように背骨を上から下に撫でた。その感触にゾクゾクして体が勝手にビクビク震えてしまった。
変だから背中を触らないでほしい――そう思いながらも指の感触を追っていると、ガシッと腰を掴まれビクッとした。「え? なに?」と思った瞬間、内臓の奥をググゥッと押し広げられて「ヒッ」と短い悲鳴が口から漏れた。
「ひ、ヒィ、ぃ、ぁ……ッ」
「ん……、もう少し、かな……」
「ひ、やめ、も、やめて、……ぃ……ッ!?」
「大丈夫、痛くないし怖くないよ?」
(そんなの嘘だ!)
咄嗟に叫ぼうとしたが、また尻の奥を押し上げられて言葉が詰まった。息も詰まって呼吸ができない。内蔵のあちこちがギチギチに押し広げられているような感覚に本気で怖くなった。
「ひ……ィッ!?」
尻の奥の壁をズンズン突いていた幸佑 の息子が、ついに腹を突き破ったと思った。それくらいの衝撃に襲われ、強烈な圧迫感に息が止まる。
(死ぬ、死んでしまう!)
そう思ったオレの耳に「入った……」と甘いため息を漏らした幸佑 の声が聞こえた。吐息のようなその声にオレの胸は信じられないくらいきゅんとし、尻穴はこれでもかというくらい幸佑 の息子を食い締めた。
それからは何が起きたのかよくわからなかった。とんでもない深いところに異物が入っていて、それがずっと出たり入ったりをくり返しているのは感じる。尻たぶにふさふさした感触があるのは、もしかしなくても幸佑 の陰毛だろうか。
たまにビタンとぶつかるのはタマかもしれない。幸佑 のタマもやっぱりオレのと違い、立派なうえに張りがあった。あれだけ大きければ一晩に二回、三回としたがるのも納得がいく。
冷静な頭とは違い、体のほうはとんでもない状態だった。そのうち頭も段々ぼやけてきて、腕も足も小刻みに震えて言うことを利かない。それに変な声も止まらなくなってしまった。
「ふぁ……ッ」
「はは、コウちゃんかわいー」
「ンンッ、も、奥、やだ……」
「やだとか、なにそれ可愛いんだけど」
「や、苦し、から、ぁ……ッ!」
「大丈夫、……ほら、奥までズッポリ入って、気持ちいいでしょ?」
気がつけば、オレは座っている幸佑 に正面から抱っこされているような状態だった。体勢のせいか最初よりもさらに深いところに硬いものを感じる。それが小刻みに奥を突くせいで、さっきから腹の奥が熱くて仕方がなかった。
「ここの狭いところをね、こうしてグッと抜けるとね……」
幸佑 の言葉と一緒に、腹の奥の何かを硬いものが抜けて行く。気持ちいいのか悪いのかわからないのに、勝手に尻穴がギュッと締まった。
「ね、ここにぶつかるでしょ? でもって、ここを優しく押してあげると……、ほら、ここ、もう結腸の入り口だよ?」
「……ッ!」
とんでもなく苦しいところの奥に、恐ろしいくらい大きなものが入り込むのがわかった。ズルンと何かを突き抜けた瞬間、電流のような衝撃が体中に流れてブルブル震え出す。何か言おうとして口を開いたのに、何も言えないまま開きっぱなしになった。声は出ないものの、代わりに息のような音がかすかに聞こえる。
「これでもう、コウちゃんは体の奥深くまで俺のものだからね? こんなところ、俺くらいちんこ長くないと届かないだろうし、これからじっくり開発してあげる。もう俺なしじゃいられない体にしてあげる」
「ぁふ……ふ、ぅ……、ぅあ、ぁ……ッ! ぁ、ぁ、ァアッ!」
「はぁ、ヤバい、コウちゃんが可愛すぎて我慢できない。んっ、そんな食い締めないでよ、またイッちゃうよ……? あー、いつかここにもたっぷり出したいなぁ。もうね、掻き出せないくらい奥のほうに出すんだ。そうしたら俺のがお腹に入ったままになるだろうし、想像しただけですごく興奮する」
何か話していた幸佑 の顔が近づいてきて、下から押しつけるようにキスをされた。
(あー……キス、って、気持ちいい、な……)
幸佑 とするキスが好きだ。幸佑 としかしたことがないからわからないが、温かくて気持ちがよくて、それにすごくエロい気持ちになる。
幸佑 に唇を噛まれて、オレの息子から何かがプシュッと出た気がする。そういえば、さっきからずっと何かが噴き出していた。精液なのか何なのかわからないが、ベッドは大丈夫だろうかなんてことが頭をよぎる。
(あー……起きたら掃除、しないとなぁ)
そんなことを思いながら、気がついたら寝オチしていた。
* *
「ね、だから大丈夫だって言ったでしょ?」
「……」
「そりゃ、コウちゃんの服はドロドロにしちゃったけど、代わりの服は俺がプレゼントするから」
「……」
「ねぇコウちゃん、機嫌直してよー」
目が覚めて、ベッドを駄目にしたんじゃないかと思ったオレに幸佑 が見せてくれたのは防水シーツとかいうものだった。そのおかげでベッドはドロドロにもグショグショにもなっていなかったが、ベッドの脇にはドロドロになったオレの服が落ちていた。
ちなみに寝オチしたオレが寝かされていたのは、寝室の隣の部屋にあったベッドだ。セミダブルとかで寝室のベッドより小さいが、そこで幸佑 に抱きしめられたまま半日近く眠っていたらしい。
(つーか、用意周到すぎるだろ)
それとも大勢のセフレがいると自然とこうなるものなんだろうか。あまりの準備のよさに、嫉妬というよりも感心したくなる。
「それよりおまえ、お仕置きだとか何とか言ってたよな」
「だって、コウちゃんがあんな奴に触られたりしてたからカチンときたんだもん」
「だもんとか、可愛く言っても駄目だって言ったよな?」
「だってあいつ、コウちゃんのこと狙ってたじゃん。だから絶対に誰にもなびかないように、俺だけのコウちゃんにしておきたかったんだもん」
その結果があれだとしたら、幸佑 はやっぱり少し変なのかもしれない。
「ねぇコウちゃん、機嫌直して? 俺、それくらいコウちゃんのことが好きなんだよ? 絶対に誰にも渡したくないって本気で思ってる。女の子にも、もちろん男になんて絶対にあげないから。コウちゃんは俺のものだから」
……あぁもう、なんだよ、その子犬みたいな目は。そういう目は昔と同じだと思った。
昔からオレは幸佑 のこの目に弱かった。すがるように必死にオレを見る眼差しを見ているうちに「可愛いなぁ」なんて思うようにもなった。オレだけを必死に見ているような気がして、子どもながらに優越感に浸っていたことを思い出す。
その目がいまもオレを見ている。みんなが幸佑 に夢中なのに、そんな周囲を見ないでオレばかりを見ていることに体の奥がぞわっとした。
「ねぇ、コウちゃん」
「……もう、あんなことはしねぇぞ」
「えぇー! それは絶対ムリ! だってコウちゃんと俺は恋人だよ? そしたら恋人のセックスするでしょ!? 絶対またするもん! っていうか、もっとするからね!?」
いやいやいや、「絶対するもん」とか可愛く言っても内容はアレだからな? 思わず突っ込みかけた言葉を飲み込み、代わりにどうしようもなく笑いたくなって慌てて顔を背けた。
「……いつもは、駄目だからな」
「……! わかった。いつもじゃなくて、たまににする」
「いや、だからそういうことじゃなくて、」
「だってコウちゃんも気持ちよかったでしょ? 最後はほとんど何も出てないのにイッてたし、ナカだけで気持ちよくなってるの、俺わかってるからね?」
「やかましいわ!」
相変わらずの言葉に、つい頭を叩 いてしまった。赤くなっているであろう顔を見られたくなくて、そのままキッチンに向かう。
朝は起き上がれなかったが、夕方になったら体も随分楽になった。これなら簡単なものなら作れそうだ。
(疲労回復にニンニク使った何かにすっかな)
後ろで幸佑 があれこれ言っているのを聞きながら、頭はすっかりいつもどおりに戻っていた。たしかに体はきつかったが、傷つけられたりひどいことをされたりしたわけじゃない。それに、お仕置きだとか言ってあんなことをするくらいオレのことが好きなんだと思ったら怒るよりも嬉しくなった。
(昔から幸佑 には甘いんだよなぁ)
そんなことを思いながら冷蔵庫の扉を開けた。
週明け、戦々恐々としながら大学に行ったオレを待っていたのは肉食系女子大生たちの攻撃ではなく、遠巻きに噂されているような雰囲気だった。中にはギラギラした視線の女の子たちもいるから、そのうち攻め倒されるかもしれない。そのときは何とか逃げるしかないが、いまのところは無事でいる。
高橋は何事もなかったかのように接してくれているが、「鎖骨が色っぽい」だとか「上目遣いがやばい」だとかをこっそり耳打ちするようになった。たまに最寄駅に迎えに来るようになった幸佑 とニアミスすることもあり、そのたびにどうしようもない言い合いをしている。
(つーか、心配すんなって言ったのに)
それなのに地下鉄を乗り継いで大学の最寄駅まで来るなんて、幸佑 の心配性にも困ったもんだ。たまたま高橋が変わり者だっただけで、オレなんかに気がある奴がそうそういるわけがない。
それでも真面目な顔で「だって心配なんだよ。コウちゃんは俺の恋人なんだからね」と言われて悪い気はしない。「何言ってんだよ」と言い返すこともあるが、本当は口元が緩みっぱなしになるくらい嬉しかった。
(まぁ、教えてやったりはしねぇけどな)
ニヤけてしまう口元を拳で隠しつつ、今日も迎えに来た幸佑 と地下鉄に乗る。乗るときも座るときも幸佑 の肩やら腕やらが触るのがちょっと嬉しいなんて、それこそ絶対に教えてやんねぇと思いながら窓に映る幸佑 の顔を見た。
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